幸せな人は読まなくていい…精神科医の霊的体験…
※「見えない世界」との対話で精神を癒す
パニック障害で通院中の患者さん
仮名…めぐみさんとの体験
パニック障害とは、突発的に激しい動悸、息苦しさ、めまい、呼吸困難といった身体的な発作に襲われる病気である。
精神的には強い不安感が訪れ、死への恐怖や自分をコントロールできないといった症状を引き起こす。
ある程度は 薬が効くものの、何が原因でそのような発作を起こすのか、 そのメカニズムは現代の精神医学では完全に解明されていない
そのパニック障害を抱えるめぐみさんが、ある時、不思議なことを言い出した。
「 私、子供の頃から霊が見えていて他の子にはどうして見えないのかと不思議だったんです 」
「そうですか不思議な感覚ですね 」
私は否定も肯定もせず聞き流していた。
私には霊感というものがまったくなく、霊という存在は見えも聞こえもしない。
だからそう言われても実感が湧かないのだ
ただ、 人間は全ての刺激が知覚できるわけではないことは分かっている。
例えば、可視光線以外にも光線はたくさん存在するが、人間の脳はそれを認識できない。
そう考えると目に見えないものが存在することを否定はできない 。
めぐみさんは更に続けた。
「私、霊感があるから友人たちからは 不動産物件を選んだり、引っ越ししたりする時にそこに悪い霊がいないか見てくれって、お呼びがかかる事が多いんですよ」
めぐみさんは、パニック障害以外には特に精神的な問題はないように見えた。
結婚していてご主人とも普通に生活している。
彼女の言動を見る限り、霊が見えるという現象を精神障害からくる幻覚や妄想と考えるのは少し無理があるように思えた 。
私が霊の存在を否定することもなく話を聞いていたからか、 めぐみさんは次第に自分が見える霊について話をするようになっていた。
「 交差点のところにシートベルトをぶら下げた男の人の霊が立っていたけど 、本人は自分が死んだことに気づいていないみたい」
「 今クリニックの前の道端に首のない赤ちゃんを抱いた和服姿の女性の霊が立っていますよ」
「 神田川沿いを歩いていたら小さい女の子の霊がくっついてきちゃって困ったの」
などなど、次々と信じられないような霊的な話をする 。
そんな、めぐみさんの予約の当日だった。
めぐみさんは一度来院してから、また出直して来ると言って帰ってしまったらしい。
しばらくして、再び来院してきた めぐみさんが診察室に入ってくるなり 、
「いやだ!先生…先生の横に女性の霊が立っていますよ」と真顔で言う。
私は霊の存在など感じたことがなかったので 正直言って何か不気味な感覚に襲われた。
「さっき待合室で座っていた人だわ。 私その人の前で座って待っているのが嫌だったから一度家に帰ったんですよ。 先生見えないんですか… 白っぽい影もみませんか…? カメラがあれば絶対に写ると思うんだけどな。 そういえば、先生の車って銀色の丸っこい車じゃないですか ?私、車の名前とかよく知らないんですけど、さっき、この女性の霊がずっとその車の中をのぞいていましたよ」
それを聞いて私はぎょっとした。
確かに私の車は銀色の丸い車だったのだ。 しかしその車はクリニックから少し離れた駐車場に停めてあり、私の物だとは気付かないはずだ。
めぐみさんは宙を見ながら続けた。
「嫌だこの人私のカバンの上に座っちゃった」
「あら、鏡の前に行ったわ。何だか顔をとっても気にしてるわ。足はぐちゃぐちゃよ。 自殺したみたいですね。 姿ははっきり見えるから死んでからまだそんなに日が経ってないわね 」
その時、心当たりのある患者がふと私の脳裏を横切った。
一回だけ診察したことがある、さとみさんという患者だ。
ちょうど2週間前に、車ごと海に飛び込んで自殺した事を知り、新聞にも記事が載っていた 。
今、診察室にいる 女性の霊がそのさとみさんなのかを確認したくて、私はめぐみさんに恐る恐る聞いてみた。
「 その女性の霊はどんな感じの人?」
「小太りで丸顔でまだ若いわね」
さとみさんと一致する 。
「名前はわかりますか?なぜここに来たのか聞いてくれますか?」
「 何も答えてくれないわね。勝手に喋るだけで質問には答えないの。この人結構わがままですね」
めぐみさんは 平然と言った。
確かに自殺したさとみさんは少し自己中心的なところがあった 。
その後、私は恥ずかしい話ではあるが気が動転してしまい 、なんとか 気を取り直してからめぐみさんのEMDR治療を開始した。
私が指を左右に振り、 めぐみさんがその指を折って眼球を動かし始めると、間もなく、彼女がいきなり話し出した。
「 いやだこの人…私の隣に座って一緒に眼球を動かしているわ。 EMDR治療 を受けたくてきたのかしら ?」
そういえば亡くなったさとみさんも、 EMDR治療を受けてみたいと言っていた 。
すると、まためぐみさんが、その女性の霊の言葉を代弁した 。
「この人、父親にレイプされたって言っていますよ、先生」
確かに、さとみさんは生前、私にそう語っていた。
さとみさんとめぐみさんは無関係で接点は全くないのだが、ここまで事実が符合すると霊の存在を真っ向から否定できなくなる。
じつは自殺したさとみさんという患者を私の病院に紹介してくれたのは 太田さんと言う 沖縄の 霊媒師だった。
私はこのことを 知らせるために 、すぐに彼女の所に電話を入れた。
「 信じてもらえるかどうかわかりませんが 、今亡くなったさとみさんらしき女性の霊が私のクリニックに来ていてどうしたものかと…。私には霊の存在は見えも聞こえもしないんですけど 」
「先生、そのさとみさんの霊に私の所へ来るように言ってください 」
私はめぐみさんに太田さんの言葉を伝え、さとみさんの霊に向かって話してもらった。
するとめぐみさんはすぐに霊の言葉を代弁した 。
「この人怒っていますね。その太田さんという人は自分の友達でも何でもないんだって…」
私は混乱した 。
「あ…消えたわ」
「えっ…本当に…」
と喜んだのも束の間
「あら…もう戻ってきました 」
「どうしよう…家までくっついてくるのかな…」
「家に入る前にお塩をまけば大抵は大丈夫ですよ 」とめぐみさん。
そうか、塩というのはそんなに効くのか。
葬儀の時にもらうお清めの塩のことを私は思い浮かべながら、改めて塩の威力に恐れ入った 。
だが、今ここで一人きりになるのはさすがの私も正直言って怖い 。
情けない話だが私はめぐみさんに頼んだ。
「一人じゃ不安だから、私もこのまま一緒に帰るので待っていてもらえませんか?」
私はなるべくめぐみさんのそばを離れないようにしながら、急いで帰り支度を始めた 。
クリニックの電気を消し、めぐみさんと一緒に外へ出て、玄関ドアの鍵を閉めて、聞いた。
「 女性の霊は今どこにいますか? 」
「まだクリニックの中ですよ。 別に先生の身体に憑いたわけじゃないんですから、一緒に車に乗ってきたりはしませんよ 」
「あまりおどかさないでくださいよ …」
「あ…今、隣のビルに移動したからもう大丈夫ですよ。じゃあ、先生…私はこれで失礼します」
これが…私が生まれて初めて遭遇した霊体験である。
続く…
※EMDRとは
「眼球運動による脱感作と再処理法」
アメリカで開発されたトラウマ治療法