「宇田川源流」 イギリスのEU「無交渉」離脱がほぼ確実になったボリス・ジョンソン首相の就任
「宇田川源流」 イギリスのEU「無交渉」離脱がほぼ確実になったボリス・ジョンソン首相の就任
イギリス保守党の党首選挙が終わり、ボリス・ジョンソン前外務大臣が決選投票の末に当選した。その後、7月24日に、メイ首相に代わりイギリスの首相に就任したのである。
以前、このイギリス与党保守党の党首選挙に関しては有料メルマガ「ID: 0001647155 宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話」で、特集し、すでに数カ月前にこのような結論になるということをしっかりと予想している。メルマガをご購読いただいている皆さんには、そんなの意外性のあるニュースではなかったと考えている。
しかし、日本のマスコミなどにおいては、かなり意外であったというか、基本的に、イギリスがEUを抜ける選択を現在もするということに意外性を感じているような記事ばかりが出てくる。いかに日本のマスコミがイギリスとの現実を見ていないかということがよくわかる内容ではないかという気がしてくる。
このブログでは、一回もイギリスがEUに復帰する(ブレグジットを中止する)ということは「ない」とかいており、最終的には、イギリスによる何らかの交渉を持ったブレグジットか、無交渉のブレグジットか、そのことしか論じていない。
イギリスのマスコミによるアンケートでは、まずEUに復帰するというのは、少数派であり、「交渉なしでもEUから離脱する」という層が最も多く、それがボリス・ジョンソン氏の支持層に当たっている。最も嫌がっていたのが、解散総選挙をして、ジェレミー・コービン労働党党首になったうえでの交渉なしの離脱や、交渉をしたとしてもEUによって押し切られて不利な条件での離脱が最も困るとされていた。
イギリス人は、「変な交渉結果ならば、かえって交渉しないでそのまま離脱してしまった方がよい」と考えるのが、普通であり、そのような気質がわかっていれば、基本的にはイギリスの今回のジョンソン首相という選択は当然のように理解できるはずである。
英首相"EU離脱一大チャンス"
【ロンドン時事】ジョンソン英首相は27日、中部マンチェスターで演説し、「欧州連合(EU)離脱は経済的な一大チャンスだ」と楽観的な見通しを示した。どんな形の離脱になろうと、EUに残留した方が経済的に有利だというメイ前政権の分析とは対照的な主張となっている。
首相は「合意なき離脱」も辞さない強硬派。EUから出れば大きな利益があると訴えることで、合意の有無にかかわらず期限の10月末に離脱する方針について、国民から支持を得る考えだ。
演説で首相は、前政権がEU離脱をマイナスの出来事のようにみなしたと批判。「離脱は英国の進路を変え、世界最高の国にする好機だ」と持論を展開した。 【時事通信社】
2019年07月28日 00時01分 時事通信
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-353992/
ジョンソン英政権誕生で日本経済に打撃も 「合意なき離脱」に現実味
欧州連合(EU)からの“強硬離脱派”ジョンソン氏の英首相就任が決まり、英国の「合意なき離脱」が現実味を帯びてきた。関税復活による英EU間の貿易停滞などが欧州や世界の経済に悪影響を及ぼす可能性があり、国際通貨基金(IMF)によると、世界の国内総生産(GDP)は0・2%押し下げられる見通しだ。EU向けが輸出総額の1割を占める日本経済も打撃を避けられそうにない。
「大きな混乱と甚大なマイナスの影響が生じないよう、可能な限り円滑な移行を実現してほしい」。経団連の中西宏明会長は23日、ジョンソン氏が首相に就任する見通しになったことを踏まえこうコメントした。
また、日本工作機械工業会の飯村幸生会長は23日の記者会見で「欧州も英国のEU離脱などの政治リスクがあり、車の売れ行きが下がっている。予見不可能な状態の中で固(かた)唾(ず)をのんで見守っている状態だ」と述べ、懸念を示した。
「合意なき離脱」で想定されるのは、EUと英国の間の貿易や物流の停滞だ。関税や通関手続きが生じ、英国からの輸出が減れば、製造業の生産や販売が鈍化し、英国の景気は冷える。EUから英国への輸出も停滞し、欧州経済も下押しされる可能性がある。
IMFの4月の見通しによると、「合意なき離脱」によって、2021年の英国のGDPは3・5%押し下げられ、EUは0・5%下振れする。欧州への輸出が停滞することなどで、世界全体も下押しされる。
日本経済への影響も小さくないとみられる。財務省の貿易統計によると、日本の18年のEU向け輸出額は9兆2092億円で、輸出総額81兆4788億円の11・3%を占める。輸出品の上位は自動車、同部品など。対EU輸出が減れば日本の製造業に打撃が出る。
さらに、英国に進出する日本企業約1千社の戦略にも影響が出る可能性がある。キヤノンの田中稔三副社長兼最高財務責任者は今月24日の会見で、「(英国のEU離脱で)ものの移動や人の移動が、やっかいなことになる。(拠点が)ロンドンにあるのがいいのかほかに移った方がいいのか、考えなければならない」と話した。
2019年07月24日 19時54分 産経新聞
https://news.nifty.com/article/domestic/government/12274-350585/
「不利な交渉をするくらいならば、交渉しないで離脱した方がよい」その考え方は、なかなか日本の「事なかれ主義」を中心にした考え方しかできない日本の人々には理解できない。そこが、イギリスと日本の最も大きな違いであるとされる。日本は、結論が決まっていることを、長々と会議をし、資料を読み上げるだけのことを行うことが可能な人々でしかない。そして、ある程度の幅を持った結論を想定し、その中で収まるような「暗黙の了解と不文律」の支配を行っている人々の集団である。
それに対して、イギリスは、さすがにバイキングをもとにした人々であり、ヨーロッパという国王が乱立する中で、自力で立憲君主制に離脱した「民主主義」の国である。ある程度結論を考えながらも、確率的には、全く正反対の結論が来ても大丈夫なようにしているし、ある意味で「孤立主義」のように周辺国との関係を断って、コモン・ウエルス中心の「大英帝国集団」での貿易を行いながら生き残ってきた国であると考える。当然に「プライドも誇りも失っての集団主義」としてのEUに残るという選択はしないし、そのような選択をしてまで、ヨーロッパであるというような感覚は少ない。そのように考えれば、日本のように「韓国の反日政策や不買運動をしながらでも、土下座外交をしながら韓国との友好関係を模索する日本」には全く異なる人種であることがわかる。現在の日本のような、「国家としての誇りを失う」ということを最も恐れている彼らにとって、EUに残って国家を失うことの方が大きなリスクなのだ。それくらいの気質がわからない日本の人々は全く見えていない。
さて、このような状況の場合、イギリスは「大きな混乱」が予想される。しかし、「その離脱の混乱に耐えられるだけの国力を蓄えること」が最も重要であり、その時にほかの国との関係も大きく変わるので、継続性をなるべく維持しながら、その新たな環境下での国家関係や外交関係を維持するということになるのである。
日本の場合、マスコミが勝手な思い込みの意見を掲載し、そのうえ、あまり取材していない記事なので現実に即していない。その現実に即していない記事に、企業が翻弄されて、結局国益を大きく損なっているということになる。本来は、様々な状況を想定し、その中でしっかりとした。ことをやっていかなければならないのであるが、残念ながらそれ以上の話ができていないのだ。
ジョンソンが首相になったことで、「交渉のないEU離脱」の確率が高まった、日本人の中には、そのようなことが出来るというような感覚を持っている人は少ない。そのために、どのようなことが起きるかあまり想像できないようである。同時に日本人は、このような発想をさせると、常に最悪を考える。まさに、モンスターペアレンツさながら、単なる擦り傷で破傷風から死ぬという発想が出てくるのである。将来予想の各理論を合わせるという発想ができないのが日本人の特徴ということになる。まさにそのことが上記の記事のような話を作り出してしまう。まずはしっかりと現実を見て、その内容を検討すべきではないか。