健康と創作|中島梓織
こんにちは、おぺです。
初日まで一週間となりました。稽古も、ゆっくりじっくりではありますが、確かに進んでおります。約12000字の台詞(とそれに含まれる膨大なニュアンス)を一身に背負ってくれているみるちゃん、「見る」という一番の仕事をしっかりこなしてくれている演出助手の三人、積極的に創作に参加してくださって、刺激的な意見をくださった稽古場見学の方々、ほんとうにありがとうございます。感謝の気持ちを忘れずに、あと一週間、できるところまでやっていきます。
個人的に、今回は、「健康」をテーマに作品をつくる、ということだけではなく、創作活動の内外を問わず「健康」を意識しながら生活をする、ということを、決めていました。
大学での演劇活動は、今年で四年目になりますが、これまでの三年間は、たくさん公演打ってなんぼ、おおきな公演打ってなんぼ、休む間もなくやってなんぼ、の精神でやってきました。そのときどきでは、あまり意識していませんでしたが、やらねば!という焦燥感は、常にあったと思います。
一つの作品をつくることに関して言えば、短い期間に長い時間の稽古を詰め込んで、小屋入りの一週間前くらいからは生活よりも何よりも作品を優先して、湯舟には浸からない、食べる物は選ばない(コスパとカロパで選ぶ)、寝ない。ぎりぎりまで心身を追い込んだ方がおもしろいものができるのではないか、というか、そうしないとおもしろいものができないのではないか、と考えていました。「常に作品のことを考えている」という状態を、自分で自分に課していました。
もちろん、なるべくたくさん、なるべくおおきく、なるべく休む間もなく、その期間は、ぎりぎりまで心身を追い込みながら、「常に作品のことを考えている」という状態で、演劇活動をしてきてくれた過去の自分のおかげで、現在の自分の環境があることにはちがいありませんが、そろそろ、体と心が追い付かなくなってきました、というのが、本当のところです。
追い付かなくなってはじめて、こうなってまで演劇がしたいわけではない、ということに気づきました。よりよく生きていきたいがために演劇をしているのに、それで身も心も滅ぼしてしまっては本末転倒です。
そして、いま、ここまで休みなく走り続けてきてくれた自分に感謝をしつつ、これからも走るのをやめないでいるためのペース配分を考えなければいけなくなってきた、四年目の夏、いま、に至る、というわけです。
『健康観察』の創作期間は、勝手にわたしがこれからも演劇を続けていくための方法を模索している期間でもありました。まだ、肝心の劇場入りが残っていますし、いますぐにこれだ!と言えるわけではありませんが、まあまあこんな感じなのでは?と言えるくらいには、見えてきたような気がします。
以下、箇条書きではありますが、今回の創作期間で気を付けていたことと、もうちょっとこうしておきたかったことを記録しておきたいと思います。(ほぼ自分用です。)
・前半は週2、後半は週3~4の稽古
稽古と稽古の間を空けることで特に精神的な余裕が生まれる。アルバイトに入る日も確保できるので、金銭的な余裕も。(金銭的な余裕はのちに心身の余裕につながる。)
※ 合計の稽古時間は短くなってしまうので、作品のサイズによって「期間」を調整する必要がある。今回は三十分の短編作品なので一か月程度でちょうどくらいだったけれど、中編から長編になれば、同じ「頻度」で稽古をするには、二~三か月程度の「期間」が必要になる。
・創作期間の三分の一を「おしゃべり」、三分の二を実際の稽古に使う
最初から最後までのおおまかな構成と、主軸となる考え方と、実際こんな感じと説明できるだけの脚本を稽古開始までに用意する。最初の三分の一の期間は、全体でそれらを共有して、おしゃべりをしながら考えを深めていく。同じ時期に、脱稿に向けて本格的な執筆をする。残りの三分の二の期間で、実際に稽古をする。そのうちの、最後の三分の一の期間は、通し稽古を中心に、全体を見ることや繰り返すことを重視して稽古をする。
※ このような「ペース」で稽古をしたいと考えているということを、あらかじめ全体で共有しておきたかった。俳優さんが、稽古場以外で、台詞を覚えたり演技プランを考えたりする時間をきちんと確保するため、「ペース」だけではなく「ほぼ確(ほぼ変わることはない)」の部分も、その都度、明確にする。
・公演自体の準備は分担し、前もって少しずつ進めておく
今回の公演が三団体でのショーケース公演であることも、余裕を持って創作に挑むことができた要因だと思う。他の二団体の皆さんには公演の企画製作に関して、本当にお世話になっていて、本当にありがとうございます。
※ 本公演でもこれをきちんとできるようになりたい。作品をつくることと、公演をすることを、うまくわけて、うまく絡めて、考えられるようになりたい。そのためには、時間の余裕とお金の余裕を前提にした、身の丈に合った「サイズ」を選ぶ必要があると思った。
・ちゃんと湯舟に浸かる、ちゃんと食べる、ちゃんと寝る
いままで「わかってはいるけれど、やらなければいけないことがある」とないがしろにしていたことを、やらなければいけないことをやるのをがまんして、ちゃんとやってみたら、当たり前だけど、健康でいられた。当たり前だけど。銭湯、自炊、八時間以上の睡眠ならなおよし。
ほかにもまだまだあるような気がするし、これはあくまでわたしの健康の話なので、団体としての健康や、創作に関わってくださる皆さんの健康についても、公演が終わってからゆっくりお話しすることができたらと思っています。
残りの稽古も、本番も、心身の健康を第一に、がんばります。「死ぬ気で」とか、冗談でも言わないようにします。
わたしももうすぐ二十二歳になるのです。