L.ヤナーチェク 「おとぎ話」JW Ⅶ-5
第37回直方谷尾美術館 室内楽定期演奏会の2曲目です。
まず、こちらがその動画です。
ヤナーチェクの名前は村上春樹の長編小説「IQ84」に引用され、日本で広く知られるようになりました。
1900年をまたにかけて活躍したチェコ東部のモラヴィア地方出身の作曲家であり、当地の民俗音楽を研究し、それを基礎とした作風を特徴としています。
20世紀最大のオペラ作曲家の一人で、室内楽も多作でありますが、日本では彼の作品の全貌についてはまだまだポピュラーとは言い難いようです。
ヤナーチェクは親ロシア家であり、ロシア文学を愛し、それを創作に大いに反映させました。
この曲もその一つで、ジェコーフスキー作の抒情詩「皇帝ペレンデイの物語」から霊感を得たものです。
イワン王子が試練を乗り越えてマリア王女と結ばれる物語ですが、それを音楽で緻密に描写したものではなく、二人のラブ・ロマンスを醸すまでにとどめています。
ピアノの親密な独奏に始まり、チェロのピチカートが優しく答え、その親密でほのぼのとした叙情が曲全体に貫かれています。
タイトル通り、童心に戻らせるような純な音楽です。
<参考>中村滋延九州大学名誉教授(作曲家)とかんまーむじーく代表 渡辺伸治氏とのフェースブック上でのやり取りが面白かったので、併せて転載いたします。
中村名誉教授:ヤナーチェクをやるんですね。聴きたいですね。一時、ヤナーチェクにはまってました。論文らしきものも書いてました。67歳で若い人妻に恋(プラトニック)をして、それがエネルギーになって74歳で死ぬ寸前まで旺盛な作曲活動を展開。見習いたいですね。
渡辺氏:これまでにヴァイオリン・ソナタと弦楽四重奏曲「クロイツェル・ソナタ」を上演しましたが、「おとぎ話」はあまりにも楽想が異なる純な音楽に驚きました。
しかしそれはヤナーチャクの晩年のプラトニック・ラヴを予感させる彼の中にある純粋さだったのですね。この中の王子はヤナーチャクそのものだったかもしれません。