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富士の高嶺から見渡せば

8月2日を境にリセットされた日韓関係 ③

2019.08.04 08:42

引き続き、8月2日、韓国を「ホワイト国」から除外した当日の動きを中心に、日韓関係を考えていきたい。

日本の閣議決定を受けて、経済政策を担当する洪楠基(ホン・ナムギ)副総理兼企画財政相は、この日の午後開かれた関係省庁緊急合同会議のあとの記者会見で、「韓国も日本を『ホワイト国』から除外して輸出管理を強化する」と発表した。そのうえで、日本政府による貿易管理の強化は「両国の信頼関係を損なうもの」だと非難し、さらに「WTO世界貿易機関の規範に背く措置だ」として、WTO提訴の準備を加速させる方針も示した。日本の措置がWTOのルールに背く措置だと非難する一方で、韓国も同じことを実行し、しかも、自分たちが対抗措置としてやることは問題ないが、日本が同じことをやるのは、WTO違反だというのは、論理が完全に破綻している。韓国のメディアは、この論理矛盾に気がつかないか、あるいは気づかないふりをしているだけかもしれない。

この間の日韓関係をめぐる韓国側のさまざまな動きを見ていると、韓国側の発言に同じような矛盾を感じたり、日本がかつて言ってきたことを韓国側が自分たちの主張だと堂々と発言したりする場面に出くわし、戸惑うことがしばしばある。

たとえば、この日、閣議決定直後の午前11時、大統領府青瓦台の報道官は声明文を発表し、『深い遺憾』を表明するとともに、「対話と疎通による問題解決のために韓国政府は最後まで開かれた姿勢で臨んできた」「今後は日本の不当な措置に断固たる姿勢で対応していく」と強調した。元徴用工が日本企業を相手どって起こした損害賠償訴訟で大法院判決が出された後、日本政府が、日韓請求権協定の仲裁規定にそって、ことし1月に外交協議を求め、5月には仲裁委員会の設置に関する協議を申し込んでも、一貫して応じなかったのはどちらなのか。第3国による仲裁委員会設置に関する回答期限が過ぎたあとに、韓国政府は、日韓両国の企業が資金を出し合う基金の創設を提案してきたが、日本の外務省は担当事務レベルで「国際法違反の状態の解決に資するものはない」として、直ちに拒否回答を出した。ただし、相手の外交上の立場と面子を潰さないために、この提案があったことについては非公開扱いにしてきた。しかし、日本側がすでに提案を拒否し、受け入れれないことが明らかになっているにも関わらず、韓国側は一方的にマスコミ発表し、あまつさえ駐日大使が河野外務大臣とマスコミの前で公然と口にしたのである。河野大臣の韓国大使に対する「無礼発言」は、そういう経緯のなかの発言であり、あの場で韓国側の信義違反に重大な警告を発する必要があったのである。

本題に戻って、8月2日の動きのなかで、韓国の政界、官界からは日本を糾弾する発言が相次いだが、そのなかで、与党「ともに民主党」は「今回の決定は韓国と経済戦争を行うという宣戦布告も同然で、韓国は日本の経済侵略に断固として対応していく」「韓国経済を揺さぶろうとする経済侵略行為は決して容認できない」「第2の独立運動を行う覚悟で断固と対応していく」といった勇ましい声明を発表した。日本による「経済侵略」というのだったら、貿易の優遇措置など求めずに、日本からの輸入品をすべて拒絶すれば済むと思うのだが、これも論理矛盾だ。

その与党「ともに民主党」は、日本の半導体素材3品目の輸出管理の厳格化措置が明らかになったあと、党内に「日本経済侵略対策特別委員会」なる組織を立ち上げた。7月25日、その委員長を務める崔宰誠(チェ・ジェソン)など与党議員の一行がソウル外信記者クラブにまでわざわざやってきて、委員会の設立趣旨を説明し、日本批判をぶちまけた。

「(日本企業まで犠牲にする貿易規制措置は)神風特攻爆撃が行われた真珠湾空襲を思い起こさせる。(戦犯国の)日本が今度は経済戦犯にならないことを願う」 「今回の経済侵略の最終終着点は、憲法を改正し再武装することだ。戦犯国日本の再武装という妄想は世界経済の破壊につながる」 と言いたい放題だった。

ロイター通信の記者が「経済戦争や侵略などの言葉づかいは民族主義的・感情的な対応を引き起こし、かえって外交を難しくさせる」と苦言を呈し、産経新聞の黒田勝弘特別編集主幹が「経済侵略の代わりに『日本経済依存対策委員会』にしたらどうか」と嫌みを込めて質問すると、「名前というものは正確な規定が重要で、慰安婦被害者の過去の事実は国家による強姦、国家性暴力と言うのが正しいネーミングなのに日本が認めないから、こうした問題が起きている」と逆ギレし、めちゃくちゃな論理を展開した。<中央日報7月26日、日本経済侵略対策特別委委員長「日本、自国企業の被害甘受…神風自爆を想起」


さらに2日の動きを続ける。

大統領府青瓦台の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長は、「韓国に対する信頼がなく、安全保障上の問題を提起する国と、軍事情報の共有を続けることが適切かどうかの判断を含め、総合的な対応措置を取る」と述べ、日本への対抗措置として、韓日軍事情報包括保護協定GSOMIAを延長しないことを検討する可能性を政府高官として初めて示唆した。<KBSニュース 青瓦台「日本との軍事情報共有が適切かどうかを含めて検討も」>


同じことは日本からも同様に言える。信頼感を持てない国に、日本が所有する衛星やイージス艦、地上レーダーなどの貴重な情報を提供することの是非は、論じなければならない。日本がこうした軍事情報を提供する代わりに、韓国側から得られるのは北朝鮮内部のヒューミント情報が主だといわれる。

この日の夕方、韓国外交部は、韓国駐在の長嶺日本大使を呼びだした席で、趙世暎(チョ・セヨン)第1次官は、「経済報復措置を決行した日本を韓国国民はこれ以上、友好国と考えることはできないだろう」と述べた。<KBSニュース外交部第1次官 「日本をこれ以上友好国と考えない」


友好国としての立場を最初に放棄したのはどちらなのか。レーダー照射事件をはじめ、慰安婦合意の一方的な破棄、朝鮮半島出身労働者の賠償請求訴訟をめぐる大法院判決で、1965年以来、続いてきた日韓経済協力の枠組みを突き崩したのは韓国側であり、「もはや友好国ではない」という言葉は、日本から韓国にとっくに投げかけていたことばでもある。

文在寅大統領のこの日の国民向け談話については、稿を改めて述べることにしたい。