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先輩との最後の夏

2019.08.04 19:01

ひといちばい敏感な子〜HSC(Highly Sensitive Child)

感受性が高く、繊細・敏感で、とても本質的な子どもたち。

共感性においても、環境がとても重要だと実際に感じています。

特性が周囲に理解され、その才能が発揮されますように。


一方で、うちの中学2年のHSC息子は野球部という割と過酷で理不尽な場所でも

素敵に共感性を発揮しています。

それは自ら選んだ環境だから。


野球部の先輩との最後の夏を書きました。

 

7月、3年生にとっては最後の大会、市総体。

その大事な大会の2日前にエースの先輩と監督である先生(春に移動があり新しい先生)がケンカをしたと、帰るなり興奮した様子で話し始める息子。

玄関先で地面に野球のバッグをドサッと下ろし、ことの始終を話し終えて私に言いました。

『かあさん、K先輩は間違ってないよね!』

先輩と先生のケンカのきっかけは、野球のバックを3年生数人が自転車に置いていたことからだそうです。

先生 「なぜ、野球バックを自転車に置いているんだ! K!」

K先輩 「重いからです。」

(こういう場合、いつもなら無言で流すそうですけど、この時は違った。)

場の空気が一変。…


先生 「生徒会なのに、ルールを守らないとはどういうことか?」

K先輩 「では野球部員でなく、生徒会という立場で言います。

     ルールの方がおかしい。置いておくと盗られるという前提でなく、

     そういう事をしないという気風を自分達で作ります。」

先生 「、、、、、、、、外部の人に盗られたらどうするのか?」

K先輩 「外部の人は、許可なく入れないのだからそれは学校の責任で、

    生徒の責任ではないです。」

先生 「、、、、、、、、じゃあ、好きにすればいい。」

K先輩  無言で立ち去る。


かあさん、K先輩間違ってないよね?

うん、間違ってない。

・学校は安心・安全な場所であってほしい。

・そういう場所であることが本来の姿だといった先輩は素晴らしい。

・K先輩はずっとエースとしてチームを引っ張ってきていて、さすがだなあと思った。

 チームのモヤモヤした雰囲気をズバッと断ち切ってくれたから。


チームは冬の厳しい練習を乗り越えて実力はあるにも関わらず、これまで勝つことができずにいました。

K先輩も春から投げられず悔しい思いを抱えながら、寡黙にストイックに頑張っていました。そんな先輩を息子は尊敬していました。

先輩たちとの最後の夏を大切に過ごそうというようなことを話しました。

K先輩、翌日の練習は笑顔でこなしていたそうで息子も安心したようでした。

そして、すったもんだもありながら、チームは実力を発揮して勝ち進み、いよいよ決勝へ。


そして迎えた決勝戦。

最終回の攻撃でK先輩が最後のバッターでした。

1塁アウトになり、攻守交替の場面で息子はK先輩のところに走り寄り、水筒、帽子、グローブを順番に手渡しました。

何か声をかけたようで、K先輩がパッと笑顔になって守備につきました。

えっ?! 何を話したのだろう。


最終回の守りはとても長かったですが、投げ抜き、守り抜いて優勝旗を手にすることができました!

わー!っと喜ぶのかと思いきや、相手チームへの思いやりなのか静かなものでした。

 

それでもやっぱり夜は賑やかな祝勝会となり、

早々に、K先輩が息子にウーロン茶を注いでくれていました。

一言何か言ったような言わないような感じでしたが、

しばらく息子の傍らでニコニコしながら立っていました。

他の後輩たちにも注ぐのかなあ、と見ていましたが息子だけでした。


会の終盤、今度は私のところにK先輩のお父さんがやって来て、

『いやー、ありがとうございます。

一生懸命サポートしてくれて、見てて凄く嬉しかったです。』と

目に涙を浮かべて言うのです。

私も感謝しつつ、もらい泣きをしてしまいました。

投げたくても投げれなかった息子を父はどんな思いでみていたのでしょう。


最後の場面で、K先輩を笑顔にしたのはどんな言葉だったのだろう??


聞くのは野暮かなと思いましたが、数日してから聞いてみました。

「あのとき、何て言ったの? 面白いことでも言ったのかな?と思ったけど、そんな余裕ないよね。」

「あー、なんだったかなー?...」

「確か、『あと3つです。県に行きましょう!』って言ったかな」


そうだったんだー。(それは嬉しいかも!)


先輩は何て?

『ありがとう!』って。


決勝戦に応援にきていた担任の先生も、

『ケンスケのあれ、良かったなー。ああいうことができるから野球部は優勝するんだな』と感心されたと。

『俺、試合出てないし、別に前から先輩たちもやってるし』と息子は当たり前のことと

思っている。

そうか、伝統なんだね。

それなら大切に受け継いでいってね。

ついでに、祝勝会でのことも聞いてみました。

先輩は何て言って注いでくれたの?

「うーん、『いつもお世話になっているからな』って言ってくれた。でも、先輩に注いでもらうなんて悪いと思って、すいませんを2回位言ったよ。」

それから、K先輩のお父さんがケンスケのサポートが嬉しかったと話してくれたよ!と伝えると、

それが一番響いたみたいで、頷いて喜んでいました。



最後の最後に、県大会2回戦まで進みベスト16という立派な成績で先輩たちは最後の夏を終えました。

お疲れさまでした。ありがとうございました。


また、我慢の季節の始まりだ。。。