修士課程における交換留学の特徴
氏名:田中秀樹
所属:北海道大学文学研究科西洋史学講座修士課程2年
留学歴:2015年2月~3月 語学研修(フランス、トゥール、トゥーレーヌ学院)
2017年8月~2018年7月 交換留学(フランス、パリ第七大学)
こんにちは。北海道大学文学研究科所属修士2年の田中秀樹です。留学をしたいと考えている皆さんにとって、留学開始時期やその期間などは大きな関心事の一つでしょう。長期留学の場合は特に、いつ行くかという要素がその留学自体の性格に大きく影響を与えます。本来修士か学部かという2つの選択肢が存在しますが、実際には長期留学を考える大半の学生が学部生の段階(主に3年後期)を留学開始時期に選んでいます。反対に私は修士1年の後期から長期留学をするという決断をしました。そこで今回は修士課程での長期留学の特徴や学部での留学との違いなどに焦点を当てたいと思います。
パリ第一大学(パンテオン・ソルボンヌ)
1. はじめに
まず前提として、これは私個人の意見ですが、修士や学部という違いは留学の性格に大きく影響を与えますが、質的にどちらが上でどちらが下ということを意味するわけでは全くありません。最も重要なことは「留学中に何をどのような方向で為したか」です。自身の研究に力を注ぐ人もいれば、留学先や周辺国の文化・習俗を学ぶために観光を重視したり、友人とのコミュニケーションなどに重心を置く人もいます。これらすべてに同等の価値があると思いますが、留学の成果を最大限得るためには、「何のために留学をしたいのか」という目的と留学先での環境や行動が一致していることが重要です。例えば、「自身の研究を深めたいと思って留学したけど授業は概論ばっかりで専門的じゃない」といった事は避けたいですよね。このような留学前と留学後のギャップを少しでも埋めるために、修士での留学と学部での留学の根本的な性格の差を知ることは有益であるように思います。
2. 修士課程における留学の特徴:授業・勉学
それでは、具体的に修士課程における長期留学にはどのような特徴があるのでしょうか。まずは大学内の授業及び勉学に関して特徴を挙げるとすると、大きく分けて3点あります。
①海外の研究動向に関し敏感になれる(日本と努力する分野や方向が大きく変わらない)。
②学部生向け授業に加えて院生向け授業を受講可能。(より専門的・選択肢多)。
③学部生に比べ授業数が多い(予習/復習量多・スケジュールの柔軟性×)。
まず①に関してですが、修士では多くの学生が自身の専門分野をすでに確定させておりその延長上として海外で学ぶことができます。専門分野のまだ曖昧な学部生とは異なり、留学先での専門の授業は必ず自身の研究や論文作成にも役立つでしょう。学部生は自身の専門にとらわれず履修できることが大きな魅力ですが、留学後に卒論などのテーマを決めるケースもあり、勉学の内容と専門のテーマ設定の間の一貫性という点では修士に分があると考えます。
②の点は①とも関連しています。院生は学部生向けの授業に加え修士向けの授業も履修の選択肢に入るため、非常に多くのなかから授業を選ぶことになります。自身の実力や興味により正確にあった授業を見つけることができるでしょう。しかし修士向けの授業を少なくとも1つは履修する必要性があるので、留学を楽に過ごしたい方には不向きと言えます。
③について言うと、修士向けの授業の履修に加え学部生の授業を履修すると多くの場合、他の学部での留学生より週の履修単位数は多くなります。そしてその分、授業のための予習・復習の量は多くなります(教えてもらうための友達とのコミュニケーションの機会は多くなりますが)。加えて、修士のゼミなどは出席が非常に重要であるため、観光で周辺国などに長期に遊びに行ける機会は比較的減るでしょう(僕の留学中には、金曜と月曜には授業を入れず毎週4連休を作る学部生がいました)。
(授業風景)
3. 修士課程における留学の特徴:生活・その他
勉学以外で修士課程における留学の特徴を挙げるとするなら、以下の2点です。
①寮の割り当て時の優遇(※少なくともパリにおいては)
②日本の大学での修了要件と単位数(※2年で修了を予定する者の場合)。
①に関して言うと、パリは土地の狭さや建物の高さ制限、人口の多さなどの理由で、留学生全員が大学寮に入ることができず、抽選で寮の部屋が割り当てられます。少なくとも私の知る限り、パリで抽選に外れていたのは学部留学に来た方たちでした。パリの大学寮と一般のアパートでは家賃が毎月300~600ユーロほど違うので、これは大きな差であると思います。
②については、学部生は専門の3年間で卒業要件を満たせばよいですが、修士は2年で修了要件を満たす必要があります。ですので、留学先で全く単位を取らないと2年間での修了は難しいです。
いかがだったでしょうか。要約すると、修士課程における長期留学は学部生に比べ勉学や研究への比重が大きいことが分かります。ただ修士でももちろん旅行は普通にできます。僕はフランス各地だけでなくブリュッセルやアムステルダム、ロンドンなどにも行きました。
重要なことは「自分が留学中に何をしたいか」、またそれは修士での留学においてより成し遂げられるのか、それとも学部での留学においてなのかを考えてみることだと思います。皆さんが留学開始時期を決めるにあたり、少しでも本記事が参考になれば幸いです。