個人企業にも必要な企業調査~信用調査~
最近聞かないことのひとつに、「よその家庭を訪問したら、玄関の靴の並べ方を見なさい」があります。昔からよく親に言われたことです。
靴の並べ方ひとつで、その家の内容が分かる。だから、履物はいつもちゃんとそろえておきなさい。…と。
企業も、同じです。
1⃣調査の必要性
企業調査と言えば、大企業を初めとして、中堅企業などでもやっている物だと言う認識はあるでしょう。
それに対し、零細企業、とりわけ一人から数人の社員を抱えている会社にとっては、どれくらいの企業が、これをやっているでしょうか。
勿論企業内容によりけりですが、1人親方の個人企業ともなるとそのような調査をしていることは少ないでしょう。
多くは、同業者間の情報(噂・TVニュース)がメインかもしれません。
お得意様が、個人でも企業である限り、信用調査をすべきです。
逆にお得意様が、不特定多数と言うスーパーなどの場合は、市場調査も必要です。
外部にそれを頼む場合、調査が長期に及ぶ必要があるとすれば、多額の資金が必要にもなるかもしれません。
興信所に依頼すれば、調査費一回10万円、15万円とかになり、又、それがチケット制にもなっていたりするでしょう。
知名度のある企業や大企業でも、内情は分かりません。
いくら下請法も整備されてきても、大企業も何かあった時「ない袖はふれません」。
過去における、多くの銀行破産など有名企業の倒産は、何で?と思われることばかりです。
「売り上げとは、売った債権の回収が終わって初めて売り上げたことになります。」
あなたの会社の債権の回収の確実性は、常にアンテナを建てておかねばなりません。
倒産時もやはり、予兆があるとも言います。
バブル時代と言うのも、戦後なにも無い時代があったから出てきたものです。今後それは当然あり得ません。バブルの様な時であれば、大盤振る舞いで、無い袖でも何処からか取り揃えて支払いに応じたこともあるでしょうが、もうありません。
2⃣調査項目
● 常に、お得意様の総合的な信用情報は、把握する体制を整えておくべきです。
総合的とは、家庭環境もと言う事です。家庭がうまくいっていないと、仕事にも影響することは当然だからです。
その具体的な事項と言えば、次の事があげられます。
❶会社の業務沿革史(操業~現在)
❷会社の現況(売上高・財務状況・事業所内及び従業員状況・販売先状況・工場及び製品状況・借入・仕入れ先など)
❸社長自身の環境(性格・家庭環境・身内環境・対人関係・近所の批評など)
❹取引先銀行内容
❺法人であれば、株主について
その他、❻会社のHPや、役員・従業員のブログもみます。
● これらを調査すると言っても、中々難しいでしょう。(登記簿の閲覧は出来ます)
興信所でもない限り、(初取引でもない限り)直接聞き取り調査が出来ないかもしれません。
相手企業が、「会社案内」を持っていれば見るべきですが、数人規模までだと、作っていないでしょう。
そこで、一つには、お得意様と出来るだけ親しくなって、お互いに行き来するぐらいの仲であることがてっとり早いです。
それに、登記簿からの判断もいろいろできます。
其れも難しいなら、外観から推測するしかありません。
「企業(情報)=個人(情報)」が多いのでもっと入手は困難ともなります。
● 初めての取引であるならば、反って聞き取りやすいので、登記簿の閲覧や契約書を取り交わし、相手の許可を確認の上、会社、工場見学などを細かく実施しましょう。
この時、よく見ておくことのひとつには、事務所や工場内の整理整頓や掃除・従業員の動き・親密感などの考察です。
会社内の縦の連絡と横のつながりのあるなしがいかに大切かは、枚挙にいとまがりません。
「ラインとスタッフ」は、いつも言われるところですが対立関係があるものです
会社案内を基に(あれば)、記憶の薄らぐ前に、よく読み記憶し、詳細に記録しておきます。聞き取りの際に、質問事項のネタとします。
例えば、見学時、建物の修繕が何度も行われていれば、お金がないわけではない証でしょう。
・「在庫」・・・もう一つ見られたら見たい点が「在庫」状況です。
適切な在庫数と言うものはあります。在庫がはけずに溜まっていれば、資金繰りや商品の陳腐化に影響している事を臭わせます。
「写真撮影」
● 出来れば、相手の会社や工場、倉庫、従業員の動きなども写真取りしたいところです。
《★注意が必要なのは、相手の企業としての各種権利です。
一般に建物や構築物などが、巷にある時にその撮影対象物の所有地外からそれを撮影することは、自由とされています。公共性があるからです。
但し、勝手に、所有者の敷地内に入って撮影することは当然いけません。
敷地管理者の了解がない限り、「住居不法侵入」です。
また、「内側」とか「敷地」と言うのは、所有者の「施設管理権」(民法206条)があります。出て下さいと言われていても、出ない場合は、「不退去罪」です。
著作物・肖像権などにも気を付ける必要があります。
一番いいのは相手に確認を取れることです。
しかし、多くは不審がられますし、企業秘密としても拒否されますので、あきらめも肝心です。
せいぜい、みんなで一緒に撮影する記念撮影だけかもしれません。》
● 得意先が、小売店舗などであれば、❼店舗での状況(販売員関係、客数・営業時間別・商品の陳列状況・扱う商品の特異性・店舗立地及び周辺状況など)も調べます。
これについては、あなたの家族の人にも手伝ってもらいやすい事項なので、協力をしてもらいましょう。
勿論確認をとり、正々堂々と写真撮影します。
質問・撮影も不確かな解答や拒絶された場合、特許など企業秘密でもない限り、チェックが必要です。
● 工場や大きな倉庫を持っている場合は、早めにそこにいる従業員とも仲良くなり、情報を得る度量が必要です。
よく有る例は、お互いの慰安旅行に同行する・会社同士で運動会、BBQ、食事会をやる。
これらは積極的に参加することで、親密性も増しますので、余計に情報を得やすくなるでしょう。
ただ、その時、「うちの会社の内情を知りたがっている」と思わせない工夫が大切です。
調査も初めての時は当然ですが、その後、突如行ったりすると、相手の財政状況に不信感を抱いていると思わせてしまいます。
定期的に行うものであれば、不信感は持たれにくいでしょう。
出来るのであれば、定期的に行いたい旨を、最初の契約時に1条項を入れて置くほうがいいでしょう。
3⃣ まとめ
以上、これらはあくまでも、業務の取引に関する際の相手の経営が確かであるかどうかを判断するための調査です。
企業スパイではありません。ですから、たとえ、相手のマル秘情報を得ることがあっても、それについては、経営状態に関係ない限り感知してはいけません。そこに触れることで、あなた自身が犯罪に巻き込まれるかもしれません。
・エンドユーザー
全くのエンドユーザーが相手の場合は、現金決済・クレジット決済がほとんどですので、これらをしてもあまり意味がないかもしれません。
現金支払いの確実性があるかどうかは、初対面ではわかりませんので、少額である場合は、その場ですぐ決済します。
その他は、初対面ではなくても、契約書を交わします。
又、家や車のような高額であれば、ローンを組むことです。身内でもです。
・ご近所商売
街中の御近所周りを商売としている業者ー米屋・八百屋・酒屋などーの人は、「つけ売り」があることでしょう。
この場合は、近所の情報が一番の情報ですので、人のうわさ話には必ず加わっていたほうが良いです。と言って、他人の悪口を言うのではありません。聞き耳を立てると言う事です。そのお得意さんが、商売をやっているなら、上の調査はしやすいでしょう。
個人なら、つけ売り時の、上限を決めた契約書を交わすことも必要でしょうから、交わすようにします。
それに応じない時は、つけは出来ないとはっきりいいましょう。
この商売には、なれ合いが多いので、そこに付け込まれやすいのも事実です。
「近所だから、支払い遅延や踏み倒す事は出来ない」のと同時に「近所だから、つけ買いに応じざるをえなくなりやすい」のです。
その点で言えば、近所での買い物は、現金決済以外しないのが、一番の隣人付き合いかもしれません。
・与信管理
業者同士でも、そうでなくても、初めての取引の場合は、現金決済が普通です。
それを繰り返していくうちに信用をまし、小切手・手形決済などの様な決済の仕方になることが多いものです。
しかし、中には、初めは、しっかり現金決済していても、つけ取引になると支払いに問題が出てくることもあります。それを見越した悪徳業者もいますので、マニュアル化した与信管理も大切です。