「宇田川源流」【お盆特有のエロ】 至極のエロ話(1)淫乱霊に捕まった女の話
「宇田川源流」【お盆特有のエロ】 至極のエロ話(1)淫乱霊に捕まった女の話
今年のお盆は何にしようかと考えた。
毎年、「お盆休みのエロ」であったが、なんとなく芸がない。そういえば今年から「宇田川源流」にしたのだから何か変えて見たい。そこで今年は、「幽霊とエロのコラボ話」を今週一週間やろうと思う。まあ「日本万歳!」は今週はお休みで、あとはすべて「幽霊とエロ」の話にしようと思ったのである。
しかし「幽霊とエロ」とすると嫌がる人もいるので「お盆特有のエロ」とすることにしたのである。まあ「お盆特有」というところに幽霊を感じてくれればよいかと思う。ここの話は「聞いた話」または「私自身が体験した話」である。しかし、まあ、一応誰が体験したのかわからないような書き方にするものとする。実際に「聞いた話」もあるので、その教えてくれた人が話を盛っていたりあるいは一部創作したりということはあるかもしれないが、しかし、基本的にはその辺も検証せずにそのまま話をすることにしたい。まあ、裏を取るといっても難しいので。
それでは能書きはいい加減にして、今日の話をしよう。
その女性、仮に洋子(仮名)としておこう。彼女は、もうすぐ40歳になるのに結婚相手がいなかった。現在では、個人の自由などもあり、また、そのようなことをあまり言うことは「セクシャルハラスメント」と認識されてしまっているのでなかなかそのようなことを本人の前で話題にすることもできない。しかし、当時はまだセクハラといってその話題を遮ることはできるような時代でもなかったし、また、多くの人が「まだ結婚しないのか」などというようなことを平気で聞いてくるような時代であった。
洋子は、二十代の時に大恋愛をしていた。もう命がけとも思える大恋愛であったが、しかし、その男性はすでに結婚していた。つまり「不倫」であったのだ。そして、その男性の妻が妊娠したことから、男性に別れを告げられてしまったのである。洋子はそのまま会社にいることもできず、中小企業の事務の仕事に就くようになった。
まだ若くそして美しかった洋子は、その新しい企業でもかなり男性には人気があった。しかし、洋子はその男性のことが忘れられず、いつまでも男性とお付き合いをすることができないでいたのである。そのままもう12年がたっていた。
「洋子さんは、いい人いないの」
女友達の加奈子が言った。ある日の女子会で、洋子を含む四人の女性が集まった。二十台、三十代がいたが、洋子は最も年齢が上であった。その中で一番若い加奈子が、少しお酒の入った勢いでそんなことを聞いた。
「なんで」
「だって、洋子さんきれいだし、仕事もできるし、優しいし」
「そんなことはないわよ」
洋子は少し照れたような感じであった。
「縁がないんですか」
「洋子さんはそんなことないですよ。洋子さん本当にいろんな男性に好かれていて。こっちが嫉妬しちゃいますよ。」
一緒にいた直美が加奈子の言葉を洋子よりも先に言葉を挟んだ。
「でもね」
洋子は、なんとなく言葉を濁した。昔の男がどうしても頭がから離れなかった。
「それならば新しい縁ができるように、縁結びの神社に来ませんか」
もう一人の、洋子の次に年長の昌代が言った。
どこか改めてというのもおかしな話であったが、酒の勢いもあって、そのまま近くの神社に行った。少し暗く、そして、不気味ではあったが他の三人は何も感じないのか鳥居をくぐって奥まで入ってった。そしてその時に何かを踏んでしまった。その瞬間、洋子は、何かが自分の中に入ってくることを感じ、いやな感覚があった。しかし、それでも他の三人に何も言わずに、そのまま笑顔で過ごした。何を踏んだのだろう。でも、それは暗くてなんだかわからなかった。
その日の晩から、洋子はどうしても体が火照って仕方がなかった。何か体の中から熱いものがこみあげてきて、どうしても体が疼いて仕方がなかった。その日、久しぶりに洋子は自分で自分を慰めた。なにか男が欲しくてほしくて仕方がなかった。
「どうしてなの」
翌日、洋子は一人であの神社に行った。鳥居の横には「縁結び守」と書いた、かなり黒ずんだ白とピンクのお守り袋があった。そのお守りを手に取った瞬間。
「あらやだ」
手の先から何かが体の中に入ってきて、また耐えきれないほど、体の中が熱くなった。恥ずかしい話、下着の中がどうしても疼き、そしてそのまま立っていられないような状態になっていた。
洋子は、それから一週間会社を休んだ。いや、休むしかなかった。もう体力が限界になるまで、普通の生活が送れないくらいまで、自分で自分を慰めていた。宅急便の配達の男性が来れば、その人を家に引き入れて行為に没頭した。洋子さんはそのまま死んでしまうのではないかという気がして恐怖を感じていたらしいが、それでも、自分の体が何かを求めて暴走してしまい、それを止められない。そして、ややもすれば自分の意識がそのままどこかに行ってしまって、その暴走している感覚に、すべてを乗っ取られそうな感じであった。
「洋子さんどうしたの」
昌代が心配して洋子の家に訪ねてきたとき、洋子の部屋はカーテンも閉め切り、そして、熟れた女性のにおいで満ちていた。同じ女性である昌代も、さすがに耐えられるような状態ではなかった。
「ねえ、あの時から、ねえ、私、どうしたらいいの」
下半身にあてた手を休めることなく、ただ、意識だけはもとの洋子なのか、昌代に助けを求めた。昌代は、すぐに見ると、ワンルームの洋子の部屋のダイニングテーブルの上に、あの女子会の時のカバンとその横に黒く汚れた「縁結び守」が置いてあった。
「洋子さん、これ何」
「あの時神社で踏んじゃったらしくて、翌日見に行って、踏んだあたりを見に行ったらあったの。そ、それが、そのお守りを手に取ってから何か変わってしまって」
「洋子さん、ちょっと待ってて」
昌代は、友人と思われる人に電話をした。3時間くらいたって、昌代の友人という女性と、もう一人60代と思われる女性が入ってきた。
「淫女霊だね」
60代と思われる女性は、洋子を見ると、すぐにそういった。
「なんなんですか先生」
「う~ん、まあ、要するに男が好きで淫乱な女性の霊が洋子さんに乗り移っちゃったという子どなんだね。」
この先生という人のいうことには、このお守りを持っていた女性は、かなり男性遍歴のある女性で、男性との性行為が好きで好きで仕方がないといった女性であった。そして、その女性が本当の愛を見つけようと縁結びのお守りをもってお参りに行ったが、その本命の男性とはとうとう結ばれなかった。その男性と結ばれたいという欲望と、もともと性行為が好きな淫乱な本性だけがこの世に残り、その例がお守りに移っていたのではないかという。どうもその女性は、男性に殺されたか、あるいは本命の男性に振られて自殺したのか、その辺はよくわからないという。また、そのことは今回とは関係がない。好きな男性と結ばれなかった、そして、似たような境遇の洋子に、その淫乱女の霊が乗り移り、生前やり足りなかった性行為を洋子の体を借りてしているという。
「洋子さんも、ずっと男性を遠ざけていたから、何か淫乱な女と正反対でもっとも狙われやすい状態になっていたんでしょう」
「こんなことあるんですか」
昌代は、洋子を少し落ち着かせながらそんなことを言った。
「本当は少ないんだよ。昔はほとんどなかった。でも、今の女性は、年齢が高くなっても結婚しない人が多いから、少し多くなってきたかね。」
先生といわれる六十代の女性は、食器棚から鍋を出すと、その中に持ってきた藁を組み、そしていくつかのお札を入れ、そして、その中にお守りを入れて火をつけた。
「ぎゃーーーーっ」
鍋の中から、そして洋子の口から、ほぼ同時に断末魔と思われる声が聞こえた。そのまま洋子は眠ってしまった。その時鍋から上がった炎は、心なしか女性の顔のように見えたという。
洋子が二日間寝たままであったことを、昌代さんが何かの責任を感じて、そのまま洋子の部屋を掃除しながら、待っていてくれた。誰のものかわからない避妊具がいくつか洋子のネルベッドの周りから見つかったという。しかし、洋子にはまったく記憶がなく自分がどうなっていたのかも全くわからなかったという。
「なんだか恥ずかしくて」
洋子はさすがに引っ越した。宅急便のお兄ちゃんなども相手にしていたみたいなので、顔を合わせることが気まずかったのだ。しかし、引っ越した場所がよかったのか、最近では、やっと彼氏ができたらしい。でもその詳細を昌代はまだ聞いていない。昌代も、新たな恋を見つけたからであった。
この話は、仮名:洋子さんから聞いたものである。もちろん自分が気を失っている間の話などは、昌代さんのお話を洋子さんが聞いていて、その間をつないでくれているのである。それにしても「淫乱霊」というのはなかなかすごいものだ。人間は死んでしまうと、生前の「やり残した」という欲望だけがそのまま残ってしまい、それが念となって人のとりつくのであるという。今回の「淫乱霊」は、お守りについていたということであるが、そのお守りそのものについた「淫乱霊」に、似たような境遇の女性である洋子さんが取りつかれてしまった、もっと言えば、例が洋子さんの身体を借りて自分の欲望を追求したらこのようになったということなのではないかと考えるのである。
ちなみに、洋子さんに「その時の男性や自分でやっているときの快感はあるのか」という、かなり微妙なことを聞いてみたところ「自分の身体であって自分の感覚ではない感じで、快感がどうも何かが違ったんです。実際に、自分で望んで彼氏としているときは、何もかも忘れて感覚に埋没するのですが、あの時は、どこか自分の意識が他のところにいて、自分の身体で快感を貪っている誰かを冷静に見ている感じでした」というのである。ちなみにその時の記憶はあまり残っていないといっていた。実際にそのような女性とやった男性にも話を聞きたかったが、さすがにそれは私も聞けなかったのである。
あの時昌代さんが来てくれなかったら、恥ずかしい姿のまま死んでいたかもしれない。快感とかエロとかというような話ではなく、洋子さん自身はそのような感想を持っていたのが印象的であった。
しかし、まあ、このようなエロをあまりいやらしくなく、怪談調で書くのは難しいなあ。今週は、この感じの話を一週間続けようと思う。