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「宇田川源流」【お盆特有のエロ】 至極のエロ話(4)幽体離脱で戻ってこられなかった話

2019.08.14 22:00

「宇田川源流」【お盆特有のエロ】 至極のエロ話(4)幽体離脱で戻ってこられなかった話

 お盆特有のエロは、基本的にお化けとエロのコラボをテーマに一週間やっている。実際に、そのような話はたくさん聞いてきているのであるが、ざんねんながら「エロ」としてあやはり幻覚とか幻聴なのではないかということになり、もっと過激な話が好まれるし、またスピリチュアルの世界では、やはりエロを混ぜるのはあまりよい事とはされていない。そもそも、エロは「子供が生まれる」時の原因行為であり、やはり「死後の世界」のイメージは少ない。ある意味で「入口」と「出口」両方を、その真ん中の「現世」抜きで語っているような感じなのである。

そこで本日は「現世」のエロの話を書いてみよう。

 

「昨日、お前コンビニでエロ本立ち読みしてただろ」

 将司(仮名)は、私(康介:仮名)に言った。

「エロ本じゃないよ。普通の週刊誌だろ」

「いや、グラビアのヌード見てただろ」

「なんだ、お前、ヌード見てたのか」

 一緒にいた誠一(仮名)も私のことをはやし立てた。

「それにしても、俺がコンビにいたのは、夜11時半だぞ。お前どこで見てたんだよ」

 そうだ。昨日は、私の家の風呂が壊れていたので、近所の銭湯に行き、その帰りにコンビニに寄ったのだ。確か11時半を回っていたはずだ。それも、週刊誌を読んでいただけであるから、店内にいるか、あるいは上から見下ろすしかない。ましてやグラビアを見ていたとわかるなんて、外からちょっと見ただけでは絶対にわかるはずがないのである。

「いや、まあね」

 将司は、その時はごまかした。ちょうど授業開始のチャイムが鳴ったので、それ以上の話はなかった。

それから数か月後、今度の標的は誠一であった。

「誠一お前、智美と付き合ってんのか」

「ああ、なんで」

 誠一は怪訝な顔で将司を見た。

「俺には透視能力があるんだ。それにしてもキスする場所はあんな坂道じゃなくて、近くの公園とかにすればいいのに」

「何で知ってんだよ」

 誠一は、将司につかみかかった。胸ぐらをつかまれて苦しそうでありながら、将司はへらへら笑いながらされるがままになっている。

「俺には透視能力があるんだよ」

「よし、その透視能力、今度見せてみろ」

「ならば今晩9時ごろ、家に来いよ」

 成り行きで、誠一と私

二人で、その日の晩、将司の家に行くことにした。将司の家には普通の我々大学生の一人暮らしのワンルームのアパートだ。まだ1年である私たちは本当はいけないのに、缶酎ハイやビールを片手に、将司の家に行った。

「お前ら『幽体離脱』って知ってるか」

 将司は偉そうに言った。

「幽体離脱って、身体から魂が抜けだす……」

「そうだ。俺はあの技を習得したんだ」

 近くに、どこかの古本屋で買ったのか、表紙がボロボロになった「幽体離脱のやり方」と背表紙でやっと読み取れる本があった。将司はよほど読み込んだのか、ところどころに、将司の汚い字の付箋紙が貼ってあった。

「よし、やってみよう」

 将司と我々はその本を見ながら、三人で横になり、力を抜いて意識だけ起き上がるようにした。何回かやっているうちに、ふと、自分の上半身が上に持ち上がった気がする。そして、後ろを振り向く自分の目をつぶった顔が見えたのである。

「誠一も、康介も、出来るじゃないか」

 自分は、座っているのに、上の方から将司の声が聞こえたのである。そして、将司の声と思われるところから手のようなモノが伸びてきて、私の右手をつかんだ。そして、引き上げようとしているのだ。しかし、その周辺には、さまざまな声が聞こえた。ざわざわと、さまざまな声だ。なにか、私を誘い出すような声、それも多くの人が私の身体を狙っている悪意を感じた。

「危ない」

 私はそのまま勢いよく体の中に戻ってしまった。

 将司と誠一はかなり熟睡している、いやまるで死んでいるように隣で寝ている。一応息をしているようなので生きていると思うが、まるで植物人間が横にいるかのような感じだ。まさか、意識がない二人を置いてゆくわけにはいかないので、勝ってきたビールを開けて飲んでいるしかなかった。

「ああ、楽しかった」

 いきなり目を覚ました将司と誠一は、目が覚めてすぐにそういった。

「まったく、康介はチキンだからな」

「そうだな」

「でも、なんでお前のキスがわかったか」

「しかし、あんなふうにして見ていたとはな」

 二人は何かスポーツ観戦をして帰ってきたところのように、私がいないかのように話をしていた。

「何を見てきたんだ」

「智美、そして奈央の風呂場を見てきた」

「いや、いいもの見せてもらった」

「しかし、奈央はああ見えてけっこう胸がでかいな」

「そうそう、胸にいやらしいほくろがあるなんて知らなかったよ。」

「夏が楽しみだな」

 二人はにやにやしながら、缶ビールを空けた。

「康介、次はお前も一緒にどうだ」

「いや、いいよ」

 なんだかバカバカしくなって、部屋の外に出た。なんだか幽体離脱で裸を見に行くなんて何となく嫌だった。

 それから誠一と将司は二人でよく将司の部屋に泊まって、幽体離脱を使ったのぞき見をやっていたようだ。しかし、十日後くらいあとだったか、私の部屋に突然警察が訪ねてきた。なんでも将司と誠一が死んだという。それも、将司の部屋で二人並んで心臓マヒを起こしたらしい。

「死因に不審な点はないのですが、あまりにも状況が特異なもので、一応事件性がないか、親しかったあなたに聞こうと思いまして」

 制服を着た警官と私服の警官が来て、そんな話をした。一応幽体離脱の話をしたが、警官はメモも取らなかった。

「あそこに、『幽体離脱のやり方』っていう古い本があったと思うんですけど」

「いや、そんなものはなかった。まあ、いいです。大体わかりました」

 警察官は帰っていった。

後日二人の葬式の時に、奈央も智美も出席した。いつも何かに見られているような視線を感じていたという。そして、奈央にほくろの位置を聞いたところ、赤い顔をして、思い切り平手打ちを喰らった。


幽体離脱を使った「のぞき見」というのは、なかなか面白い話である。その画像を写真で撮れれば、当たらな犯罪ができるようになるのであろうから、ある意味で、幽体離脱がカメラなどを持ってゆけなくてよかったということではないか。私が話を聞いたときには、既に将司も誠一も死んでいる。この友人二人を失った康介から、昔話として聞いたのである。しかし、幽体離脱をして、そのまま長時間戻らないと心臓が止まるのであろうか。あるいは、何か他の要因があるのかさまざまなことが気になる。いずれにせよ、何らかの「肉体的な要因」と、「魂的な要因」があり、その二つが掛け合わさなければわからないということになるのではないか。肉体を失った将司と誠一の魂は、今どこにいるのであろうか。