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明治通りにオープンした「KIDILL ROOM」オープニングイベントに行ってみた

2016.03.31 12:00

デザイナーの末安弘明さんが手がけるブランド『KIDILL』初の路面店 「KIDILL ROOM」が渋谷と原宿の間、宮下公園の目の前の明治通り添いに3月18日にオープンした。

末安弘明さんは原宿で『HONEY’S DEAD』というお店を営業していたが、名前を変えて渋谷に移った。オープニングのレセプションパーティーに参加しようと思っていた矢先に、SILLYから取材をお願いしたい、と頼まれた。


私が末安弘明さん(以下HIROさん)とはじめて会ったのは10年前。

HIROさんが『KIDILL』を立ち上げる前のブランド、『HIRO』コレクション時に、パッチワークの生地を縫製できる人を探しているという話を聞きつけた。

当時、私は服飾専門学校に通う学生で、『HIRO』のクリエイティブが好きだったことや、第一線で活躍しているブランドの現場に参加できることに興味を持って連絡をしたのだ。それがHIROさんとのはじまりで、まさか10年の付き合いになって取材することになるとはーー。

『HIRO』は2004年にロンドンでデビューコレクションを発表後、しばらくイギリスで活動を続けていた。

「HIRO』はイギリスのアンダーグラウンドシーンを匂わせるデザイン性が特徴で、ロンドンのパンクロックやモッズを思わせる服は、ファッションだけでなく音楽好きからも支持を得ていた。

エッジが立ったコレクションのトーンからは意外に思う人もいるかもしれないがデザイナーのHIROさんは穏やかな人だ。だいたい会うといつも決まって優しい笑顔と大きな声で名前を呼んでくれる。

OPENING RECEPTIONは20時からだったが、私が到着したのは21時。お店に着いた時にはもうすでにアルコールの影響か、顔を赤らめたHIROさんがご機嫌な様子で、「お〜まる! あいかわらずまるいなあ!」とニコニコと迎え入れてくれた。

「お店について書いてもいいですか?」とHIROさんに交渉をすると、「自由に取材してってくれよ〜」と軽々とOKをしてくれた。


実はこの場所、先日まで「Aquvii Tokyo」という国内のアクセサリー作家や、新人ブランドを中心に取り扱うショップがあった。現在は代官山のみで営業している「Aquvii」は、私が作っているブランド『TEPPEN』も置かせてもらっていることもあって、この場所のことはよく知っている。

「Aquvii Tokyo」の時も、イベントがあるたびにお店の前に人が集まり、遠くからでも「ああ、何かやってるな」と分かるくらいだったが、この日は「KIDILL ROOM」のOPENを祝うべく、お店の外に溢れるくらいたくさんの人が詰めかけた。



店内は左右の真っ白な壁際にハンガーラックが設置されていた。正面の壁とその前にあるカウンターはシルバーで統一され、内装は思っていたよりもシンプルだった。

右側のハンガーラックにはトップスやボトムス。左側にカットソーや小物がきれいに間を持って陳列されていた。


『HIRO』時代からのファンも多いのか、パンクロックやモッズを思わせるファッションの客層が多かったような気がした。

『KIDILL』は『HIRO』時代のスタイルによく見た、ジャケットにスタッズを打つ、といったパンクロックのスタイルの印象とは打って変わって、モードで落ち着いたデザインになったように思える。装飾もグラフィカルな刺繍に変わり、ロンドンのストリートカルチャーというよりは日本のストリートカルチャーを感じるデザインへと変化を遂げた印象だ。そしてその変化に多くのお客さんが好感を持っているように、皆ワクワクした様子で服を手に取り、手触りを確かめている姿が印象的だった。


店内の奥では今回のレセプションのために、HIROさんとも親交の深いケニックさんによるカレー屋「ケニックカレー」がケータリングを行っていた。

ケニックさんは、プロダクトレーベル『kanvas』のディレクターだが、趣味で作っていたカレーが好評すぎて渋谷にカレー屋をOPEN。行列もできる人気店としてブレイクしている。

私もお店がOPENする前からケニックさんのカレーが好きで、この日も食べられると知って、俄然テンションがあがった。オリジナルで調合したスパイスが絶妙なバランスの本格的なインドカレーが4種、ゴロゴロとした肉厚のタンドリーチキンなどが並んでいた。




店内をうろちょろしたり、タンドリーチキンを食べたり、遊びに来ていた知り合いと話しているうちにあっという間に1時間が過ぎた。

イベント終了間際、たくさんの人に囲まれてはお祝いの言葉をかけられるHIROさんをようやく捕まえて、話を聞かせてもらった。

-HIROさん、OPENおめでとうございます。内装がすごくシンプルで意外でした。今回初の路面店のオープンにはどんな思いがあったんですか?

「スペース自体はそんなに広くないから、圧迫感が出てしまうのが嫌で。あくまで洋服を売るわけだからシンプルにしたくって。必要な物だけを作って、それ以外は置かないようにした。

原宿の時にもコレクションラインを置いていたけど、今までの商品のなかでもお客さんから要望があった商品が結構あって、そういうのもアーカイブラインとしてこのお店だけで販売するようにするよ。あと、スタンダードラインも作っていて、デニムとかの定番商品もここだけで販売する。その3つのラインでやろうかなと思ってる」



−入り口のウィンドウがインスタレーションスペースになっているんですね。今後どういう使い方をしていくんですか?

「シーズンごとにコレクションを展開するタイミングで、年に2回、変えていこうかなと思って。コレクションに合わせて、展示するものも内容を変えて。今回は映像があるけど、次は違う形にするかもしれないしね。コレクションのイメージをここで伝えるような場所にしていく予定」


−今回のテーマは何ですか?

「自分の中の『ノイズ』とか『雑音』みたいなものがテーマでそれを打ち出そう思って。今お店に並んでるコレクションのテーマが『UNNOISINESS』なんだけど、そのテーマに合わせて、ムービーの監督に石井悠介さん。スタイリストに島田辰哉さん。ディレクションはROKKAN DESIGNのロッカンさんで作った。音楽もAlbino Sound 梅谷裕貴さんに作ってもらえた。ウィンドウの花は、edenworksの篠崎さんに頼んで、左側が生きている生花を使っていて、右側が死んでいるようなイメージで枯れ葉とか木の枝とかを使って対比を出すようにしたんだ」

−錚々たるメンバーですね。ネットにもあがっていましたが、今回のSSの映像の印象、すごくHIROさんらしくて格好いいなって思いました。


ーそういえば聞いたことなかったんですけど、『KIDILL』をはじめた理由ってなんだったんですか?

「完全に年齢だな。今俺40歳になるんだけど、20代のときに『HIRO』をはじめたけど、作るものも着るものもだんだん変わっていくなって思って。昔作ってたような服は着なくなっちゃったし、今は素直に自分が着たいなっていう服だけを作るようにしている。自分の内面的なものは、『HIRO』時代より『KIDILL』のほうが素直に出ているかもしれない」

ーHIROさんがお店を持つのは原宿の「HIRO SHOP」、そこから移転した「HONEY’S DEAD」、そして今回の「KIDILL ROOM」で3店舗目になりますが、今回はどんなお店にしていきたいですか?

「ありがたいことに最初にお店を作った頃からお客さんがずっとついてきてくれてて。自分自身ももちろん楽しみたいけれど、一番はお客さんが来て楽しめる場所にしたいなと思う。だからお客さんが来てドキドキできるような服が並べられるようなお店でありたいかな。作りたいものは年々変わってきているけど、お客さんに楽しんでもらいたいっていう気持ちは、実は『HIRO SHOP』の時から変わっていないないんだよね」

そうこうしているうちにまた別のお客さんに話しかけられるHIROさん。「ああ、ごめんよ。こんな感じで大丈夫かな?」とニコニコと次の人のところへ向かう。

長きにわたってお客さんに愛されているブランドを作っているHIROさんは声をかけてくれる1人ひとりに笑顔を向け、せわしなく談笑を続けていた。

今回の取材で、影響を受けた音楽やカルチャーを服に落とし込んでいた『HIRO』から、今の自分の中にある興味を表現していく『KIDILL』へと変わり、新たなコンセプトやデザインが生まれていくことに、私自身とても興味を持った。

新しいHIROさんの一面を、『KIDILL』やフラッグショップの「KIDILL ROOM」を通して知ることになるのかもしれない、と思うと胸が高鳴った。



photographs & texts : 丸山麻美 / Asami Maruyama