ヘルシンキ大学での授業について
伊藤 慶彦
留学先:ヘルシンキ大学(フィンランド)
留学期間:2017年9月~2018年5月
授業の使用言語・バリエーション
留学先がフィンランドということで、「英語で開講される授業を取ってたの?それともフィンランド語?」という質問をよく受けます。私の場合、すべて英語で開講される授業を取りました。他国からの留学生も含め、大半の留学生はフィンランド語がわからず英語での授業を取っています。
しかし残念ながら、英語で開講される授業が充実しているかというと微妙なところです。どうしても、英語での授業が少ないといった問題点はあります。例えば、私が所属していたFaculty of Social Sciencesでは、ヨーロッパの政治や移民問題に関する授業は多いのに、社会福祉に関する授業は少ないといった分野による英語の授業数の偏りもありました。イギリスやアメリカといった公用語が英語である国の大学と比較すると、自分の専門分野に絞って英語の授業を履修することは難しいと個人的に思いました。
また英語で開講される授業のラインナップが、年度によって変わることに注意が必要です。ヘルシンキ大学への交換留学では、留学申込時に前年度のシラバスを基に履修計画を立てます(WebOodi Helsinkiで検索すると、北大のELMSのようにシラバス検索や履修登録ができるサイトを閲覧できます)。私の場合、留学申込時には環境政策の授業を取る予定でしたが、いざ現地に着いて新年度のシラバスを確認するとそれらの授業がなかったという悲劇がありました。
そして北大の履修登録と異なり、履修者の決定は抽選ではなく「早いもの勝ち」です。決められた期間の中で、早く履修登録した人が授業に参加する権利を得ます。したがって、現地に着いたら新年度のシラバスや履修登録開始時期を確認し、計画的かつ柔軟に授業選択をしていくことが大切だと思います。
(WebOodiのページ。なかなか使いづらく、根気が必要)
所属学部・単位互換・授業の進め方など
私はヘルシンキ大学のFaculty of Social Sciencesに所属していました。ちなみに所属学部は、留学申込時の履修計画に基づいてヘルシンキ大学側に勝手に決められました。
所属学部では、北欧の社会制度に関する授業("Nordic Societies and Cultures”)、ヨーロッパの移民問題について学ぶ授業(”Sociology of Migration)、北欧の少数民族サーミなどについて学ぶ(”Minorities of Nordic Region”)といった授業をとりました。しかし当時は、他の文系学部の授業もほぼ自由に履修することができましたので、私は教育学の授業なども積極的に履修しました。
単位数について、私が留学した当時、(おそらく)最低単位数は決められていませんでした。なので、例えば私の場合、1学期(ヘルシンキ大学は4学期制)あたり約20 creditsを履修していました。5 creditsはだいたい週2コマで1学期参加すればもらえる単位数です。なので、週7~8コマくらい入ることになります。
週7~8コマは日本では多くない部類に入ると思います。しかし、留学先ではディスカッションのために英語の難解な論文を毎回15~50ページほど読んできてと指示されたり、グループでの授業時間外の準備があったりとかなりしんどいです。
ちなみに私の場合はこれに加えて、ヘルシンキ大学で開講されている日本語学習の授業に、Language Assistantとして週2コマ入っていました。ここでは、多くのフィンランド人の友人をつくることが出来たので、みなさんぜひ参加してください。
(1学期の時間割)
単位互換については、帰国後に北大文学部の単位互換のルールにもとづいて行われました。先ほど説明した5 creditsの授業は北大文学部では1単位もしくは2単位に互換してもらいました。単位互換について気になる人は、北大の所属学部の窓口に聞いて、事前に単位互換の条件を把握しておくといいと思います。私の場合は単位互換の必要性があまりなかったので、たまたま条件を満たしていた授業を互換してもらい、合計10単位ほど獲得しました。
履修授業の紹介
私がヘルシンキ大学で履修したユニークな授業の一例を紹介します。まずは“Ethnography”という授業です。ゼミ形式で行われたこの授業では、グループでのフィールドワークがあり、その結果をまとめてプレゼンしました。私はヘルシンキ大学の現地の学生と2人ペアになり、「ヌークシオ国立公園でキノコ狩りしている人を観察する」という面白いテーマでフィールドワークをしました(笑)。他のグループよりもユニークな内容で、頑張って準備したプレゼン発表では周りの反応が良く、なかなかいい経験ができたのではと思います。
(ヌークシオ国立公園へのフィールドワーク。現地の人々の公園利用も観察。)
教育学部では”Introduction of Finnish educational system”という授業が興味深かったです。この授業では現地の小・中学校訪問があり、その時の経験を踏まえて「あなたがある国の教育担当の大臣になったら、どんな教育制度をつくりますか。その理想を書いてください」という課題でレポートを書きました。学校訪問では教育先進国と言われるフィンランドのユニークな教育現場を見ることができました。特に電子黒板等をフルに活用し、生徒が楽しみながら学べる工夫が満載だった英語の授業については、その質の高さに圧倒されました。レポート作成では、グループが一緒だった台湾出身の留学生と教育制度の理想について何度もディスカッションし、その過程をレポートに反映することができました。
(フィンランドの小学校の給食はビュッフェ形式でした。うらやましい。)
フィンランド語学習について
ヘルシンキ大学では、留学生向けに英語でフィンランド語を学ぶ授業も開講されています。初学者向けの授業は他国からの留学生が沢山来ていたり、会話練習など他の履修者と話す機会が多いなど、敷居が低く十分に楽しめました。フィンランド語学習にあまり興味のない方も、ぜひ一度は履修してみてください。フィンランド語を少しでも理解するだけでも、買い物や交通機関の利用など様々な生活のシーンで役立つと思います。
また留学中、初学者向けの講座だけでは満足いかない人は、並行して別の授業も履修するなどフィンランド語学習に打ち込むのもオススメです。留学生の中でフィンランド語を本気で学ぶ人は多くないため、現地の人は喜んでフィンランド語学習をサポートしてくれます。フィンランド語がわからないと、書店の本も読めないし、テレビや映画も何言っているのかさっぱりといったように、どうしても現地のカルチャーを楽しむのに制限がかかってしまいます。現に私はフィンランド語学習をもっと力を入れればよかったと後悔しています(笑)。時間の許す限りフィンランド語を学習して、少しでもフィンランド生活を楽しむ幅を広げてみてはいかがでしょうか。
(現地で使用したフィンランド語の教科書)