版画と装身具
私は絵を見るのが好きです。
自分なりに、
満足ゆくまで描くのも好きです。
好きな画家も沢山います。
自然はそれ自体で素晴らしいのですが···
近所の柳の林を見れば、
「わぁ、モリスみたいだなぁ」とか、
実家の裏の田んぼの向こうにある古い水門を見れば、
「牛島憲之の絵だなぁ···」とか、
自然を見て誰かの絵を思い出すのも好きです。
(牛島憲之の作品は、群馬県立近代美術館の常設コーナーにあります。「五月の水門」というタイトルです。ただし、作品の入れ替えで、展示していない時があるかもしれません。)
とにかく絵が好きなので、
絵の描いてある装身具を作っています。
絵のある装身具のきっかけとなったのは···
かなり昔のある日、
アンティークのポーセリンブローチを目にする機会がありました。
それは、小さな磁器のメダルに、
女性が描かれたもので、
私は、
「なんと!絵がブローチになっている···!」
と驚いたわけです。
絵が身につけられるなんて素晴らしい!
小さな画面に繊細なタッチで人物が描かれているのも素晴らしい!
アンティークジュエリーを扱う方にうかがったところ、
かつてのヨーロッパでは、モーニングジュエリーとしても、多く存在していたとか。
それ以来、しばらく陶板画にはまり、
当時はKPM の陶板画の本を見たりして、
すっかり磁器絵付けを習う気になっていました。
名古屋に住んでいたら、
ノリタケに飛び込んでいたと思いますが、
結局、近隣に教室がなく、
行かず仕舞いに終わりましたけど。
生まれ変わったら磁器絵付け師になりたいですね···
話が逸れましたが、
今の私の作品は、
アンティークのポーセリンブローチを見たのがきっかけです。
エッチングで装身具を制作するのは、
エッチングが自分の表現に合っているからです。
装身具に、敢えて版画を添えているのは、
金属上で見る絵と、紙に刷った絵とでは、
見え方が違い、
版画は版画で美しいものだからです。
版画だけの目的で作る版に比べると、
(深い腐蝕が必要なので)トーンの繊細さに欠けるところはありますが、
きれいに見える、きれいに刷れるような工夫を実に様々に行っているのですよ。