姉のいた夏、いない夏
60年代の反社会革命運動に魅せられ、活動のためヨーロッパに行って挫折し自殺してしまった姉。そしてその「死の謎」を解く妹の「自分探しの旅」というお話。
原題は「インヴィジブル・サーカス」。よくわからない邦題の意味は、おそらく名義上の主役である「姉のほう」を主体にしたかったのでしょうね。
姉はキャメロン・ディアスという有名な方ですね。一応映画上「主役」みたいに扱われてるけども、これはどう見ても妹の「ジョーダナ・ブリュースター(Jordana Brewster)さんが主役」です。実際、人としても魅力的です。
この映画の評を見ると、やはり原体験がある人、つまり60年代安保みたいな学生運動の盛り上がりを知ってる人と知らない人では、受ける印象が全く違うようです。それは映画上で「そこの説明が足りてない」からですね。
姉が、亡き父の思想や生き方、欧州の反戦運動盛り上がりについて「そこまで惹かれた理由」が、当時を知らない人だと「ピンとこない」んだろうと思います。そこは当時を知ってるか、もしくは事前にパンフなどで知識として知っておく、というのが必要かもしれません。例えば「オウム」みたいなものだよ、と。姉が入信したあと壊れてしまった、その謎を解きたい妹の旅、という風に考えると判りやすいです。
私は知ってる世代なので、そこは「ああ、こういう人いるのよねえ」みたいに共感できます。他にも、例えばヨーロッパでジプシーみたいな女性に「何かを」貰うのだけど、それがドラッグだと理解するにも「そういう前提」の知識が必要です。過激派やそのリーダーとの出会いなども、例えば「赤軍派の事件」を知ってることが前提になるでしょうね。
という感じで、(題材のわりには)とっても判りやすいライトな映画だけど「ライトにするために省略した部分」がたくさんあり、そういう意味では全体が「イメージビデオ」みたいですね。なので、ボーッと見てるぶんには楽だし、映像も音楽も美しいので、気持ちのいい映画ではあります。音楽は「ドリームアカデミー」の人です。全体にずーっと流れているので、それがうるさいと思う人もいるかもですが、音楽そのものは、とてもよいと思います。
姉の元カレと妹の件は賛否あるようですが、私は「あー。あるある!」と すごく 共感できました。10代女子のこういう不安定な気持ちの流れは、すっごくよくわかります。吹奏楽なんかやってると、女子はこんな感じの人ばかりですw なので、ここは「そういうものなんだよ」としか言えません。
そういう意味では「青春映画」でもあるのです。ジョーダナ・ブリュースターさんが成長していく青春映画(原田知世さんの「時をかける少女」と同じ系列の)。そのように観るのが正解なのかも知れません。
PS
妹が子供のうちに姉が居なくなってしまうので、実はキャメロン・ディアスとジョーダナ・ブリュースターさんが同時に映ってるのは、このシークエンスくらいしかありません。「そっか。妹の成長を姉は見られないのよね…」と思うと、そこだけちょっとリアリティを感じます。