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九条 顕彰・台本置き場

【a long time ago...】

2019.08.27 06:50



※必ず規約を読んでから台本をご使用ください。分からないことがございましたら、TwitterのDMまでご連絡お願い致します。


こちらは声劇台本となっております。

コピーなどでの無断転載、自作発言、二次創作はおやめ下さい。

ネットでの生放送(ツイキャス等)のご使用に関しては自由です。

※YouTube等での音声投稿や有償での発表(舞台での使用等)に関しては作者の方に相談してください。

使用報告なしで構いませんが、なにか一言あるととても励みになります。飛んで喜びます。

物語の内容にそっていれば、セリフアレンジ・アドリブは自由です。

大幅なセリフ改変・余計なアドリブを多く入れることはおやめ下さい。





ジャンル:復讐劇・シリアス




───「お前には、殺したいほど憎い相手がいるか…?」




〜あらすじ〜

1920年代、禁酒法時代と呼ばれ、法は力を持たず、街はマフィアに支配されていた頃のアメリカ。無法地帯の時代に生まれた若者、マルコムは、とある目的のため、マフィアのコルテーオファミリーの元へ訪れる。そこでドン・コルテーオに気に入られ、ファミリーの一員となる…果たして、彼の目的とは…



比率:♂2:♀0


演者:2人


上演時間:約30分



登場人物

ジョナサン・マルコム 25歳 男

(本名:ショーン・リロイ・ギブス)


ドン・コルテーオ 56歳 男

(本名:サルヴァトーレ・コルテーオ)

※コルテーオは劇中に登場する部下を兼ね役でお願いします



役表

マルコム:

コルテーオ:






〇セリフ〇






───舞台は1920年代、禁酒法時代のアメリカ。とある病院の病室、病で伏せっている男に寄り添うようにして立っている男が1人…しばらく沈黙が続いたが、ベッドに寝ている男がおもむろに口を開く…










コルテーオ:なぁ、マルコム…お前には、殺したいほど憎い相手がいるか…?


マルコム:…は?



マルコム(M):何を言ってるんだ、この人は…



コルテーオ:…私には、いる…殺したくて殺したくて仕方の無い相手が…



マルコム(M):…そんなの、俺だって…



コルテーオ:見ての通り、私の寿命も、もってあと数ヶ月だ…今なら、そいつを殺して、私も共に地獄に落ちるのも悪くは無いな、と、思う


マルコム:そんな…ご冗談を


コルテーオ:冗談なんかじゃねぇ


マルコム:っ!


コルテーオ:…もう一度聞くぞ、ジョナサン・マルコム…お前には、殺したいほど憎い相手がいるか…?



マルコム(M):…アンタには分からないだろうな、ドン・サルヴァトーレ・コルテーオ…俺が1番殺したいやつは…



マルコム:ええ、いますよ……俺の目の前に



マルコム(M):そう、アンタだよ…










───マルコム、コルテーオに銃を向ける…1発の銃声が響く……

時を遡り数ヶ月前、マフィアのコルテーオ一家の蒸留所前、1人の若者が見ている










マルコム(M):12年前の惨劇(さんげき)、あれが全ての始まりだった…両親を俺から奪った、マフィアのボス、サルヴァトーレ・コルテーオ…こいつを俺の手であの世に送る…その復讐心だけが、俺の生きる意味だった



マルコム:ここがあの、コルテーオ一家(ファミリー)の…


コルテーオ:おう、お前、見かけねぇ顔だが、うちの島になんか用か?


マルコム:…!いや、あの…


コルテーオ:…失礼、まずは名乗るべきだったな、私はここのボス、サルヴァトーレ・コルテーオだ…最近ウチの島を荒らす輩がいると聞いたもんでな…まあ、ボス自ら出向いて見張ってるわけなんだが…お前、どこぞのマフィアのもんか?


マルコム:ち、違います…俺はその…ただの郵便配達員です


コルテーオ:ほほう…ただの郵便配達員にしては、2時間くらいずっとここをうろついていたようだが?


マルコム:うっ…その…



マルコム(M):失敗した…まさかこんな所で見つかっちまうとはな…しかし、「仇」自らノコノコ出てくるとは…これはもう…ここで殺るしか…



コルテーオ:…そうか、お前…まさか…


マルコム:っ…!



マルコム(M):バレたか…?いや、もうあれから何十年も経ってるんだ…俺の顔なんか覚えてるはず…



コルテーオ:うちの商売に興味があるのか?


マルコム:…は?


コルテーオ:こんなにまじまじと熱く見つめてるんだ、そうなんだろ?な?な?!


マルコム:え、あ、いや…(汗)


コルテーオ:うちも今、人手が足りなくて猫の手も借りてぇくらいなんだ!どうだ?お前、うちに入らねぇか?


マルコム:!!…コルテーオ…ファミリーに…?


コルテーオ:おうともさ、歓迎するぜ?特に、若いやつはな


マルコム:…ちょうど、今の仕事が割に合わないなと思っていたんですよ…まさか、本当に声をかけていただけるなんて思ってませんでした


コルテーオ:…じゃ、交渉成立、だな?


マルコム:はい、よろしくお願いします、コルテーオさん…俺はジョナサン・マルコムと言います



マルコム(M):この出会いは偶然か必然か…俺は両親の仇であるコルテーオファミリーの下で働くことになった…そう、全ては、12年前の復讐のため…サルヴァトーレ・コルテーオを、殺すため…









───それから日は経ち…









コルテーオ:おい、マルコム、「ブツ」の出来はどうだ?


マルコム:上々…と言いたいところですが、品質的にはやはり、ルチアーノのとこよりは劣るかと…


コルテーオ:そうか…全く目障りなやつだぜ…それよりマルコム、今日もアレ、頼まれてくれるか?


マルコム:…あぁ、いつもの「お届け」ですね…場所はどこです?


コルテーオ:2ブロック先の例のボロアパートだ、「届けもん」はそこですやすや眠ってる


マルコム:了解しました



マルコム:「届けもの」…これはいわゆる、人を殺せという意味だ…俺は短期間でサルヴァトーレの信頼を勝ち取り、今では奴にとって邪魔な存在を始末する仕事、裏取引、薬の売買など、大きな仕事は全て俺に任せられている…俺がサルヴァトーレにとって、1番の敵だということも知らずに…




コルテーオ:ふぅ…それにしても、この頃景気がすこぶる悪くて嫌になる…そろそろ新しい商売でも始めるか…ゲホゲホ…


マルコム:…ボス、余計なお世話かもしれませんが、葉巻、やめた方がいいんじゃないですか?最近やけに咳がひどいと、部下の間で噂になってますよ


コルテーオ:本当に余計なお世話だ…好きなもんをそう簡単にやめられるわけねぇだろ


マルコム:まあ、そうですけど…


コルテーオ:これは俺の唯一の癒しなんだよ、ほら、お前も一本吸ってみろ!人生変わるぞ?がははは!!


マルコム:…前にも言いましたが、俺は煙は苦手なんです


コルテーオ:ああ、そう言えばそうだったな…しかし、お前は相変わらずクールだねぇ…いつからそんなつまらん男になったんだ?


マルコム:元からです


コルテーオ:そうか、そりゃすまん


マルコム:…「届けもの」に行ってきます


コルテーオ:ああ、待てマルコム


マルコム:?









───コルテーオ、マルコムに葉巻を1本投げ渡す









マルコム:…だから、吸わないって


コルテーオ:そうじゃない、お守りだ、とっとけ


マルコム:お守り?


コルテーオ:ああ、どこにいても、私がそばにいる、ってな(笑)


マルコム:…気持ち悪い


コルテーオ:なっ…ボスの優しさを無下にするとは…辛辣な部下だ(泣)


マルコム:…まあ、有難く頂いておきます


コルテーオ:おう!そうしとけ!




マルコム(M):…俺がこれを嫌いな理由は、他にもあるけどな…









───銃声が響く、目の前には見知らぬ男の死体…マルコムが「届けもの」の仕事を終える









マルコム:…はぁ…


マルコム(M):俺はいつまで、あいつの下で働くんだ…別に、今やつを殺してもいいはずじゃないか…殺して、逃げりゃいいだけなのに…なのに、なんで…




─回想─

コルテーオ:よく来てくれたマルコム!お前は今日から、私の息子も同然!困った時はなんでも私に頼ってくれていいぞ!がははは!!

───





マルコム:…ふっ…毒されたか…あんな奴に…





 




───マルコム、胸ポケットに入っている葉巻を取り出す


 







マルコム:…






─回想─

コルテーオ:この葉巻はな、でかい仕事が上手くいった後に吸うって決めてんだ、どうだ?お前も吸うか?って、煙は嫌いだったんだな、すまんすまん

──






マルコム:ああ、嫌いだよ、大嫌いだよ…この葉巻も…お前もな…サルヴァトーレ…










──その時、サルヴァトーレの部下が入ってくる









部下:マルコムさん!大変だ!!


マルコム:騒がしいぞ…どうした?


部下:ボスが…サルヴァトーレさんが、倒れちまった!!


マルコム:…なに?


部下:今病院に搬送中で…って、マルコムさん!?どこ行くんです!?


マルコム:病院に決まってんだろ!何グズグズしてる!行くぞ!!


部下:は、はい!



マルコム(M):あの野郎…俺が殺る前に死ぬとか…許さねぇからな…!









──マルコム、サルヴァトーレが搬送された病院へ…サルヴァトーレの病室へ勢いよく入るマルコム








マルコム:っ…!


コルテーオ:…おう、マルコム、どうした、そんな湿気たツラして


マルコム:…さっき部下の知らせで…あんたが倒れたって…


コルテーオ:そうか…はは、情けねぇなぁ…


マルコム:…何が、あったんですか…?


コルテーオ:…肺ガン、だとよォ…もう身体中に転移して、治る見込みがないそうだ…医者が言うには、もってあと数ヶ月らしい


マルコム:…そんな…


コルテーオ:夢ならよかったんだがな、ははは!


マルコム:…なんで、そんな笑ってられんですか…


コルテーオ:…悪い、今日はもう1人にしてくれ


マルコム:…わかりました…護衛を外につけときます……じゃあ、おやすみなさい、ボス









──マルコム、退場








コルテーオ:…長年やってきたことの報い、ってやつか…それとも、過去の過ちに対するツケを払えってか…はん、とうとう私も、神に懺悔する日が来ちまうとはな…ほんと、笑えないねぇ…









──一方、マルコム、自室にて









マルコム:……


マルコム(M):このまま待ってれば、あいつは病気で勝手に死ぬ…俺の願いは叶う、それでいいじゃねぇか……けど、俺は今まで、アイツを殺すためだけに…あいつに復讐するためだけに生きてきた…殺るなら今しかねぇ……でも、そのあとは…?アイツを殺して、そのあとはどうする…?俺は、どうなる…?


マルコム:…別に、どうもしねぇさ…そうだ…アイツを殺して…両親のかたきを討つ…ただそれだけだ…病気なんかで死なれてたまるか…俺のこの手で殺してやる…俺の手で殺さなきゃ、意味ねぇんだ…









──サルヴァトーレの病室、マルコム、銃を隠し持って入ってくる









コルテーオ:…よぉ、マルコム、なんだ、今日はお前が護衛係か?


マルコム:…まあ、そんなとこです



マルコム(M):機は熟した



コルテーオ:ほー、上役のお前がわざわざ来るなんざ、うちのファミリーも落ちぶれたな


マルコム:そんな…たまたま俺が空いてただけですよ、まだアンタのファミリーは落ちぶれちゃいません、それに…


コルテーオ:それに?なんだ?


マルコム:…いえ、なんでもありません 



マルコム(M):サルヴァトーレ・コルテーオ…今ここであんたを、殺す…









──マルコム、隠し持っている銃に手をかける、その時




 





コルテーオ:なぁ、マルコム…お前には、殺したいほど憎い相手がいるか…?


マルコム:…は?



マルコム(M):何を言ってるんだ、この人は…



コルテーオ:…私にはいる…殺したくて殺したくて仕方無いほど、憎い相手が…


マルコム:ボス…?


コルテーオ:見ての通り、私の寿命も、もってあと数ヶ月だ…今ならそいつを殺して共に地獄に落ちるのも悪くは無いな、と、思う


マルコム:そんな…ご冗談を…


コルテーオ:冗談なんかじゃねぇ


マルコム:っ!


コルテーオ:…もう一度聞くぞ、ジョナサン・マルコム…お前には、殺したいほど憎い相手がいるか…?



マルコム(M):…アンタにはきっと、一生分からないだろうな、ドン・サルヴァトーレ・コルテーオ…



マルコム:ええ、いますよ……俺の目の前に










──マルコム、サルヴァトーレに銃を向ける









コルテーオ:…!


マルコム:そう、アンタだよ…驚いたか?そりゃそうだろうな…1番信頼してそばに置いていた忠実が部下が、お前のことをずっと殺したいと思ってたなんてな…飛んだ笑い話だぜ、灯台もと暗しってこういうことだな?


コルテーオ:…お前は、ずっと俺の事を…


マルコム:あぁ、そうさ…あの日あんたに声をかけられる前からずっと、あんたを殺したいと…あんたに復讐することだけを考えて生きてきた


コルテーオ:…何故だ…?


マルコム:…覚えてないのか?12年前のこと


コルテーオ:12年前…?


マルコム:あぁ、人殺しすぎてどれか分からねえってか?…ギブス家、って言えば思い出すか?


コルテーオ:ギブス…?…まさか…


マルコム:ようやく思い出したか?


コルテーオ:…ジョナサン・ギブス…12年前に、私が殺した部下だ…


マルコム:…そうだ…俺の本名はショーン・リロイ・ギブス、12年前、お前に殺されたジョナサン・ギブスの息子だ


コルテーオ:…まさか、こんなにでかくなってたとはな…あの頃はひょろひょろのクソガキだったのに


マルコム:…あの日、お前に両親を殺され、挙句俺は…お前に暴行された…俺たち家族は病院に運ばれて…俺だけが助かった…忘れたとは言わせねぇぞ


コルテーオ:…忘れられるわけがねぇ…あの日のことは、今でもしっかり覚えてるさ…そうか…お前が…本当に、でかくなったな


マルコム:…親父がアンタの下で働いてるのは知ってた…けど、なんでだ…なんで殺されなきゃいけなかった?


コルテーオ:…お前の親父はな、二重スパイだったんだよ…うちの島のことを警察にリークしてやがった…しかも、金をもらってな…それで、やむなく殺した…まあ、今のお前には言い訳にしか聞こえないかもしれんがな


マルコム:…そうだな


コルテーオ:それで、どうするつもりだ?


マルコム:…アンタを今ここで殺す


コルテーオ:…そうか…


マルコム:やけに素直だな…もっと暴れるかと思ってた


コルテーオ:生憎、私はそんなことで暴れるほど小さい男じゃないんでね…それにいつかは来るだろうと思っていた…お前じゃなくても、お前のようなやつが私の前に現れるだろうと…謝っても謝りきれない過ちを…俺は何度も犯したからな…こうなる覚悟はとっくに出来ていたさ


マルコム:…


コルテーオ:…どうした、ほら早く撃てよ…まさか、引き金の引き方を忘れたか?仕方の無いバカ息子だ…前にも教えただろう、いいか、相手にしっかり向けて、人差し指に力を入れるんだ…分かってるな?


マルコム:知ってるよ…


コルテーオ:…怖いか?


マルコム:!?


コルテーオ:私を殺して、そのあとの事を考えているんだろう?


マルコム:…


コルテーオ:図星か…


マルコム:っ…別に、どうでもいい…!お前を殺して、俺は逃げるだけだ!


コルテーオ:そうか、ならさっさと殺せ


マルコム:…


コルテーオ:本当に、仕方の無い阿呆だな


 







──銃声が響く、コルテーオがかくしもっていた銃を発砲、病院内がざわめき出す











マルコム:!?


コルテーオ:さぁ、これでもうあとには引けねぇぞ…10分もすれば警察が来るだろう…殺るならさっさと殺れ、バカ息子


マルコム:…さよならだ、クソ親父


コルテーオ:あぁ、達者でな…地獄で待ってるぜ








───マルコム、コルテーオを射殺








マルコム:…っ……は、はは…ははははははははは!!殺した!殺したんだ!!俺の手で!!あはは!!父さん、母さん、ついにやったよ!俺は復讐を果たしたんだ!!……なのに…なんでだよ……なんでこんなに苦しいんだよ…なんでこんなに虚しいんだよ……なんで、こいつは笑ってんだよ…笑うなよ、そんな幸せそうな顔で死んでんじゃねえよ…そんな顔こっちに向けてくんじゃねぇよっ…ちくしょう……ちくしょう!!!……あ…









───マルコム、胸ポケットの葉巻に気づく









マルコム:…アイツの、葉巻…




──回想──

コルテーオ:そいつはお守りだ!大事にしまっとけ!いつでも私が見守ってるからな

──回想終わり──





マルコム:…









───マルコム、葉巻の先を食いちぎり、その反対側の葉巻の先に火をつけ吸う







マルコム:…っ…ゲホッゲホッ……はあ…やっぱり、これは好きになれねぇや……煙が目にしみやがるぜ… (←だんだん泣き演技)


マルコム:……あんたを殺して、このまま逃げようと思ったけど、やっぱりやめた…俺も今じゃ、アンタのマフィアの一員…アンタの息子だ…責任は、最後までとるぜ…じゃあな、クソ親父……地獄で会おうぜ…









───もう1発の銃声、誰かの倒れる音…病室には、二つの死体がならんだ…









コルテーオ(M):…人を憎んで、恨んで、復讐したとしても、あとに残るのは限りない後悔と、空っぽの心だけ…人は感情のある生き物だからこそ、誰かを恨んだり憎んだり妬んだりしてしまう…その先には何も無いとも知らずに…だから、人は残酷でいて、美しい生き物なんだろう……さて、最期にもう一度だけ聞こうか…「お前には、殺したいほど憎い相手がいるか…?」












─終わり─