ONE

帯状疱疹×脉診流経絡治療

2019.08.28 12:42
症例

☑患者 40代男性。

☑現病歴 数日前から背中、脇腹、お腹がピリピリと痛い。

肌着が擦れたりして皮膚に触れたり当たると痛い。

帯状疱疹とのことであるが、未だ水疱が出ていない。

教科書的には片側性に出現するはずだが、左右差なく全体が痛いのこと。

触って確認しても左右差がわからない。


☑脉状診 浮、数、虚。

☑比較脉診 肝腎虚、肺脾実、心平。

☑経絡腹診 肝腎虚、肺脾実、心平。

☑証決定 脉証、腹証、および総合的に判断して肝虚証とした。

☑適応側 先ず、帯状疱疹の鑑別も兼ね、患部をまんべんなく瀉的に散鍼。

ステンレスの1番鍼の鍼尖が指から出るか出ないかぐらいで母指と示指でつまんでパッパッパッと散鍼しては反対側の手でなでるを繰り返すこと時間にして20~30秒。

施鍼後、もう一度患部を触って痛みを確認すると、左側の方が痛みが強くなった。

これを受けて、左側を病側とし、反対の右側を未だ生気が残存していると診て、適応側を右とした。

☑本治法 銀1寸3分1番鍼にて右曲泉、右陰谷を補い、右関上浮かして胃の脉位に現れた虚性の邪を、病側の左胃経を切経して最も邪が客している豊隆から、塵に応ずる補中の瀉法。

☑標治法 病側の左背部~脇腹→右背部~脇腹の順に瀉的散鍼。

最も痛みが著明な箇所に左右とも知熱灸3壮ずつ。

☑止め鍼×セーブ鍼 中脘穴→非適応側の天枢→適応側の天枢→下腹部正中にの最も虚した箇所に火曳きの鍼→百会左斜め2~3㍉後ろの陥凹部に補鍼。

☑経過 緩解。

本症例の病因病理

肝虚証ということは、先ず血虚があります。

血が不足すると気を発散することができません。

そうして帯状疱疹を発症したのです。


足厥陰肝経は全身の血を収斂し蔵血します。

この血を発生源として、肝臓は発散します。

この肝気によって、気血津液は全身くまなく張り巡らされます。

疏泄、発散、条達です。


血虚があると、十分に発生することができず、気血津液が停滞します。

特に太陰経で滞ります。

手の太陰は肺経、足の太陰は脾経です。


肝に相剋する、肺脾太陰経の気滞によって、肌皮から発散されずに停滞し発症したのが本症例の帯状疱疹です。

まだまだ暑さが残るとはいえ、暦では、立秋~処暑を過ぎ、季節は秋です。

秋の気は収斂です。

ドンドン発散を制限して冬支度に向かいます。

そこへ来て疲労、ストレスなどから気滞があると、より発散できずに発熱や皮膚疾患、喘息を患いやすくなります。

また、夏場に適度に発散して陽気を養えていなくても発病しやすくなります。

四時にみあった生活、温暖な季節は発散して陽気を養い、寒涼の季節は収斂して陰気を養うことが大切です。

また、内傷なければ外邪入らずですから、労倦や七情の乱れを律することも、未だ病まざるを治すということになります。