指の優先順位
ピアノを弾くための指の優先順位ってあまり耳慣れしないと思います。
ピアノを弾く指には番号が付けられています。これはどんな教本にも出てきますが一応説明します。
親指は1、人指し指は2、中指は3、薬指は4、小指は5です。左右同じです。
初歩のピアノ教本には、ほとんどの楽譜にこの指番号が書かれているはずです。
さて一番大事な指は何指だと思いますか?
小指。一番小さくて弱い指だから。指手の小指は音楽の主役であるメロディーを弾くことが多い。左手の小指はバスの音を弾くことが多い。
人差し指。指の中で一番よく使う器用な指だから。
中指。人差し指のように太くてよく使う比較的器用な指だから。
薬指。一番動かしにくい指なので鍛えて独立させる必要がある。
親指。大きくて不器用。大きな音が出やすいのであまり鍛える必要はない。
色々意見はあると思いますが多分、似たように考える事が多いのではないでしょうか。
では解剖学的にもピアノを弾くうえでも一番重要な指を言います。
それは親指です。
親指は人間のすべての骨や筋肉の中でもビップ待遇となっています。指そのものに筋肉がついているのは親指だけです。また腕から親指だけにつながる筋肉が伸びています。
指の中で唯一、独立して動かせる指なのです。
またほかの4指と対立しているので物をつかむことができます。難しい言葉で把持するといいますが、これが人間が発達してきた大きな要因の一つなのです。
関節も特別な関節がありあらゆる方向に動かすことができます。
2番目に鍛えておきたいのは人指し指です。
物をつかむとき親指と人指し指でつかむことが一番多いのではないでしょうか。
親指と人指し指の感覚が高まると脳が利き腕として認識するようです。
左手もこの二つの指を中心にどんどん使うと両利きになれる確率が高くなります。
次は迷うところですが小指。
親指以外の4指は、前腕から指を動かす筋肉が伸びています。4本は筋肉と神経でつながっているのです。このため指を動かすと他の指もつられて動いてしまうことがあります。
ところが人指し指と小指にはさらに独立して動かす筋肉があります。
このため人指し指と小指は、中指や薬指よりも独立性が高いのです。
4番目は中指。中指は、指の中で一番長くふと目でしっかりしています。実は親指についている筋肉はこの中指のところにまたがってついています。
トリルなどを弾くとき1と2や1と3が多くしっかり弾けるのはこのためだと思われます。
最後が薬指です。一番弱く動かしにくい指です。
他の指のように独立した筋肉がないためです。3と4が動かしにくいのは筋肉と神経が繋がっているためです。どちらかを動かそうとするとつられて動いてしまいます。
よくあるのは指を独立させるためつられないでその指だけ独立して動かそうという訓練です。私も指の独立、独立とさんざん考えて努力してきました。
ところが解剖学を勉強してみるとこの考え方はあまり意味のないものであることが分かりました。
筋肉も神経もつながっているのだからある程度つられて動いても仕方がないのです。ファの音を薬指で弾こうとしているのに中指もつられて動いてミも一緒に弾いてしまった、では問題がありますが。
1と2あるいは1と2と3がしっかりしてくると手首の回転(ローテーション、手首で円を描くように回すことではありません。)ができるようになってきます。この手首の回転運動は非常に重要でこれができると色々なピアノのテクニックの曲が弾けるようになります。
それほどこの手首の回転運動が含まれる、または応用される技術が多いのです。
手全体でトレモロを弾くときは小指側の尺骨を軸として手首を回転させます。しかし親指側の橈骨の感覚がしっかりしていないと上手く手首を回すことが出来ません。
左手もトレモロが得意でない人は多いと思いますが、これが主な原因です。
左手も親指は音楽のわき役である内声にあるのでピアノの先生からその音はわき役だからもっと小さく、主役のメロディーをもっと出して。と言われることが多いので親指を鍛える機会が減ってしまうのです。
親指を鍛える=強い音をだす、ことではないのです。器用になる、繊細なコントロールができる、速く動かすことが出来る。ということです。
またメロディーやバスだけでなく内声がしっかり出ていた方(Pでも深い音)が音楽が深くなります。
初心者のうちは特にピアノの鍵盤を深く押すことは難しいので恐れず親指を使いましょう。
使いやすい指を中心に鍛えると手の形もしっかりしてきます。使いにくい指はそれができてから練習していけばよいのです。(とは言っても課題曲は最初から1~5の指をまんべんなく使うよう書かれているのが難点です。)