ロシア・Vladivostok 人形劇と子どもたち
ウラジオストクの旅で特筆しておきたいのが人形劇について。
ウラジオストクには人形劇場がある。
ロシアはバレエとかサーカスとか芸術レベルが高いのはおなじみだけど、人形劇がいいらしい。
というのを旅のバディが教えてくれたので、土曜の朝、人形劇を見に行く。
到着したのが上演開始より結構早かったので、小さい劇場の中にある小さい売店を覗いてみる。
かわいすぎだろ!!ゆるすぎだろ、人形たち!!!
どこの馬の骨ともつかない不思議なオリジナリティと、ん?どっかで見たことあるぞ?という仄かなオマージュ臭をまとった完成度の低い人形たちが、楽しめの監獄みたいなショーケースの中から手を振ってくる。
どいつもこいつも連れて帰りたい。
売り子のおばさんも強烈なビジュアルで、どうしても目に焼き付けたくて決死の思いで盗撮。
吊り下げられた謎のお人形さんたちと蝋人形みたいな売店のおばさん。
周りに転がってるおもちゃたちもよく見ると面白い。
シュール飛び越えてシャープでブラックなロシアのおもしろさ。
大量のゆるふわパペットランドから日本に連れ帰られるべく選び抜かれたしろくまくん。
首元のスカーフが薄っぺらくてばつぐんに愛おしい。
小さな売店で夢中になりすぎて気づけばお客さんが続々会場に入り始める。
小学校に上がらないくらいのちびっこたちが、両親やおじいさん、おばあさんに手を引かれてたくさん入ってくる。
どの子も休日のお出かけとあってか着飾っていて、それを周りの大人たちがかわいくてたまらないといった様子で写真を撮ったり手を引いたりしながら会場に入っていく。
開演前の劇場。
手前のパツキンイケイケ母ちゃんが小型のリカちゃん人形みたいなかわいいお子様を連れている。お姫さまが大人になると魔女になるロシア女子の生態。
客席が満席に近いくらい埋まったところで開演。
動画を撮ってる人もいたけど、ここは生の人形劇に敬意を表して観ることに集中。
写真がなくてごめんなさい。
もちろんだけどロシア語だから何を言ってるのかわからないけど、要所要所で子供たちは狙った通りのリアクションで盛り上がり、大きな拍手とともに劇は終わった。
売店のぬいぐるみ集団に負けず劣らずのゆるい人形たちが主役で、なんなら演者さんの手首とか見えてたけど、子供の目線からはきっと人形が生きているみたいにしか見えないんだろうと大人の腕は見なかったことにする。
劇が終わってからも子供たちの興奮は冷めやらず、ロビーに展示してある人形たちに吸い寄せられていく。
遠目に見てもだいぶ怖ろしい面構えのリアル人形さんたちなのに、このかわいこちゃんはこうやってずーっと張り付いて見入っている。
劇場の外は軍艦で訓練する海軍の人たちとか巨大で厳めしい銅像がどやどや立っていてなかなかパンチの効いた風景で、こんな小さな劇場でも入る時は手荷物検査があったりで、やっぱりロシア、と思わされる景色。
だけどこの人形劇場では子供たちのキラキラした表情とかわいい笑い声が支配していて、こんなに子供が子どもらしい世界がまだ残ってたのかと思いがけず感動。
どんな世界でも子どもが笑っていると空気が少し優しくなる。
布と棒切れと糸でできた人形劇を食い入るように見ている子どもを見ると、きっと大人にはもう見えない瑞々しい世界が子どもの目には広がってるんだろうな、と実感。大人しかいない世界で日々過ごしていると忘れがちな感覚。
言論の自由がコントロールされた国で発展しがちなのが人形劇やアニメーションの類と聞く。国や社会への不満や皮肉を人形やキャラクターに投影したり代弁させたりするのだそう。
この人形劇がそうだったとは思わないけど(そもそも何言ってるかわからないし)、観客席で目をキラキラさせて魅了されてる子どもたちが幸せに育つような社会にしておくれよ、と異国のおばさんは勝手に願わずにいられない。
ロシアってば、奥が深いな。
まだまだ面白いことはたくさんあったけど、ウラジオストクの旅はこれでおしまい。
次の旅へつづく。