私とチャツネ Chutney and I
こんにちは。
一度涼しくなったと思ったのですが、まだまだ残暑が厳しいですね。
先日、静岡浅間神社で毎月1日に行われる、平成安倍の市に参加してきました。
その時に以前から出したいと思っていたチャツネを持っていきました。
小さなPOPに紹介文と写真を載せて置いておいたのですが、みなさん興味は持ってくれるものの、やはり未知の存在、といった感じでした。
何人かお味見してくださった方々は、「最初酸味に驚くけど、癖になる味だ」とおっしゃってくださったので、私の店にチャツネが浸透するまで、気長に紹介していこうと思います。
というわけで、今日はチャツネについてです。

と言っても、そもそもチャツネはイギリスの文化ではなく、インド料理などで付け合せや調味料のような形で楽しまれてきたものです。
そちらの文化を紹介するのもちょっと違うなーと思うので、今日は私とチャツネの出会いのようなものをお話ししようと思います。
あまり面白いことはないのですが、しばしおつきあいください。
最後に簡単なチャツネのレシピもあります(^^)/
さて、イギリスでチャツネというと、そのほとんどがフルーツを使ったものになります。
トマトのチャツネなどもありますが、レーズン、クランベリーなどのドライフルーツが含まれます。
私はもともと「調理したフルーツ」が好きではなかったので、チャツネの存在は海外小説を読んで知っていたのですが、文化として受け入れはしても、特に食べてみたいと思うようなものではありませんでした。
大人になるにつれて、そういう完全拒否!みたいなことはなくなり、美味しいものは美味しいからそのまま受け入れよう、という姿勢になってきたものの、やはり「料理」と「果物」は別物だろう、という意識が常にありました。
イギリス留学を始めたときもそういう意識はあったのですが、そもそも留学を決めた最も大きな要因は「イギリスのリアルな食文化を知りたい」というものでした。
なので、とにかく食べられるものはなんでも挑戦してみよう、という姿勢で臨んたのが、この時のイギリス留学でした。
以前同じようなことを書いたかもしれませんが、そのために私がとにかく徹底的に、多少子供っぽくても貫いたのが、「私はイギリスの食べ物が好きです。そのために仕事を辞めてこの国に来ました。」ということを必ず最初に合う人に伝えることです。
おなじ人にも何度も繰り返し伝えました。
これは本当に功を奏して、国際的な固定観念で「イギリスの料理はまずい」と言われる中、わざわざこの子はイギリスの食べ物なんか調べに来たんだ…という、ある種の感動?を現地の人たちに誘ったんだと思います。
先生や学校の友達だけでなく、たくさんの人たちが協力してくれました。
その中でも一番私をサポートしてくれたのが、言うまでもなく私の2人目のホストマザー、ウェンディです。
普段から色々と料理をしていた彼女ですが、私のためにできるだけいろいろな種類の食べ物をふるまってくれました。
ウェンディの食卓はとても鮮やかで、華やかな色が好きな彼女のキッチンは常に明るい色であふれていましたが、それだけでなく、食卓にはたいてい、手作りのドレッシングやマヨネーズなど、ホームメイドの調味料が並んでいました。
その中に時々登場していたのが、ウェンディ特性のグリーントマトチャツネです。
このチャツネは、熟す前の青いトマトを使ったもので、オーガニックファームで働くエドがいるからこそ作れるチャツネでもありました。
見た目はなんというか、そんなに食欲をそそるものではなかったと思います。
茶色っぽい何か…というか。
それでもとにかく何でも挑戦してみようと思っていた私は、もちろんこのチャツネもトライ。
何のことはない、一瞬でというか一口でこの全く未知だった食べ物のとりこになってしまったのです。
イギリスのチャツネの多くは、お酢の酸味と、果物又は砂糖の甘みを楽しむものです。
私はフルーツソースなども苦手だったので、この甘酸っぱい食べ物は本当に衝撃的でした。
冒頭で、私のチャツネを試食してくださったお客様が「癖になる」とおっしゃったと書きましたが、まさにその通りで、以降食卓にチャツネが出たときはちょっと多すぎかも、というくらい取り分けていました。
さて、そのチャツネですが、どうやって食べたらいいの?という質問をいただきました。
イギリスでは、カナッペのようにビスケットとチーズと一緒に食べたり、ハムなどのコールドミートの付け合わせにしたりします。
また、プロウマンズランチ、という昔からあるランチセット、のような料理があります。
これは、プレートに、チーズ、パン、ピクルス、トマトなどと一緒にチャツネをのせたものです。
この料理、一説によると第二次世界大戦後にとあるチーズ屋さんが宣伝のためにランチパックとして売り出したのがはじめとされていますが、別の説ではそれより1世紀前にはこういった料理が食べられていた、とも言われています。
名前の通り、農作業をする人のためのランチで(プロウマン Ploughmanは耕す人という意味)、現在もパブなどでお目にかかれるそうです。
このプロウマンズランチを見ればお分かりいただけるように、サラダの味付けなどにしてもおいしくいただけると思います。
そうそう、サンドイッチの調味料に使うと絶大な効果を発揮することは間違いありません。
機密容器に入れておけば1年は保存可能なので、ぜひ一度試していただきたいです。
というわけで、今回ご紹介するのは、私が作っている赤いトマトのチャツネです。
このレシピは、ある日家族全員でペイントンに遊びに行ったとき、町の本屋さんで売っていたチャツネの本を参考にしたものです。
味はほんと、間違いなし!なので、ぜひお試しください~。
トマトチャツネ Tmato and onion chutney
赤いトマト…900g、皮をむいて粗くカットする
レーズン…225g
玉ねぎ…225g、刻む
カスターシュガー…225g
モルトビネガー…600mL
①すべての材料を鍋に入れ、一度沸騰させてからふつふつするくらいに火力を弱め、ふたをせずに2時間ほど煮る。水分がほとんどなくなるくらいまで煮詰める。
②滅菌消毒した瓶に詰め、1年保存可能。開封後は冷蔵庫保管。
以上です!簡単でしょ?
砂糖はなんでも応用が利きますが、保存性と甘酸っぱいというイギリスチャツネの特徴を考えると、あまり大量に減らすのはお勧めしません。
ビネガーはたいていの酢で代用が効きます。レシピでは赤ワインかシェリー酒のビネガー、と書かれていましたが、イギリスではサイダービネガー(リンゴ酢)が使われることも多いです。
レシピのモルトビネガーは大麦から作られる酢で、フィッシュアンドチップスに使われる調味料として有名だと思います。独特の風味があり、これに代わるものはなかなか見つからないと思います。
モルトビネガーは日本で買うととても高価なもの。。。使いたいのはやまやまですが、ここはほかのお酢で我慢しましょう。
私は米酢で試したこともあります。
お酢の風味は弱くなりますが、それでもおいしいチャツネになりました。
余談ですが、なんでも挑戦した私。
元々かなりのイギリスびいきなところがあるので、大抵のものは受け入れましたが、どうしても一つだけ食べられなかったものがあります。
それはクリスマスの定番、ミンツソース!
名前は忘れましたが、ペパーミントの5,6倍は大きいミントを刻んでオイルであえた、クリスマスの肉料理と一緒に食べるソースです。
普通の小道に生えているワイルドガーリックも生で食べた私ですが、これだけは本当に無理でした!
それではまた来週です!