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JazzClub

透明な雲

2019.08.18 12:55

 白く輝く水銀灯の下は眩いばかりに明るく、そこだけがいつか見たような風景がくっきりと浮き出ている。焦点が合っているというのだろうか、周囲の少しぼやけた雑然とした風景とは明らかに異なる空間である。薄手のマフラーを首に巻いた私は、近くのベンチに倒れ込むように座った。微かなため息のような声とともに白い息を吐いた。「私のどこがいけなかったのか。」繰り返し湧き上がる自己否定の感覚が、私の心の底を支配していた。色彩の剥がれ落ちた風景が眼前に現れては消える。別れはいつも突然である。

 私が彼女と出会ったのは三十路をそろそろ過ぎようとする頃であった。四十を目の前にして自分では気付かない沸々とした焦りがあったのだろうか。言葉を交わした瞬間から「運命の出会い」を意識するように自ら感情を高めていたのかもしれない。リチャード・ロジャースの「恋に恋して」という古いジャズナンバーがあるが、その中で歌われる歌詞を今となっては思い出すのである。