本所七不思議 -其の三-「落葉なき椎」
2019.09.05 11:00
隅田川のへりに大名屋敷が連なり、
その中でも松浦家の上屋敷は「椎ノ木屋敷(しいのきやしき)」と呼ばれていた。
うっそうと茂った樹齢何百年かわからない椎の木が、
枝を塀の外まで伸ばしていた。
ところが・・・
「うーむ・・・。
やはり、やはり不可思議だ・・・」
「もう何年とこの木を見てきているが、葉が一枚も落ちない。
どの季節でも、どんな天気でも。
しかも、わたしだけではなく、
葉が落ちているのを誰も見たことがないなど・・・。
解せぬ、解せぬぞ・・・」
椎の古木は、今日も葉を落とさない。
本所七不思議、「落葉なき椎」の話。