声を出して 9
厄介な事に、私はいつもと違う何かがあると、それが良い事でも悪い事でも勉強に身が入らないと言う、妙な癖があって・・・・ ううん、勉強どころかそれ以外の事にも身が入らない。
でも、一番身が入らないと言うのか、その気になれないのはテニス部の練習。
どう頑張っても、選手どころかまともにコートにさえも近づけない私の実力。
コート外に飛んで行くボールを追いかけて取るのは、多分部活内では私が一番だし・・・・・
それなのに、ラケットを持ってみんなと同じように・・・・・
「そんな事ではない!スンジョ君と結婚する事になった事を、ヘラがなんて言うのかが気になる。」
ヘラに会うのが嫌だ嫌だと思っていれば、会ってしまうのがハニにとって運が悪いと言うのか、ある程度心準備をしていても、女版ペク・スンジョと言われるヘラはその裏をかかれてしまう。
「あら!天才ペク・スンジョを惑わしたのハニじゃない。」
違う、ヘラは女版ペク・スンジョなんかじゃない。
スンジョ君は意地悪は言うけど、こんな風に人が傷つくような言い方はした事がない。
「スンジョ君を惑わしたりなんてしていません!」
「クスッ・・・惑わしたのじゃないわね・・・魔が刺したのね。」
言い換えて言っても、結局は同じ事のような気がして、余計に頭に来てしまう。
スンジョ君はこんな悪魔みたいなヘラのどこを見て、お金のためとはいえ結婚を前提にお見合いをしたのだろう。
それこそ、スンジョ君の魔が刺したのかもしれない。
それを言いたいけど、言える相手ではないから、ここは黙っていた方が賢いかも。
「でも、私との結婚を棒に振って、あなたを選んで良かったのかもしれないわね。」
「そ・・・そう?」
「あなたを選んで後悔した時に、一度は棒に振った女性の良さを思い出してくれる。」
「う・・・・・」
「私なら、彼の後悔を許す心の広さはあるわ。」
やっぱりヘラは好きになれないけど、彼女は女版ペク・スンジョだから、心の中は言葉として出た物とは違って、潔く祝福してくれていると思わないといけない・・・・
そうは思っていても、私の前から小馬鹿にしたように笑い声をあげて背中を見せて歩いて行くヘラが・・・・ヘラを・・・スンジョ君が魔が刺して結婚をしようとしていたのだと思うと、私がスンジョ君を救ったのだと思う様にして行こうと心に決めた。