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13th hour garden

玉蘭の咲くころ~rotten version(注:rotten→腐った、腐敗した)

2016.04.04 02:34

小鉄に上着を掛けられた狭霧は、何も言わずに、上着の前を合わせるかのように引っ張った。

怒ったようなその表情を見て小鉄は少し心配になって聞いた。

「何か怒っているのか?」

「・・・別に。怒ってなんかいない」

小鉄と眼を合わさずに、少しふてくされたかのように狭霧は言った。ほんのりと赤くなったその表情に、小鉄は自然と引き付けられた。

「・・・狭霧」

名前を呼ばれて、狭霧は少し顔を上げた。小鉄は軽く身体をかがめた。

小鉄が離れたとき、狭霧は何が起こったのか解らない顔をして固まっていた。やがて、事態を把握すると、自分の口に握った右手の甲を当てて後ろに飛び退った。

「こてっ、こてっ、こてっ、おまっ、おまっ、おまっ、お前、今、何をっ」

狭霧の反応に小鉄は戸惑って

「何って・・・キスを」

「だから、何でっ」

「何でって、そういう雰囲気かと思って・・・」

「そーゆー雰囲気だからってキスするか?ありえないだろー、フツー」

「いや、だから、その・・・」


家の中にいた長柄が表の騒ぎに気が付いた。窓から庭にいる二人を見てつぶやいた。

「小鉄さまがいらしてたのか・・・しかし、あんなところで、何を言い争われているんだろう・・・」

・・・春はまだ、遠かった。