植物は知性を備え集団を形成している
昇りつつ蔦の枯れゆく炎かな 高資
切株に生えて真賢木若葉かな 五島高資
http://www.seibutsushi.net/blog/2017/01/3969.html?g=131205
【植物は知性を備え集団を形成している】 より
まずは同類間での相互協力の事例です。
400年以上前に伐採されたブナの切り株が生き続けていたことが確認されていますが、それはその切り株が超樹的な生命力を備えているからではなく、周囲に生えている他のブナが根を経由して切り株と繋がり、数百年に渡り栄養を供給していたことによります。
子供のころから自然を愛し、1980年代にドイツ林業委員会の職員となったペーター・ヴォールレーベン氏は、森を管理しながらトウヒ、ブナ、オーク、マツなど、毎日数百もの木々を見つづけているが、当初は木々の隠された暮らしぶりについてほとんど何も知らなかったという。
◆森林は超生物:仲間の助けによって生き続けるブナの切り株
ある時、管理していた森の中で、直径1.5メートルほどの苔むした石のようなものが円形に並んでいる場所を見つけた。ナイフで苔を剥がしたところ、それは樹皮の層だった。石のように硬く、なぜ腐らないのか不思議に思ったそうだが動かそうとしてわかったという。木は根を張っており、まだ生きていたのだ。
それは少なくとも400年以上前に伐採されたであろう大昔のブナの巨木の切り株であった。外周があった部分に”石”が育ち、内部は完全に朽ち果てていたのに完全には死んでいなかった。
切り株には葉がないので日の光から栄養を吸収できない。根はずっと昔に詰まっていて、地面から糖という形で食べ物を得ることができない。もちろん呼吸もできない。通常ならば飢えて死んでいたはずだ。
ではなぜこの切り株は生き続けることができたのだろう?
考えられるのは、切り株の周囲に生えている別のブナの存在である。それらのブナが、根をからめて切り株と繋がって、何世紀もの間、栄養を供給していたということだ。
同じ種類の木の雑木林に生息する同種の木々のほとんどは、根っこを介して繋がるようになる。まるで困った時に助け合うことがルールだとでもいうかのようで、ここから森林とは超生物なのだという結論が導かれる。
◆木は仲間のみを助け、弱っている仲間を見捨てない
しかし、そうした相互扶助は無作為なものではない。イタリア、トリノ大学の研究者によると、木は仲間の根と別種の根を区別し、よそ者を排除することすらあるそうだ。中には緊密に根を絡め合い、夫婦のように一緒に死ぬようなものもある。病気に冒されたもの、あるいは飢えたものも識別され、回復するまで栄養を送り合ったりする。
ヴォールレーベン氏の森に生えるブナもそうした行動をとっている。それはまるで象の群れと同じで、仲間の面倒を見て、病気の仲間や弱った仲間がいれば助けるのだ。
そして、例の切り株(苔むした石)から判明したように、象と同じく死者との別れすら惜しむのだ。もちろん、どの切り株でもこうなるわけではない。大抵は腐敗して、数百年のうちに跡形もなくなる。ごく少数だけが仲間の助けによって、数世紀の間生き延び続ける。それは、まるで木々の親密さや愛情を示しているかのようだ。
次に意思伝達の事例です。
植物の根の先端は電気信号の発信や化学物質による意思伝達、その他重力、温度、湿度、磁場、光、圧力、化学物質、有毒物質(重金属など)音の振動、酸素、二酸化炭素の有無などの計測を行って、適応戦略を探っており、脳と同等の役割を担っていると言えます。
【参考】
20.植物の根の先端(根端)は動物の脳に匹敵する機能を持っている(ダーウイン)
こうした意思伝達機能により、害虫の接近や旱魃の到来といった危険を伝達しあっているのです。
一方、害虫もこの意思伝達機能を傍受して逆利用し、植物のネットワークから切断されている個体を特定して狙うといった行動が見られます。
◆菌を利用して仲間とコミュニケーションをとる木々
ブリティッシュコロンビア大学のスザンヌ・シマード博士は、化学物質や電気信号を利用して、木が仲間同士で警告し合うことを発見した。彼らは土の中に菌のネットワークを張り巡らしている。この菌が光ファイバーのように機能する。その密度は驚くべきもので、ティースプーン1杯分の面積に、数マイルもの長さのネットワークが作られているほどだ。
数世紀にわたって破壊されることがなければ、1つの菌でも森林全体に広がるネットワークを形成できる。このネットワークを介して、木々は昆虫や干ばつなどの危険を知らせ合う。その伝達速度はおよそ3秒でおよそ2.5センチ。哺乳類の体内における速度とは比べ物にならないが、クラゲや蠕虫の類なら同じような神経伝達速度の生き物はいる。
◆木々のメッセージを利用する虫たち
これは害虫が弱っている木々を特定できる理由を説明するかもしれない。イモムシや甲虫は葉や幹をかじって木々が伝達する警告の流れを察知し、メッセージを伝達しない個体を特定するのだ。通信の途絶する木は菌のネットワークから切り離されており、攻撃に備えたり、助けを呼ぶことができないサインかもしれない。木々が話すだけでなく、虫までが聞き耳を立てているということだ。
木と虫のコミュニケーションは何も防御や病気に関するものだけではない。甘く香る花が放つ歓迎のメッセージもある。花の香りは人間だけでなく、ミツバチなども惹きつける。糖分が豊富な蜜を求めるミツバチは、受粉を助ける大切な役割を担っている。
また、花は香りだけでなく、色彩も鮮やかだ。つまり、他の動物や鳥と同じく、木もまた子孫を残すために、官能的な香りと装飾で自身を飾り立てるのだ。
◆音を出してコミュニケーションをとる植物
植物のコミュニケーションについては、もう1つ手段がある。音だ。昔は木が意図的に音を立てるなど疑わしく思っていたが、最新の研究によると、どうやら本当らしい。
西オーストラリア大学の研究者は高感度センサーで根を観察した結果、どうらやら220ヘルツ(ラの音)の音を立てているらしいことが判明した。この音を種に聞かせると、根がその音に向かって傾くのだ。つまり、明らかに音を聞いて、それに反応しているということだ。
最後に攻撃と防衛の事例です。
アカシアは、キリンに葉を食べられると、毒を葉に送り込んで防衛を図るだけでなく、ガスを発生させて、捕食者が近くに居ることを仲間の木に知らせ、知らせを受けた木が毒を葉に送り込んで捕食者に備えます。また、キリンもそれを察知すると周辺の木の葉は食べずに、ガスが届かない風上のアカシアを狙います。
また、ニレやマツは、昆虫に葉を食べられると、苦い物質を葉に送るだけでなく、捕食者の唾液から相手を特定し、その捕食者の天敵を呼び寄せたりもします。
◆自らの葉がキリンに食べられると瞬時に毒を送り込み、なおかつ仲間にそれを知らせるアカシア
アフリカのサバンナに自生するアカシアも生態系に大きな役割を果たしている。キリンが葉を食べ始めると、アカシアは不味い毒を葉に送り込んで実を守ろうとする。これはものの数分で起こる。木にしてみれば電光石火の速さだろう。
その後キリンはどうするか?別のアカシアから食べればいいと思うかもしれないがキリンはそれをしない。アカシアはエチレンというガスを発生し、近くの仲間に危険を知らせているのだ。
知らせを受けたアカシアもまた葉に毒を送り、葉っぱを不味くする。キリンは不味い葉があれば、他のアカシアも不味いということを経験上知っているのだ。唯一の例外は風によってガスの警告を受けることができなかったアカシアだ。キリンもまたこれも承知しており、風上のアカシアへ向かう。
◆唾液から襲撃者を特定し、フェロモンをだしてその天敵をおびき寄せるニレとマツ
ニレとマツは別の戦略を使う。葉を昆虫にかじられると、電気信号を根に向かって送る。その反応には1時間ほどかかるのだが、信号を受けると葉に受かって苦い化学物質を送り込んで身を守ろうとする。だが、それ以上に驚きなのが、木は唾液から襲撃者を特定することだ。犯人を特定した後も凄い。ある種のフェロモンを放出して、その襲撃者の天敵を呼び寄せてしまうのである。
こうしてみると、植物が記憶や意思疎通を駆使して、同類との相互協力や外敵に対する防衛・攻撃を行っているのがよくわかり、知性や感情を持っていると捉えるのが適切でしょう。
そして、より重要なことは、植物は備えている知性や感情によって、個体の能力上昇ではなく、動物に勝るとも劣らない集団を形成し、捕食者や天候などの自然外圧への適応力を高めているという点です。
ほとんどの動物が集団を形成する事によって適応可能性を高めていますが、これは植物も全く同様なのです。
生物における集団形成は、原核生物の時代から重要かつ普遍性の高い適応戦略であることの顕れとも言えます。