2.男が酒を飲む夜は
この曲は、私の恩師である作曲家・猪俣公章先生の曲で、元はダークダックスさんの歌として1977年に発表され、現在ではもう廃盤となっている曲です。
猪俣先生の隠れた名曲として、時代を超えて現代の人にも聞いて頂きたいと思い、今回、歌わせて頂きました。
この曲に出会ったきっかけは、昨年、姉弟子の坂本冬美さんから「大阪ラプソディー」を一緒にデュエットしませんか?とお誘い頂いたことから始まります。
ちょうど昨年は、猪俣先生の生誕80周年にあたり、坂本冬美さんは、その記念アルバム「ENKA III ~偲歌~」を制作されていました。
そのアルバムに収録される1曲として「大阪ラプソディー」を冬美さんとデュエットさせて頂いたのですが、実は冬美さんと私は、一緒に歌うのも、ましてやデュエットするのもこれが初めてで、スタジオに入る前、私はとても緊張していました。
しかし、レコーディングがスタートすると、お互いの目と目を合わせて息もピッタリ、声質は違うはずなのに、ハーモニーもピッタリ合って、私はゆりかごに乗っているかのような、とても心地いい気分でレコーディングが出来ました。
お互い出会ってもう30数年経っていますが、なぜ今このタイミングで初めてなのか?
姉妹弟子としてな運命のようなものを感じ、とても感動しました。
猪俣先生の曲を弟子同士で歌えた喜びに満ち溢れていた私は「真夜中のささやき」の企画プランを考える段階で、どうしても猪俣先生の曲も収録したくなり、そして、先生の隠れた名曲を探し始めたのです。
そんな中、ある日突然、猪俣先生の作品を数多く管理されている出版社の方から「倉庫の隅に眠っていた、たった1枚のレコードを見つけた」という連絡を頂き、それが「男が酒を飲む夜は」でした。
それはまるで、この曲の方から「マルシア、歌ってくれ」と言ってくれたような、そんな不思議な出会いでした。
猪俣公章先生の弟子として、先生の曲を歌い継ぐことは使命でもありますが、この曲との出会いは、もしかしたら天国の先生から「マル、歌ってみろ」と授けてくださったのかもしれません。
私はこの曲を、毎日頑張って仕事をしている男性方々の疲れが癒えるように、母親のような気持ちになって、肩を優しくたたきながら大きく包み込むように、心を込めて歌わせて頂きました。
歌詞に出てくる「男」ですが、この曲を作詞された山口洋子先生は、もしかしたら猪俣先生がお酒を飲まれている姿を書かれたのかなぁ、なんて想像してしまいます。
私が内弟子の頃、お酒を飲まれるとよくピアノを弾きながら気持ち良さそうに歌っていた先生の顔が懐かしく思い出されます。
マルシア
≪アルバム全曲の試聴はコチラ≫
https://columbia.jp/artist-info/marcia/discography/COCP-40927.html#play-music