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ダンス評.com

Aokid、大宮大奨、小暮香帆、橋本ロマンス、康本雅子 etc.「ダンサロンvol. 7」 スパイラルホール

2019.09.08 02:29

「ダンサロン」の名は「ダンサロン=dance + salon 舞台というより広場」というコンセプトから。Vo. 0から始まり、今回で8回目。出演者たちが踊るスペースの四方を客席が囲み、アットホームな雰囲気で開催された。

料金は1ドリンク込みで2800円、12歳以下は500円というお得さで、出演者はコンテンポラリーダンスで大活躍中の人や、他のダンスやパントマイムやマスキングテープのアートなど多様なジャンルの人が登場し、康本雅子氏がMCをし、観客参加型の企画もあって、最高に楽しい。公演時間2時間半弱。

チケット料金に含まれるドリンク(炭酸飲料。アルコールは追加料金が必要らしい)は客席に持ち込むことができる。20分間の休憩中は、ロビーで食事も販売された。

客席数は、「サロン」なのであえて少なめにしているのかもしれないが、それにしても空席もあったので、もっとたくさんの人が見に来てもいいのにと思った。1度きりの公演だからという理由もあるかもしれないが。


■「今日のお話」

出演:金子しんぺい、荒井康太

パントマイムの金子氏とドラムの荒井氏によるパフォーマンス。当たり前だが、パントマイムをする人は、人の体や表情について精緻に観察し、でもそれをそのまま自分の体でコピーするのではなく、「こう動けがこう見える」という、人の認識の特徴も理解した上で取り込み、作品にしているのだろう。おなじみの「壁がある」や「手に持った荷物を動かせない」といった動きから、男性である金子氏が動物になったり女性になったりし、身体性がガラッと変わる。固定観念を利用した演技だけれども、パントマイムには定型の面白さみたいなものがあるのだろうから、というのか、定型を基にしたアートだろうから、やはりそこで笑うことになるのだろう。かばんの中に何が入っていたのか、ミステリーっぽい緊迫感もあって、パントマイムも巧みで、パントマイムと呼吸の合った荒井氏のドラムも「共演者」となっていて、素晴らしかった。


■「Ammonite Breathing」

出演:小暮香帆

小暮氏はいつ見ても美しい身体、美しい動きだが、自身で作るソロ作品ごとに異なった表情を見せてくれる。今回は、白い薄手のミニワンピースで、渦を巻くアンモナイトの曲線、太古から長く続く呼吸と命を踊った。縦横無尽にくるくると回転し、アンモナイトに見立てたオブジェに頬をそっと擦り付けて体を這わせる。そのダンスと息遣いをいつまででも見て感じていられそうだ。


■「For … Tango」

出演:Shuhei、Yuri、Daisuke

振付:Shuhei & Yuri

演奏:osvaldo pugliese 他

おそらく初めて「生タンゴ」(康本雅子氏のMCの言葉より)を見た。アルゼンチンタンゴだという。女性と男性の踊りから男性同士の踊り、そしてまた女性と男性の踊り。女性の真っ赤なドレスは背中が丸空きで、スリットの深さもすごくて脚が丸出し。男性と絡み合いながら踊るさまは、やはりセクシー。しかし、男性同士の踊りがまた魅惑的で、最初はにらみをきかせているが、一緒に踊り出すという、闘いの場面なのかもしれないが、BL(ボーイズラブ)好きの人が見たら喜びそうな、いろいろ想像できそうなダンスだった。


■「イヴ」

構成・演出:振付:橋本ロマンス

出演:山田茉琳、葉南子、橋本ロマンス

大きなブルーシートを敷き、3人のダンサーがそれぞれ懐中電灯を手にして、つけたり消したりするという演出が面白かった。踊ったり、走ったり、ブルーシートの下に隠れた人を、ブルーシートを引きはがして、露わにしたり。真夜中の東京で若い身体が躍動し、私たちの知らないところで何かが行われているような、ワクワクドキドキ感があった。


■「Untitled (work in progress)」

振付・出演:大宮大奨

冒頭、ズボンを脱いで、パンツ(下着)まで脱ごうとして、ためらう。それから、長い金属の棒を使って、何度も失敗しながら、高い三角錐を2つ組み立てる。四角をつなげた小さい構造物も棒で作り、その中をくぐったりして、踊る。身体能力がものすごく高いことが、短い踊りからもすぐ見て取れる。大きなビニールのシートを持ってきて、2つの三角錐にかけて、透明の部屋を作る。その中に入り、Tシャツを脱ぎ、ズボンを脱ぎ、パンツを脱ぐ。なあーんだ、パンツを脱ぎたかったんだね!←違う。いや、でも本当にそうかもしれない。違うものを下にはいて、部屋から出てくる。とても踊れる人があえてたくさんは踊らない、不思議さとユーモアのある作品。


■「透明なマント」

発表者:Aokid

観客とコミュニケーションを取りながら、転げ回ったり、壁に向かっていったり、床で回転したり。後半は曲をかけて踊る。「イタイ」のスレスレのところを狙ってくるので、見ていると最初は苦笑いみたいだったのが本当の笑顔になっていくようなパフォーマンス。きっと人から愛される人なのだろうなあと勝手に思う。


■「テープで描こう!ゴブリンワークショップ」

出演:ゴブリンアーティスト 小中大地

最後は、マスキングテープで床や壁などに絵を描いていくアーティスト、小中大地氏に教えてもらって、観客がフロアに出てテープで絵を描いていくワークショップ。フロアに小中氏が事前に描いていた絵は、「しりとり」でつながっていくものたちを描いていったらしい。観客からお題をもらって描いたり、ものをキャラクター化して描いたりすることもあるそうだ。観客が思い思いにテープで描いていくと、フロアいっぱいにカラフルな絵たちが広がった。子どもは数人いただけだったのだが、大人たちが続々と描いていた。


■カーテンコール

カラフルになったフロアに出演者たちが全員出てきて、音楽がかかって、踊った。観客からは手拍子が出て、盛り上がる。とても楽しいイベントだった。


■康本雅子氏のMC

有名ダンサー・振付家の康本雅子氏がラフな着物姿でMCを務め、公演冒頭や休憩に入る直前には、ダンスも披露。休憩前のダンスは、観客から歌をリクエストしてもらってその曲で踊るという趣向だったが、観客からは声が上がらず、関係者のリクエストにより「およげたいやきくん」に。もともとそういう段取りであったのだろうと思われるが、たい焼きになりきった踊りが笑いを誘い、さすがの貫禄だった。


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2019年9月7日(土)18:00開演(開場とバーのオープンは30分前)

スパイラルホール(スパイラル3F)

出演:Aokid、金子しんぺい(パントマイム)✕荒井康太(ds)、大宮大奨、小暮香帆、Tango Ritmo (タンゴ リトゥモ)Daisuke/Shuhei/Yuri、橋本ロマンス/山田茉琳/葉南子

MC:康本雅子

会場デコレーション:ゴブリンアーティスト 小中大地

フード:西村隆ノ介(にしむー食堂)

特別企画:

ダンサロンにインスパイアされた他ジャンル・アーティストによる展示

ゴブリンアーティスト 小中大地によるマスキングテープを使ったワークショップ

全席自由(1ドリンク込み)一般:2800円、子ども:500円 (12歳以下/枚数限定)

主催・制作:ダンサロン実行委員会

会場協力:株式会社ワコールアートセンター

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