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ZIPANG-3 TOKIO 2020 国際かんがい排水委員会(ICID)「世界かんがい施設遺産候補4施設を登録決定!(2)」

2019.09.10 08:00

はじめに 記事をお届けするに当たり、このたびの関東地域を中心とする暴風雨により被災された皆様へ心よりお見舞い申し上げます。


国際かんがい排水委員会(ICID)は、令和元年9月4日(水曜日)にインドネシア・バリで開催された第70回国際執行理事会において、ICID日本国内委員会が世界かんがい施設遺産候補として申請した4施設を世界かんがい施設遺産として登録することを決定しました。

北茨城市は東が太平洋に接しています。岡倉天心が愛した五浦海岸と岸壁に建つ六角堂

北茨城市の五浦海岸の岸壁すれすれにに建つ「六角堂」は岡倉天心が自ら設計しました。
天心は、岩に打ち付け砕け散る波を眺め、思索に耽ったのであろうか・・・

北茨城市域の85%を山地と台地が占める「奥山の彩」


世界かんがい施設遺産登録4施設(2019年)

1.十石堀(じゅっこくぼり)(茨城県北茨城市)  

十石堀 滝の沢水門

十石堀位置図

世界かんがい施設遺産認定書


十石堀の概要

十石堀は、農民自らの発意と計画により、1669年に建設された用水施設であり、用水路延長約15km、取水水門2ヶ所、分水工2ヶ所、最大取水量毎秒0.36m3、受益面積は78haです。鉄筋コンクリート三面張り水路に改修されている区間もありますが、水源から約2kmの区間は、建設後、350年が経過した現在でも建設当時の姿のまま利用されています。


十石堀が位置する北茨城市は東が太平洋に接していますが、市域の85%を山地と台地が占めているため、海岸近くまで山地と台地が迫っています。


当時、この台地上にある農地は、水源が天水のみであるため、毎年のように水不足によって農作物が収穫できないという被害を受け、農民たちは大変困窮していました。そこで、1668年に、当時の村長であった沼田主計(ぬまたかずえ)は、水不足の解消と新田の開発を目的として用水路の建設を計画し、この地域を支配する領主に願い出ました。


当時の技術水準では、水を大北川から取り入れて台地上へ送ることはできませんでした。そこで、農民らは協力し、水源を直線距離で6km、標高300mの奥深い山中にある大北川の支流に探し出し、そこから自然の地形を巧みに活用しながら、急峻な山の斜面に延長約13kmにも及ぶ用水路を建設するという当時としては革新的な計画を立案しました。計画を立案した当初、領主は、難工事が予想されたため、建設を認めませんでした。しかし、領主は、立案者である沼田主計の命を賭した決意に動かされ、建設を認めました。


工事は1668年の8月に始まり、農民らの協力によってわずか約半年後の1669年3月に完成しました。また、建設資材は農民が自分たちの山から調達し、建設費用を領主が見積った額の約10分の1に縮減することができました。


十石堀の水は、松井地区、日棚地区、粟野地区の3地区で利用されました。領主は、十石堀の建設と新田の開発に功績があったとして沼田主計を称え、開発された新田のうち、沼田主計にかかり租税を免除しました。沼田主計が租税を免除された新田の米の収穫高が約10石であったことから、建設された用水路は十石堀と呼ばれるようになりました。


この十石堀で建設された導水路「掘割」は、自然の地形が巧みに活かされ、現在も建設当時の姿のまま利用されており、その歴史的価値から北茨城市指定史跡に指定されています。

   

2.見沼代用水(みぬまだいようすい)(埼玉県行田市、羽生市、加須市、鴻巣市、久喜市、桶川市、上尾市、蓮田市、白岡市、春日部市、さいたま市、越谷市、川口市、草加市、戸田市、北足立郡伊奈町、南埼玉郡宮代町) 


見沼代用水

 ~江戸の繁栄を支えた先進的土木技術の結集・我が国最大の農業用水の誕生~

見沼代 用水は、日本最大の流域面積を持つ利根川の中流域から取水し、1728 年の建設以来、現在まで、日本の首都である江戸(東京)の北部に位置する広大な農地に用水を供給している幹線延長約 80km の用水路であります。


18世紀初頭、八代将軍・徳川吉宗は米の増産によって幕府の財政を改善するため、新田開発を奨励した。本地域では、それまで地域の比較的狭い地形を有効に利用した「溜井」を水源としていたが、その灌漑面積は限界に達していた。吉宗に招聘された「紀州流 (きしゅうりゅう) 」の優れた土木技術者、井澤弥惣兵衛為永は、より広域の水源の利用の可能性を検討し、遠方の安定した水源からの導水と既存農地への配水を併せた地域の水条件の抜本的な改善策を考えた。


井澤は1728 年に、それまで約5,000ha を灌漑する水源であった見沼溜井を廃止し、その敷地を干拓して約1,200ha の新田とし、代わりの水源を確保するため、約60km離れた利根川から引水するための見沼代用水(見沼に「代わる」用水)を築造した。国家的プロジェクトとしての見沼代用水の開削は、新田開発(約1,800 ha)と既存田を合わせた約15,000ha の水田へ豊富で安定した用水供給を可能とし、当時の食糧増産と財政再建に大きく貢献した。


工事は先進的な「紀州流」技術を結集し、わずか6ヶ月という驚異的な短期間で完成した。約60km もの長大水路を自然勾配で導水するために「水盛器(みずもりき )」を用いた精度の高い水準測量が行われ、工事は沿線の村単位に分割して一斉に工事を進める「村請」により行われた。重要構造物である「元圦(もといり)」(取水口及び樋管)、流量を制御する「八間堰・十六間堰」、河川横断工の「伏越」(逆サイホン)や「掛渡井」(水路橋)等は当時の最先端の技術で設計・施工され、これまでに例を見ない規模の木造構造物であった。また、パナマ運河完成の約180年も前に築造された閘門式運河「通船堀」は、舟運による広域的物流システムを成立させ、江戸の繁栄を支えた。


見沼代用水は築造から約300年を経過し、コンクリート水路へと姿を変えたが、現在も開削当時と同じ取水地点、路線、自然かんがい方式で埼玉県東部の大地を潤しており、2006年に農林水産省の疏水百選に登録された。「通船堀」についてもその歴史的・文化的価値が高いことから1982年に国指定史跡として登録されています。  

 

3.倉安川・百間川かんがい排水施設群(くらやすがわ・ひゃっけんがわかんがはいすいしせつぐん)(岡山県岡山市) 


倉安川・百間川かんがい排水施設群

~蒼海を「豊穣の大地」に変貌させた用排水路群~

(1)倉安川(水路)

吉井川と旭川を結ぶ延長約20km,幅員4m~7mのかんがい施設。

(2)百間川(排水施設) 

延長約13km,旭川の洪水防止など基幹的な排水施設としての役割を有する。

(3)倉安川吉井水門(堰)〔岡山県指定遺跡〕

切り石を丹念に積み上げた石垣護岸や水門石柱等高度な建設技術を駆使して築造された現存する日本最古の「閘門式水門」。


4.菊池のかんがい用水群(きくちのかんがいようすいぐん)(熊本県菊池市)


菊池きくちのかんがい用水群(築地井手,原井手 ,今村井手・宝永隧道 ,古川兵戸井手 )

~ 近世熊本における水田開発と農業水利の歴史的発展を伝えるフィールドミュージアム ~

申請施設である『築地井手(ついじいで)』,『原井手(はるいで)』,『今村井手(いまむらいで) ・宝永隧道(ほうえいずいどう )』,『古川兵戸井手(ふるかわひょうどいで)』は菊池川を用水源とする水田かんがい用水路群であります。


菊池川は,阿蘇外輪山の水源とし,中流部の菊鹿盆地,下流部の玉名平野を流下して最終的に有明海に注ぐ熊本県最北端の一級河川になります。4つの用水路の築造は,平野部から山間部に向かう水田開発の歴史的な流れに応じて,菊池川の下流から上流へと進められた。まず,今から約400年前の1615年(江戸時代初期),地方が長く続いた戦乱からの復興をめざす中,熊本では,当時の治世者である加藤清正によって築地井手が築造された。


その後,農業土木技術や社会制度の発達を受けて,1701年と1705年(江戸時代中期)に,惣庄屋の河原杢左衛門によってそれぞれ原井手と今村井手・宝永隧道築造された。全長約11 km の原井手には,熊本で最古の水路トンネル(全長約450m)が現存する。また,今村井手の宝永隧道区間(全長約300 m)には,通気用の竪穴をはじめとして水路トンネルの開削における基本的な工法が当時のまま残っています。1835年(江戸時代末期)には,庄屋の五島五郎右衛門と平山八左衛門によって古川兵戸井手が築造された。


菊池川で最後に作られた古川兵戸井手は利水において下流地域から厳しい制限を受けたため,その築造過程には,隣接流域からの導水計画,管理者である江戸幕府との水利権調整,崩れやすい石灰岩質の山間部を貫通する水路トンネルの開削など,当時最高の農業土木技術が集約されています。このように,近世における農業土木技術の発展段階を象徴するかんがい施設が菊池地域に集中し,それらは時代を超えて“菊池川の農業水利”によって強く結ばれています。


約700haの水田開発や山間部における飲料水の安定的な確保を可能にし,地域住民の生活を大きく改善した4つの用水路は,これまで地域住民によって適切に維持管理され,数百年間経った今も機能を低下させることなく約615haの水田を潤しています。さらに現在は,“イデベンチャー”(用水路下り)や小学生の施設見学会などを通じて地域活性化にも大きく貢献しています。



鎹八咫烏 記
伊勢「斎宮」明和町観光大使



協力(順不同・敬称略)

農林水産省 〒100-8950 東京都千代田区霞が関1-2-1電話:03-3502-8111(代表)
(農村振興局整備部設計課海外土地改良技術室)  

北茨城市役所 〒319-1592 茨城県北茨城市磯原町磯原1630 電話:0293-43-1111(代表) 

埼玉県庁 〒330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号
電話番号:048-824-2111(代表)

岡山市役所 〒700-8544 岡山市北区大供一丁目1番1号 電話:086-803-1000(代表)

菊池市役所 〒861-1331 熊本県菊池市隈府888電話: 0968-25-7111



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