秋リーグ初戦 2019/08/31
小雨がチラつき少し涼しさが出てきた日の午後、遂に秋リーグ初戦が始まった。
相手は攻撃力が際立つチームであり、春の反省から打撃力を鍛えていた軟野とは乱打戦が期待された。
ここで先発を任されたのはこれまで部内戦での好投を見せた1年の黒田。重い速球にキレのあるカーブが持ち味であるが、この日は制球が定まらず四球が散見、また初戦ということで内野の動きも硬く失策も絡み、手痛い先制点を食らった。
その裏の攻撃、相手投手はこちらの打ち気をそらす様な軟投派が登場。
緩やかなカーブと制球された半速球により1番向井は翻弄されセンターフライに討ち取られた。そしてここで登場したのは2番増原。MLBやプロでも最近注目され始めた戦法”2番打者最強説”を取り入れ、普段4番を打っていた増原がこの試合から異例の2番へ打順を繰り上げた。
春リーグでは骨折により満足に出場できなかった増原は久々の公式戦、しかしそのプレッシャーを押しのけ狙いを絞った初球、緩やかなカーブを完全に捉え相手右翼の頭上を越える大飛球により一気に三塁に到達した。
まず1点を返したいベンチはスクイズのサインを出したが、三塁に到達するのに全体力を使った増原からNGが出て強攻策に移行。しかし3番林が三振に取られ二死三塁で4番坂本へ。坂本は苦手とする軟投派になんとか粘り、フルカウントへ。さらにここで坂本の粘りが功をなし相手のパスボールにより増原が帰還、まずは1点を返した。
続く2回の守備、初回に続き四球と失策が目立ったが黒田もギアを上げ三振に内野ゴロと次々と打ち取り最小失点で乗り切った。
2回の攻撃、先頭福武は相手の変化球に合わせきれず三振となり、続くのは6番黒田。
OB戦でもホームランを打っており、チームからの期待も大きかった。初球の直球を見送ると続く2球目、逃げる様に変化するカーブに上手く合わせ綺麗なセンター返し。反撃への狼煙を上げた。そして1死1塁で7番伊東に回した。
伊東は送ることに専念し、バントを選択。しかしそれに動揺した相手は制球を乱しバッティングカウントとなった。ここでベンチからヒッティングの指示が出たため甘く浮いた3球目を上手く流して一死1、3塁と一気にチャンスを広げた。というのが理想だったが流した打球は二塁手正面、4-6-3と教科書にある様な綺麗なゲッツーとなった。普段からノッカーを務めている伊東は潜在意識的にゲッツー用のバッティングが身についていたのかもしれなかった。
そして迎えた3回の守備。
初回の三塁打とその後の守備により完全に体力がなくなった増原に変わり、中村が捕手として出場。黒田も球数がかさんでおり、この回を最後として降板が確定した。しかし黒田は最後まで気持ちを切らすことなく投げ続け、その球威を落とすことなく最後まで投げ抜きこの回を締めることに成功した。
続く攻撃は先頭須山、一年でありながらスタメンを獲得し公式戦初打席であった。しかし同じ一年の黒田の好投に刺激されこの打席にかける思いは人一倍強かった。そして長い手足を生かしアウトコース低めの難しい球ををすくい上げ公式戦初打席でありながら先頭打者で出塁した。
しかしここから9番田原と1番向井が連続で凡退し、二死1塁とチャンスを広げることが出来なかったが、ここで打席に入ったのは春リーグにおいてチーム打点王の中村。1点でも返しておきたいこの場面で相手の直球をセンター返し、1、3塁と完璧な仕事を果たした。しかし3番林が無念の三振、ここでもチャンスを生かすことが出来なかった。
そして4回からマウンドに上がったのはキャプテンの伊東だ。これまでセンターでその機を待っていた男が公式戦初登板を果たした。日本人には珍しい小さなステップ幅とムービングボール、また先発の黒田から10マイルほど落とした球速差で相手を翻弄する予定だった。しかしながら相手は黒田ですら抑えきれなかった強打のチーム、先頭が味方の失策により出塁すせるとそれに動揺し二者連続死球で早くも無死満塁となった。
ここで捕手中村からある球の解禁が要求された。
それは1867年にアメリカで生まれ、明治30年に日本に伝来。当時日本で最強と言われていた第一高等学校の野球部に対し三振の山を築きあげ中馬庚をして魔球とも称された球”カーブ”である。伊東は投手不足が懸念されるこの試合のためこの魔球を習得、そして勝負が決まるこのタイミングでついにそれを解禁した。
緩やかな軌道により打者の目線をずらし、直球の球速をより際立たせる。これによりこの回4人目の打者には直球をセンター方向に弾き返され2点を奪われたものの、続く打者には外角低めに決まり始め三振を奪うことに成功した。
その後犠牲フライにより1点を奪われたものの中堅手に入った向井に変わり三塁手となった稲永が内野ゴロを上手くさばきなんとかこの回を終えることができた。
そしてなんとか追加点を得たい次の回、相手投手は本格右腕の速球派に代わったが、先頭坂本祐が食らいつき相手の失策を誘い出塁すると5番福武とエンドランを強行、相手の巧みな守備により内野を抜くことは叶わなかったが1死2塁とし得点圏に走者を進めた。
そして打席に立つのはマウンドを降り一塁手として守備についた黒田であった。黒田は自らの失点を取り返すべくその集中力は凄まじいものであった。フルカウントまで粘った7球目、高めの直球を振り抜き打球は左中間を抜いきその間に坂本が帰還、待望の追加点を得た。しかしその後7番伊東三振、8番須山内野ゴロと追加点を得ることは叶わなかった。
そして最終回の守備、サヨナラのためにも1点も与えることは許されない緊張感がなんやナインを襲った。なんとか二死まで追い込むも、死球も絡み走者二塁の状態で甘く入った直球をレフト深くに運ばれあわや追加点の危機。しかしここでレフト須山から矢のような返球、そして三塁手稲永がそれを流れるようにつなぎ本塁で殺しなんとかこの回を終えることができた。
最後の攻撃となり、なんやベンチは次々と代打を送り総力戦の構えをとった。しかし相手投手もギアが上がり、代打坂本泰が邪飛、玉垣が三振と早くも二死となってここで代打野口。春のリーグでも代打時の出塁率10割のこの男がこの打席でも粘りを見せ四球をもぎ取り、3番稲永に回した。ここで野口の待球策により調子を崩した相手投手をさらに追い込むかのようなカット攻撃、しびれを切らした相手からさらに四球を奪った。
そして二死1、2塁で4番坂本裕に回った。しかし坂本裕も緊張が見えたか2球目の難しい球を引っ掛けそのまま内野ゴロとなった。
最後は総力戦となった初戦であったが内野守備の乱れやチャンスでの打ち損じ等これから始まる秋リーグの課題は多く残ることとなった。次の試合では投手不足も解消されるので良い試合になることを期待したい。