売り上げ上昇中の油断。
会社の営業成績が上昇してくると「このやり方で良いんだ!」という自信が湧いてくる。そして、その結果の裏には各営業それぞれの相手先に対して柔軟に対応した結果で生まれている数字には、万人に再現性がないことに気づいてない経営者は多い。
特に20億くらいの中小規模のテキスタイルメーカーで、営業スキルを均一化して兵隊を増やせばそのまま戦力増強に繋がると考えている人がいたら、それはかなり危険な状態だ。
なぜならその20億はおそらく、各営業の個人商店が機能していて、その人のマンパワーに存分に依存している状況であることが多く、彼らのスキルをマニュアル化して多方面に通用する状態ではないからだ。(仮にマニュアル化できても応用できる人は少ない)
とは言え不思議と、そういうクラスの売り上げを作った会社はボチボチ看板が生きてくる。その中で会社の看板で商売が出来ていただけなのに、自分は個人商店出来てると勘違いする営業もそれなりに増産される。
そして本当に個人商店が出来ていた人財が抜けると、途端に機能していたと思っていた会社の看板やシステムは崩壊する。その時、手を打ってこなかった経営者も、自分は出来てると勘違いしていたプレイヤーも、原因がわからないため回復にはとても時間がかかったり、最悪は立ち直れないまま業界から消えていく。
この柱だった個人商店が会社を抜ける理由はいくつかあるが、おそらくは経営者がそういった先手を取りにいくような動きを出来ていない場合が多い気がする。直近の売り上げをあげることに躍起になって、5年、10年単位で変化に対してどうしていくか?もしくは先んじて『流れを自分たちで作っていくんだ』という会社の羅針盤みたいなのが見えてこない経営者の会社に離脱者が多いように感じる。
優秀なスタッフの積み上げた看板に乗っかるだけの船長は舵取り出来ないことが多い。看板が輝いてる時はその方法を信じて疑わず、繰り返すことで常に右肩上がりだと思い込んでいる。それは船を動かしていたスタッフが優秀だっただけで、会社自体が社会に対してきちんと機能していたとは言い難く、ただの居場所に過ぎなかったと言える。
またはこれに準じて自分は大丈夫と安堵していたプレイヤーとも呼べない駒たち。彼らはその船に乗ってただけで、何も作用していなかったことに気づけていない。だから、同規模の会社ではどこへ行ってもほとんど活躍できず、やがて自信を失ってしまう。
そんな人たちを見ては、(新しい世界が見つかるといいな)と心から思うばかりだが、(自業自得だよな)とも思うので、自戒も込めて、自分が良い状態の時ほど未来を案じようと思うのであった。