Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

ZIG の 秘密基地

妄想観覧車(パレットタウン)

2019.09.11 11:22

「明日東京に行くから、夕ごはんつきあって」


Fからメールが届いていて、「わざわざ鹿児島から行くんだから冷たくしないでよ」と続いていた。


冷たくしてる訳じゃなく、明日は仕事だし大きな展示会の撤収の日だから20時までは持ち場を離れられない。それに、二人だけで会ったりしたらTに顔向けできなくなる。



食事は済んだけれど、これからどうすればいいんだろう。


「お兄さんの家に泊まるんだろ?」

「そうだよ。伸ちゃん、明日は仕事なの?」

「土曜日だから、休みだけどな」

「だったら、朝まで一緒にいてよ。ずっと会いたくてさ、お金貯めて会いに来たんだよ」

「そんなこと言われてもな」

「まだ、観覧車動いてるよ。乗ろうよ」

「行ってみるか」

「知ってる?あれのてっぺんでKissしたカップルは絶対別れないんだって」

「そうなのか」



「Kissしてくれないのは許すから、手くらいつないでよ」

「じゃあさ、海の方に行って話しようか」

「うん。伸ちゃん、もうちょっと優しくしてよ」

「めいっぱい優しくしてるつもりだけどな」



海の見えるベンチに座って僕らは話した。

今の日々の生活のことではなく、20年も前に初めて吉祥寺の居酒屋で会った時のことや、彼女が結婚のために鹿児島に帰った時のこと。


話題が尽きてくるとやがて沈黙がちになり、長い時間会話もなく座り続けた。

せっかく遠くから来てくれたから、手はつないであげた。


君の気持ちはわかっていたけど。

でも、僕じゃなくて幸せになっただろ。



よかったな。これからもずっとお幸せに。