遊びにして、技術の取得
技術だなんて、何やら難しい!それも遊びにして、なんて怪しい!(笑)
そんな雰囲気のタイトルですが…ここでは主に、ボードゲームで使う技術の取得について書いてみたいと思います。それも、小さい子どもたち向けの話です。
子どもとボードゲームで遊ぼうとするときにぶつかる壁
まずは、ボードゲームで遊ぼう!と思われはじめた親御さんの”あるある”、
お悩みトップ3例をあげます。
例1
親御さんが子ども向けのゲームを用意され、説明をして遊び始めると、子どもは自分の番を延々とやり続け、他の人がやろうとすると怒る。交代にやるよ、と説明したのに…。つまり、「ルールを聞けていなかった」「順番やルールを守るという意識の形成が未熟だった」。
例2
数を数えているようだったので数を数えるゲームを始めてみたら、実際には数えることができていなかった。1といいながら一度にコマを2個取ったり、1,2,3と順に数唱するけど数えようとする指と物との数値(や位置)がマッチしていない等の、「数の能力があると思っていたら、実はその形成が未熟だった」。
例3
同じ絵が出たら取れるよ、と説明し、絵合わせのメモリーゲームを遊ぼうとしたら、違う絵であってもカードを取る。やって見せているのに…。つまり「マッチング(色や形や数などの要素に注目した『同じ』という性質)を理解できていなかった」。
これらは、小さな子どもでは容易に起こることです。うちの子はおかしいんじゃないか、大丈夫かしら、小さいと思っていたけどもう学習塾へ行かせないといけないのかしら…などなど、悩むことではありません。
ボードゲームを遊びとして成立させるために
ではどうしたらいいか?
『いきなりゲームとして完成した遊びを追求させるのではなく、まずは必要な"技術"(気持ちのコントロールやゲーム上の基本的な技術など)を遊びながら楽しく取得しよう!』
これです。
ドイツゲームを初めてみる子どもたちの前で箱を開けて見せると、幼い子どもであればあるほど、ルールやどうやって遊ぶのかという理解よりも、そのもの、もっと言うと「ゲームに使う道具を実際に触りたい」に最も興味を持つことは珍しくないのです。
その「触りたい」から満たせる遊びをすることも大切です。なぜなら触りたい気持ちが強すぎ適切にコントロールできないとなると、子ども自身の気持ちや行動がゲームに使う道具を触ることに終始して、ルール説明を聞くことや聞いたことを実行することもままならないからです。
初めてのゲームは、楽しく遊びながら触れていくうちに必要な技術もできる・わかるようになるよ…そういうところから出来るゲームと出会わせてあげればよい、ということなのです。
一例としてはこちらです。
ドイツ・ラベンスバーガー社が長きにわたって作り続けている小さな子供向けゲームの一つ、「クイップス」。
箱に入っている用具は、愛らしい4種類のペグボード、色とりどりのたくさんの木製カラーペグ、色サイコロ、数サイコロ、布のきんちゃく袋です。
技術の習得過程
まずは、ひとつボードを取って、穴にペグをとにかく入れてみましょう。全部の穴に入れられるかな?集中力途切れずに全部埋められるかな?というところからです。
遊ぶうちに次第に、色が合う(同じ)ところに入れたら、絵がとっても綺麗に見えることに気づきます。そうして「色が合う(同じ)」というマッチングを知るのです。4枚のボードをすべて遊びつくすころには、緑が多いボードや赤が多いボードがあることに気づきます。そうして「違いがある」ということを知るのです。違いがあるのは数だということに気づき、数概念への興味へと進んでいきます…。
それら様々な要素について、気づいたことは親御さんなど身近な人に伝えたくなります。伝えることによって、大人が共感を示すことで、一緒に遊んでみよう、交代にやってみよう、ゲームをしてみよう…と発展していくことができるようにもなってきます。
こういったように、子どもたちにとって技術の取得ができた、ということは、知的好奇心が旺盛になり発達が盛んになったために遊びの中で知ることややれることが増えていったということなのです。「もっと遊びたい」「これをこうして遊ぶとうれしい」とどんどん遊ぶことをするだけで、「知的好奇心」がむくむくと湧いてきて育っていく、人と遊ぶということにも興味がわいてゲームを成り立たせることができるようにもなっていく、というわけです。
まさに、「遊びにして、技術の取得」を感じられます。
大人が守るべき、大切なこと
大人が守るべき大切なことは、教え込もうとしないこと。大人がするのは、子どもの遊びを安全に配慮して見守り、子どもの好奇心を後押しすることだけですよ。これが一番、難しいのですけれどね。