遺言相続の話4「遺産分割協議のやり直し?」
遺産分割協議を行うにあたっては、相続人全員の最終的な明確な意思を明言することにあります。
それを、「遺産分割協議書」(※1)と言う形で残します。
これは、相続人間で取り決めた相続財産の分け方について取り決めた合意書です。
故に、その中に、例えば、ある財産をもらうに際して、「高額な祭祀財産を修復維持管理していくこと」とか「残った親の介護などを見ること」などの条件付きであるならば、それを受け継ぐ人は、果たす義務があるわけです、条件付き相続と言う事です。
祭祀財産に支払いなど負債があったとしても、それを相続人全員納得の上であるならば、それは、その後の債務問題についての事です。遺産分割協議書を書いた時点で、協議は成立して、終了しているのです。
しかし、相続後幾年も過ぎると、いろいろの事情から出来なくなることも生じたりしてきます。
それに対して他の相続者から、クレームがきたりすることも当然あるでしょう。
しかも、協議書の条件通りできていない(債務不履行)からと言って、「それを元通りに戻せ」とか、「分割協議をやり直せ」と言う事は出来ません。
協議書通りにやらないからと言って、もう一度やり直すことは、たとえ法律が変わったことがあっても「法律不遡及の原則」もさることながら、民法909条の条文を逸脱することになります。
909条(遺産の分割の効力)
「遺産の分割は、相続開始の時に遡ってその効力を生じる。~」
この遺産分割協議書で決めたことは、相続人間における私法上の合意なので、法律上での執行力はありません。
今後、他の相続人が出来ることは、「協議書通りに(債務・取り決めた事を)やってくれ(履行せよ)」と言う事だけです。
< 但し、遺産分割協議において、詐欺や錯誤・脅迫、利益相反行為・不十分な協議、相続人の除外、また、相続人ではない人の参加や重要な遺産が漏れていたなどがあった場合には、遺産分割協議の無効確認請求訴訟を起こせるのです。
また、全員合意による協議(書)の解除と言うものがありますが、それは許されると言われます。=合意解除➡通常の常識範疇と考えても同じです。
つまり、10人相続人が居れば、10人全員が、相続のやり直しを合意の上でやる事はできると言う事ですが、10人全員がまたやり直しましょうと合意などするはずがありません。
しかし、もし、上記の理由で、無効が成立すると、一旦取り決めをしてからやった遺産分割での不動産の登記や預貯金などの現状に戻すことになれば面倒で相当難しい問題が出てくることになることは誰が考えても明白な事です。>
※1遺産分割協議書と言う正式な書類があるのではなく、多くは、A4の紙に、協議で取り決めた相続財産と相続人全員の取り決め事項や署名押印がなされた書類です。各相続人の自筆署名と実印の押印及び印鑑登録書が必要であり、その書類は、相続人全員の人数分が必要です。簡単にいえば、10人相続人が居れば10枚必要と言う事です。
しかし、財産の種類や量が多ければ多いほど、そして相続人が多ければ多いほど、たくさんの書類が必要になると言う事です。