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ZIG の 秘密基地

妄想かリアルか紙一重でせつない

2019.09.14 09:58

LINEもブロックしたしスマホの電話番号も変えたし引越し先も知らせていなかったのに、見覚えのある番号から着信が入っていて留守番電話にも伝言が残っている。


7年前に高校生の息子二人と僕を残していなくなったSだ。SpecialのSだ。

僕は息子二人が高校と大学を卒業するまで一人で育てた。

ひたすら働いて働いて食べさせ学費を払い、二人が独り立ちした日から先は自由に誰にも邪魔されず第二の人生を謳歌するということだけを想い描いて生きてきた。


今週の日曜日にはクラス会があるし、病院にも行かなきゃいけない。

何故今日なんだ。何故このタイミングなんだよ。相変わらず空気を読めないな、お前は。


「なに?」

「ごめん久しぶり」

「何故この番号がわかった?」

「K(次男)に無理やり聞いたの」

「何の用だよ」

「ハンコ押して欲しいの」

「何でも押すからもう二度と連絡しないでくれないか」

「名字は変えたくないの」

「好きにしてくれ。自分のお願いを言う前に何か一言ないのか?」

「なによ」

「人として何か言うべきことがあるだろ」

「今さらなに」

「今後はあいつら二人には連絡するな」

「わかってる」

「書類は全部おまえが用意しろ。サインするしハンコでもなんでも押してやる」

「これから俺は自由に生きるから絶対邪魔しないでくれ。再婚はしないよこんな歳だしな」


会話の内容は正直はっきり覚えていない。

悲しさなんか微塵もない。笑いを堪えるのが精一杯だ。なんだこの茶番は。



「姫、ハンコ押して来たよ」

「大変だったね。お兄ちゃんの気持ち考えたら、すごく悲しいよ。なんか複雑な気分」

「長い人生でな、僕がいかに女性を見る目がなかったかわかるだろ」

「あの人もあの人もあの人も、お兄ちゃん全然うまくいかないね。不器用ってことかな?」

「僕の性格を知って、みんな離れていくんだろ」

「私は大丈夫だよ、お兄ちゃん」

「人生の最後の最後に君に出会えた。奇跡だな」


「私があなたの守護神になるから。長い間ご苦労さまでした。疲れたでしょ。もう大丈夫だからね」