【小説】枕営業パロ/除れつ
プチ小説です。除憂→→れつ。除憂くんが嫉妬しちゃうお話。
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「なん……や、これ……」
「……ぁ」
息が詰まる。……しまった、よりによって彼に、高階さんに見られてしまった。首に出来た痣を。
くっきりと残された、誰かの手形。青黒く変色したそれを映えさせている俺は、まさしく男娼としてあるまじき姿だった。
目の前が真っ暗になる。
「高階さ、ちが、違うんです」
「違うって、何が? 違うも何も、この目で見たまんまやん」
「それは……」
返せる言葉は何一つ無かった。
……当たり前だ、自分でもわかっている。違うもクソもないということは。
言い逃れのために出た中途半端な言葉が、容赦なく俺の逃げ道を塞いでいった。
「れつ」
「……」
震える唇をきつく結んで、なんとか堪える。とにかく今は謝らないと。相手はお金を払ってまでここに来てくださったお客様なのに、まさか気分を台無しにしてしまうだなんて、そんなこと。申し訳ないにも程がある。
(……それに)
それに、俺に出来るのはきっと……これくらいしかない。
そう決心して、改めて彼に向き直る。トントンと一定のリズムを刻む彼の指先に、行き場のない視線を落としながら。
「……ごめん、なさい……。本当に……ごめんなさい。俺、こんな姿じゃ……やっぱり気持ち悪」
「………誰」
「え」
「誰がやったん、これ」
次の瞬間、乾いた音を立てて視界が反転した。気付いた時には、すぐ目の前に眉間にシワを深く寄せた高階さんの顔があった。
何かを問うように向けられる、真っ直ぐな眼差し。目を逸らしたいのに逸らすことが出来ない。
俺の罪悪感が、そうさせてくれない。
「高階さん、」
「ダメ。やめてーとか、そういうのは絶対聞かへんから。……で、誰? 誰がやったん? 何がお前をこうさせたわけ?」
「あっ……」
首に触られる。高階さんの、指。俺に残された痕を、三本の指がじっとりと撫でる。まるでこの状況から逃がさないと言わんばかりに。
……だけど、俺は。
「……っ、ごめ、なさ……」
ーー彼よりも、『掟』を守らなければいけなかった。
「……喋る気ィ無しか」
チッ、と大きな舌打ちが降り注ぐ。俺はそれを静かに受け入れた。
これが俺の、オシゴトだから。
「……ごめんなさい、高階さん」
「別に。どーせ喋ったらあかんとか言われてんねやろ? 例えば、『前の客にヤられた内容』とか」
「ーー!」
ハッ、と息を呑む。心臓がひとつ大きく跳ね上がった。
ーー俺はそれを、どうやら隠しきれなかったらしい。
「……当たりか? なァ、れつ」
「あ……ち、ちが」
「だから、その違うやめーや」
何も違わないくせに、と低く掠れた声でそう言葉を残して、俺は彼に息を奪われた。