ロックンロールの体現者、プライマルスクリームの名盤
プライマルスクリームを語る時、まるでロックンロールの歴史を語る気分になってしまう。90年代、洋楽に夢中になった世代は、プライマルスクリームの名を知らない人はいないだろう。しかしここ最近は、知名度が落ちているような気もしないでもない。
私にとって、UKロックといえば、オアシスでもブラーでも、ゴールドプレイでもなく、圧倒的にプライマルスクリームだ。
ボビーギレスピーこそが私のロックヒーローであり、90年代を主張するロックアイコンであると思う。
では、彼らの音楽はどのようなものか、と問われると、ファンのかたはご存知のように、彼らの音楽性はコロコロと変わり、一言で言えない。しかしどのアルバムにもベーシックにはロックンロールがあり、またそれをフォーマットに果敢な音楽的実験を繰り返すことがまさに逆説的だが、ロックだ。
ファーストアルバムではネオアコバンドで、セカンドアルバムでパンクバンドになり、サードアルバムでセカンドオブサマーを象徴するクラブミュージックを作る。
4thアルバムで、アメリカ南部のソウルミュージックを素材としたロックアルバムを作り、5thアルバムでダブミュージックにインスピレーションを受け、6thアルバムでバキバキのデジロックミュージックを作る。
最早、なんのことかわからないが、このように彼らの音楽スタイルは変化していっているが、これが不思議なもので、全ての曲をプレイリストに入れ、シャッフルしてみても、そこまで違和感がない。
おそらくロックのベーシックなコード進行やボビーのヴォーカルがその統一感を保たさせいるだろう。
ちなみにここ最近は、ハッピーマンデースのようなアルバムを発表をした。音楽は旅である。作品ごとに過去に行ったり、未来に行ったり、そんな経験ができるのは、彼らならではのオリジナリティである。
ここでは、数枚の彼らの名盤を紹介する
1.スクリーマデリカ
90年代初期の最重要アルバムのひとつであり、ロックとダンスの奇跡な融合を果たした一枚。今聴くと、当然音の薄さにびっくりきてしまうが、そらを差っ引いてもとにかく曲の良さやアルバムの構成が素晴らしい。歴史を変えた名盤。
2.Give Out But Don't Give Up
スクリーマデリカの発表ののちに発表された4thアルバム。彼の最大のヒット曲がロックスが収録されているが、魅力はそれだけではない。しかしそれにしても、当時ではメデイアではあまり良い評価を受けてはいなかったが、今、聴くとめちゃくちゃカッコいいロックンロールアルバムだ。とにかくストーンズのようにブルース、ソウルを解釈してセッションしまくった本作は、ロックンロールの名盤と位置付けられる。また最近になって、この4thアルバムも再評価されてきているようだ。このあたりもローリングストーンズの「メインストリートのならず者」のようだ。
3.エクスターミネーター
エクスターミネーターという見るからに、攻撃的なこのアルバムタイトル通り、バキバキのデジロックの6thアルバム。前作がダブミュージックでダウナー満載のアルバムだったのが、いっきにアッパーモードに変更されたアルバム。アッパーといっても、非常に攻撃的なアッパーなのだが。
しかしながら、今でも彼のライブでは欠かせないスワスティカアイズなど、とにかく曲の完成度は高い。
4.Riot City Blues
彼らが始めて60年代ロックと向き合った名盤。知らない人が聞くと、本当に70年代前半のインディーズバンドのように聞こえるかもしれない。ボビーの原点を辿るかのようなメロディーと演奏が冴える作品だ。
カオスモシス
現段階での最新作がこの作品。とにかくひたすらポップ。そしてがっつりハッピーマンデースのオマージュをしている。しかしロックを突き詰め続け、またこのポップモードになるのがプライマルらしいといえばらしい。おそらく全作品のなかで一番聞きやすいだろう。
プライマルスクリームは、リスナーによって大きく評価が別れるアーティストだ。私が紹介したもの以外の作品も、ある人にとっては傑作だったりする。
しかしそんな様々な評価を受けながらも多様なスタイルを駆使して、なおも活動し続けるのがプライマルスクリーム自身、ボビーキレスピー自身だ。
これからも彼らの作品を楽しんでいきたい。