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あしたのパン焼きさん

紙片の数字(アンティーク恋噺2-2)

2019.09.17 12:41

先ほどの続きの話です。

紙片の数字

2-2

ある日曜日、礼拝を終えた人々が出口に押し寄せてくるのを見ながらジェームズは、ポケットにあるマーガレット用のホーリーカードのことを考えていた。


裏に何かメッセージでも書いておけば、何か話さなくても彼女と距離を縮められるのではないか?何て書いたら良いのだろう。ふと顔を上げると、同じクラスのビクターの姿が少し離れたところにあるのが見えた。


 ビクターは容姿のいい男で、上背があった。先月、こんな田舎町に珍しくやって来た転校生で、父親が何かのセールスの仕事でこの町に来たらしい。鼻筋の通った小さな顔はくるくると快活に表情を変え、見飽きることはなく、同じ14才とは思えないくらい洗練された物腰の持ち主だった。


 そのビクターが、何やらキョロキョロと周囲を見回していた。そして、マーガレットの姿を人込みに見つけると、迷いのない歩き方で近づいていく。

(マーガレットに何の用なんだ?!)

 ジェームズはホーリーカードを渡す手を止めずに、目だけはビクターを追っていた。


マーガレットに何かを渡し、二言三言告げるとビクターはさっさと礼拝堂を後にしたようだ。一方のマーガレットはというと、今日はエミリーの姿はなく一人、ビクターの後ろ姿を身じろぎもせずに見送っている。


(ビクターはマーガレットに何を言ったんだ?!)

 最後の一枚を渡し終えると、ジェームズは急いで帰り道を一人で歩くマーガレットを追いかけた。「別に」以外に何も話したことがないのに、ほぼ勢いで彼女に詰め寄った。


「マ、マーガレット!」

 黙って顔を上げたマーガレットの顔には、怪訝な色が浮かんでいた。ジェームズは息が上がったまま言った。

「今日は、カードはいいの?」

急にマーガレットの顔がほころんだ。光が差したようにジェームズには見えた。

「欲しいわ」

「それ、さっきビクターが渡したのか?」「え?」


ジェームズは体中の血が一気に逆流したような気がした。即座にマーガレットからカードをむしり取ると、裏面を見た。「今日5時に雑貨屋の裏で」。

(なんのつもりだ、ビクター)

ジェームズはホーリーカードをマーガレットに返すと、そのまま駆け出した。

(2-3へ続く)