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A recollection with you

少しずつ、雨編

2016.04.06 14:36

「祐月さんって、本当に苦手ですよね」

「それはなあ。強くはなれないって」

「雨でも、ちゃんとしてください~」

「ううむ…」


あたしが出会ったときからずっとそうだけど、祐月さんは雨が苦手な人。湿気がダメだって言うけど、誰だって大変だよ。

髪の毛整えたり、調子崩さないようにしたり。本当のところをいつか聴きたい。


カランカラン


「いらっしゃいませ♪

 お好きな席にどうぞ」

『何にしようかなあ。

 桜のチーズケーキをひとつ。あとブレンドで』

「かしこまりました♪」


コーヒーは祐月さんが淹れて、ケーキはあたしの役目。果物を盛りつけて、飾りつけに桜の形の砂糖菓子添えた。


「お待たせしました、ブレンドと桜のチーズケーキです。

 お花は砂糖菓子なので、召し上がれます。ごゆっくりしてくださいね」


そう言うと、女の人は、あたしに軽く会釈をした。カウンターに戻る。


「あの女の人、雨が降る日に来るんだ。席は決まって奥のテーブル席」

「待ち合わせ、でもないんですよね?」

「うん。いつもひとりで」

「…あれ?」


カランカラン


「いらっしゃいませ♪」

「いらっしゃい」

〈えっと、待ち合わせで…。あ、あの奥の〉

「分かりました、どうぞ~」


珍しく待ち合わせだったみたい。

でも、少し雰囲気が違うような。


〈綾音、久しぶり〉

『うん、久しぶり』

〈元気だった?〉

『うん、私は。掛(かける)は?』

〈俺も元気でやってたよ。寂しかったけどね〉

『そんなのウソ』

〈嘘じゃないよ。綾音、俺、帰ってくることになった〉

『えっ…?またウソ』

〈ホントだって〉

『…そっか』

〈?〉

『…そっか。おかえり』

〈…うん、ただいま〉


あやねさん、は泣いていた。

きっと、たくさん我慢してたんだろうな。雨に流さなくて良かったな。ちゃんと泣けて良かったな。そう思った。


そうしてふと、祐月さんって、泣くのかな。見たことないなって、気づいた。