自分が変わると周りも変わるということを教えてくれたある転校生の物語
これは、先日お会いしたとある公立中学校の先生から聞いた、昔の生徒のお話です。
その生徒は、中学2年生。転校生として、夏休み明けにその中学校へとやってきました。
先生のその子に対する最初の印象は、「静かで控えめだが、いい子」。
ただ、クラスに入ってみると、静かで控えめすぎて、なかなか周りと馴染めませんでした。
そのクラスは雰囲気がとっても良いクラスで、周りの生徒達も積極的に挨拶をしたり話しかけたりしていたのですが、質問されても「うん」「ううん」で会話が止まってしまったり、ずっと下を向いていたり、その子が自分から話しかけることはないといった様子でした。
ある日、その子は学校に来なくなります。
最初は体調不良という理由でしたが、心配になった先生がお母様に話を聞くと、やはり「友だちができなくて学校へ行きづらいということが原因なんじゃないか」ということでした。
「どうしてあげたらいいんだろう…」そう悩んでいた先生でしたが、そこへたまたまクラスの女子がやってきて、ふとこんなことを言ったそうです。
「先生、○○(転校生)くん、今日もお休み?この前ね、挨拶したら、ちっちゃく頷いてくれたの!次来たら、挨拶返してもらうのが目標!体調不良、心配だねー」
先生はすぐさま彼のもとへ向かいました。
まずは改めて話をじっくり聞きました。クラスではなかなか人と目が合わせられませんが、先生とは目が合い会話ができるようで、彼の中にも「みんなと仲良くしたい」という気持ちが強くあることがわかり、先生は少し安心しました。
その先生自身もあとからお母様に聞いた話ですが、その夜、その子は「先生が来てくれた!」と嬉しそうに話していたそうです。
次の日、先生は意を決して彼にこう言いました。「仲良くなりたいっていう気持ちはあるんだよね?」
彼は、頷きました。
「なら、変わらなくちゃ。話しかけられたら、その人の方を向く。質問されたら、同じ質問でいいから返してみる。まずはそこからやってみない?」
彼は、もう一度頷きました。
次の日の朝、テキパキ学校へ行く準備をする彼がいました。お母様は少し心配になりながらも、「行ってらっしゃい」と彼を送り出しました。
彼が学校へ着くと、早速校門でクラスメイトから「おはよう」と声をかけられました。彼は、顔を上げて、「おはよう」と返しました。
休み時間中も、話しかけてくれる子の方を身体ごと向いて、相槌を打ちました。不器用ながらも、頑張っている様子が伺えました。
質問もできました。「兄弟は?」の質問に答えながら、「兄弟は?」と訊くことができて、会話が生まれました。
挨拶をした子たちも、「先生!今日挨拶返してくれた!」と嬉しそうでした。
でも、一番嬉しそうだったのは、彼です。
家に帰ると、心配していたお母さんに、満面の笑みで、
「学校、楽しかった!」
そう伝えたそうです。
その先生の話上手なところもあって、話を聞きながら、僕は泣いてしまいました。
子どもたちの優しさ。大人の働きかけ。そして、本人の頑張り。そのすべてに感動しました。
うんうん、最初の一歩を踏み出すって、なかなか難しいんだよね。
そんな時は誰かの助けを借りてもいいんだよね。
だけど、やっぱり踏み出すのは自分自身だから、やっぱりどこかで勝負しなくちゃならない。
こういう勝負ってさ、誰もにあるんだよね。
そんな勝負をする子どもたちに、ちょうどいい距離感で、応援をしてあげられる大人でいたいなと、あらためて強く思わせてくれた素敵な物語でした。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
人ってさ、変わっていけるよね。