ポジション移動(縮地法)
ピアノのポジション移動って?と思う方もいるかも知れません。
私は、ピアノのポジション移動として確立された理論を習ったことがありません。ピアノの世界では、細かいテクニックに名前を付けて理論化してないことがまだ多いと思います。
ネットを検索してみるとポジション移動に説明している記事があります。
ポジション移動の方法にはいくつか種類があります。
1.指くぐり
2.指またぎ
3.跳躍
4.指広げ
この項では3の跳躍について説明します。
ただし私の考えるレガート奏法では、この跳躍という動作は、ほとんど行いません。
縮地法。これは何でしょうか?
ピアノのテクニックにはこういう言葉はありません。
これは古武術で出てくる歩法のことです。私も初めて知ったのはジャンプの連載で「るろうに剣心」を読んだ時です。
また同じころだったか古武術の甲野善紀氏がテレビで活躍された時期がありました。古武術の一見変わった動きになるほどと思い甲野氏の著作も何冊か読んでいます。
その中に自分の手に手を乗せてもらい乗せた相手の手を叩きに行くという動作があります。
普通は、
1.乗せられた手を横に移動
2.手を上に上げる
3.相手の手を叩く
という3段階の動作を行います。
この動きだと大抵の人は相手に逃げられてしまい空振りするになります。
ところが甲野氏がやると見事に相手の手を叩きます。
甲野氏は自分の手の下にある手を叩きにいくかのように叩く、と説明しています。
手と腕が一体のままだとどうしても3段階の動作で動かさざるを得ません。ところが割体(アイソレーション)といって肩、肘、腕、手首などをバラバラに同時に動かすことで普通3段階の動作で叩きに行くのを2段階にして叩くことで相手に逃げられず叩くことが出来るのです。
つまり1の動作で手を横に移動させながら肩、肘で腕を上げる動作を同時進行させ2で叩くということです。
ピアノの跳躍は、
1.鍵盤から手を放す
2.腕を次のポジションに移動させる
3.次の音を弾く
です。
レガート奏法では、どんなに離れた鍵盤でもとなりにある鍵盤を弾くようにタッチするということです。上からではなく下から鍵盤をタッチするような感覚です。
1.肩を少し上げ脇を開ける
2.肘を外(右側)に構える
3.手首が外側に傾く
4.指が鍵盤に対して右斜めに傾く
5.肩、肘を元の状態にすることで手を飛ばします
内側に移動させるときは、これと反対の動作を行います。
5のぎりぎりのとこまで鍵盤は、押したままの状態を保ちます。この時、となりの鍵盤に指をかけておくのではなく指は斜めになりますが音を保持できる最低限の力を残して音を保持するのです。
肩や肘はこの力以上に移動させません。
こうすると腕にかかる重力を最大限利用して次の音をタッチすることできます。
私はよくこの状態を水に濡らしたモップを移動させるかのようにと考えています。水に濡れたモップを移動させようとするとき柄を使って移動します。この時モップより力が軽ければモップは動きません。ところが瞬時にモップの重さ以上の力を掛けるとモップは移動します。最初に掛ける力以外は抜いてしまうとモップは自分の重みで落下、着地します。
この動きを連続させるとあたかも手が鍵盤に吸い付くかのような状態になります。
伸ばしたゴムを戻すことで一瞬で次の鍵盤にタッチする、前の鍵盤が上がりきる前に次の音をタッチするイメージです。
鍵盤をタッチするときに次の音をイメージして肩と肘、手首がすでに移動を始めます。下にタッチする力のベクトルと横に移動するベクトルが同時に出るということです。
今弾いている音の最中に次の用意がされているので移動がとても速いのです。
この動きを連続して上から見ると横に腕が波を打っているかのようになると思います。
ショパンのバラード、舟歌、ドビュッシーの水の反映、その他作品のように和音で音がかなり飛んでいるのにレガートが掛かっている曲は、このテクニックを使うと滑らかに弾くことができます。
オクターブのレガート、音域の広いアルペジオ、色んな曲面で応用することが可能です。