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徒然piano

幻想曲 D940

2019.09.28 01:30

 シューベルトの曲で、思い浮かべる曲はどんな曲ですか?

 軍隊行進曲 セレナーデ 楽興の時 即興曲 魔王 アベマリア ます・・・

 テレビなどのBGMでなんとなく聴いたことあるこれらの曲はみんなシューベルトが作曲しました。

 シューベルトについては、こちら「31才の生涯」からも。

 

 今日は、その最晩年、亡くなる年に作曲した連弾曲3曲のうちのひとつ「幻想曲」です。

 この曲を知ったのは実は、とりあえず人生のいろいろを経験した十分大人になった頃でして、そんな歳まで知ることなく、この曲にめぐり会える機会がなかったことで、まるで宝物を見つけたような気持ちでした。

 シューベルトにこんな曲があったのか!って。

 だから、今もまだまだ出会っていない素敵な曲があるかもしれない・・と思ってしまいます。

 「幻想曲D940」を聴くと、まず冒頭で、胸がくぅっと言うか、ぎゅぅぅっと締め付けられるような旋律が表れます。

 シューベルトの曲には、いつでも切ないような歌があるのが特徴です。そんなに複雑ではないのに、歌詞のないこのメロディだけで感情が訴えてくるような旋律なのです。

 こちらは、↓ 現在もオーストリアの図書館に保存されているシューベルトの自筆譜

幻想曲の最終ページです。(左がセコンド〔低音部〕、右がプリモ〔高音部〕)

自筆譜というのは、想像が膨らみますね。

1828年4月の記載があるそうです。

 ちなみに前記事の「人生の嵐D947」は、1828年5月。もうひとつ晩年の連弾曲「ロンドD951」は1828年6月作曲の記載があり、ひと月に一曲連弾曲を書いていました。

 さらには、「3つのピアノ曲」を5月に、「白鳥の歌」を8月頃に完成させ、亡くなる2ヶ月前の9月には、3つの最後のピアノソナタを一気に作曲します。

 

 最期の年に作曲されたという付加価値を差し引いても、特に連弾曲、ピアノソナタの21番などは、傑作だと思います。

 ましてや、晩年とはいえ、まだ31歳。

 もっと年齢を重ねていったら、どんな作品を残してくれたのかを考えてしまう作曲家です。

 

 話を戻して・・。

この曲は、当時恋心を抱いていた、伯爵令嬢のカロリーネに捧げられています。

だいたい18分程度。結構長く、全体で4つの部分に分けられる構成になっています。

Kissin(P) & Levine(S) 

連弾曲は1台に2人並んで演奏することですが、この2人は2台ピアノで弾いています

↓こんなふうに

  

 まるで恋文のように切ない旋律で始まり、安らぎと葛藤を繰り返しながら、不安な気持ちを抱きつつもつかの間の高揚感を経て、最初のテーマに戻ったかと思うと突然のフーガのように、メロディが折り重なって表れます(ここからがまた最高!)。

 最後には運命を悟ったかのように終わる。

 あくまでも、わたしの主観です。


 この曲、遡ると前にも書いていましたね。⇒「好きなピアニスト3」

 大好きな曲だけに、最初の旋律の歌わせ方が好きな演奏とそうでない演奏がはっきりしてしまいます。

 ユッセン兄弟とキーシン&レヴァインの演奏は、少し違いますがどちらの表現も好き。

 この2組を行ったりきたりしながら聴いています。

 

 たくさんの作曲家がいて、曲にはそれぞれの人格からくるであろう特徴があってそれを勉強するのは本当に面白く感じたり、すごいなぁと尊敬したり・・。

 その中でもシューベルトの曲に戻ると、ホッとした気持ちになったり、身近に感じたり、心に響いてくるのは、やっぱりこのシューベルトならではの歌心なのかな、と思うのです。