春の嵐17-マキャベリ「君主論」を執筆
2019.09.20 02:08
さてフィレンツェを放り出されたマキャベリ43歳は、仕方なく別荘に住んで農業のかたわら、夜には勉学にいそしむ。彼は新たにフィレンツェを支配したメディチ家に仕官を志し、そのために書かれたのが有名な「君主論」であり、1516年にフィレンツェ君主となった小ロレンツォに捧げられている。
この書は、「物事について想像の世界のことより、生々しい事実を追うほうがふさわしい」と書かれているように、主にイタリアの現実からのリアルな教訓を記した書である。「何事につけても善い行いをすると広言する人間は、よからぬ多数の人々の中で破滅せざるをえない」。
この言葉は理想を掲げたルネサンス思想への批判である。時代の基調が変わったのである。マキャベリもエラスムスも、ルターも同じ現実を見ている。マキャベリはそして「自分の身を守ろうとする君主は、よくない人間にもなれることを習い覚える必要がある」と記するのである。
ただ彼は、勝つために何をしてもよい「マキャベリズム」という悪名を立てられたが、これは誹謗である。どちらかというと、プラグマティズム=実用主義に近い。「同郷の市民を虐殺し、仲間を裏切り、信義や慈悲心や宗教心も持ち合わせない事柄を、君主の徳と呼ぶことはできない」とも書かれている。しかし実際欧州で統一的権威が崩壊すれば何でもありになる。