函館の夜景
今日、帰宅したら嬉しい「お便り」が届いていました。
差出人はもう、ん〜十年も前からお世話になってきたPit Inn Musicの菊地さんでした。
Pit Innは日本のジャズ・クラブの「老舗」と呼ばれて久しい「名門」クラブです。わたしはずっとそう信じてきました。今も昔も、ここはジャズマンにとっていわゆる「登竜門」です。
Pit Innのステージに立つことは、ギャラとは関係のない大きな意味がある。そう断言したミュージシャンを何人も知っていますし、聴く側のわたしも、無意識のうちにここで演奏する方々にはわりと容赦ないスタンスで対峙してしまいます。そういう厳しさと、何ともクールで辛口のジョークの応酬が同居しているのが、Pit Innが東京一楽しいところだった所以です。ここで夜な夜な繰り広げられる音楽的「プチ祭り」みたいなものに耽溺していた時期がせいました。いや~、ちょっと大袈裟だなあ。要するに、ちょくちょくPit Innに音楽を聴きに行ってました、ってだけなんだけど。
そのころから菊地さんは素敵な「兄貴分」として、常連客からもスタッフからも慕われてました。わたしにとってはスキーの師匠だったし。甘ったれお嬢ちゃん根性をずいぶん鍛えてもらいました。菊地さんはステージに立つだけでなくPAも担当されてました。恐ろしいほど耳が良くて、「良い」とおっしゃるものは間違いなく「良い」、それが定説でした。
(それは音楽だけに限らないのだけれど。)
北海道出身の菊地さんが、出身校の函館ラ・サール高校の恩師を中心に、出身を同じくするミュージシャンたちと作ったアルバムです。封筒から出てきたのは、これでした。わたしは郵便受けから取り出してから家に入るまで待てなくて、エレベータの中で開封すると、ドアを開けるとすぐに愛用するBOSEのWave Systemに直行。
サックスとフルート奏者としての菊地さんの演奏はずいぶん聴いてきたけれど、そうか、そういや
菊地さんの演奏を収録したCDっていうのは持っていなかったかもしれない。
「幻のジャズマン」などと言う人がいるのも無理ないかもしれないけど、大丈夫、少なくとも
幻じゃないことは録音したものが少なかろうと、記憶にしっかり刻んでる人はものすごく多いから。
わたしは評論家じゃないし、なれないし、なりたくもないから、うまく表現できないのだけれど、どの曲にも角がなくて丸みのあるような気がします。最近はエッジを研ぎすましたタイプの音楽がもてはやされがちですが、その対極にあるような。その丸みが優しくて、仕事のあとの今夜のような時間にはぴったりきます。
函館のこの夜景が菊地さんやお仲間の方々の「心の原風景」なのだろうなあ。
御殿場から眺める富士山がわたしにとってそうであるように。
ルーツを同じくする友と作品を作り上げ、こんな美しいジャケットで包んで残せるなんて、
うらやましい限りです。
今夜はこのジャケットの夜景を眺めつつ、アコースティックなジャズに浸って過ごしてます。
それにしても。
菊地さん、今年「還暦」って、まぢですか〜〜〜〜!!