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玲子のカルペディエム

教わったこと

2012.04.05 01:16

先週末、また戸田公園に行きました。


ハナミズキの季節になりました。そろそろサツキやツツジも見頃です。


この日の練習場は大にぎわい。
ずいぶん長いこと、たくさんのレガッタを眺めていました。見慣れてくると、やっぱりエイトが面白い。呼吸の合いっぷりの気持ち良さと、他にはないパワーとスピードには惚れ惚れします。それから、大宮北高校のカヤックも面白かった。先輩の見事な安定感たっぷりの漕ぎっぷりと、転覆の連続の新入部員が対照的で。転覆しても転覆してもボートを起こし、水を出し、よじのぼり、オールを手にする。偉いな、頑張って、と心の中で声をかけながらずっと見ていました。

もちろん、愛犬のみんみんと一緒です。



一橋大の合宿所の前で、笠谷さんという青年ともうひとり、和歌山在住とおっしゃった青年のおふたりから、ボートについていろいろ教えていただきました。レジャー用のいわゆる船の形をした手漕ぎボートは「ナックル・ボート」と呼ぶそうです。それに対し、漕ぎ手がコックピットのようになっている船体にもぐり込む形の競技用のボートは「シェル・ボート」。もちろん、船体がモノコックというか、一体のシェルで包まれているからです。軽くてスピードが出るものの安定感がない。だから、練習して技術を磨き、やがてボートと人がひとつになる感覚を楽しむ。どうやらそこには麻薬的な魅力があるらしく、「漕ぎたい」と体が欲するようになるのだそうです。社会人になってもなお、飲み会の誘いを断って仕事のあとに漕ぎに来る。戸田公園にはそうした「病」に取り漬かれたアスリートたちがいっぱい集まっています。ここはスポーツマンたちが発するポジティブな波動に満ちているから、歩いていても気持ちが良いのです。

5月19日と20日の全日本大会は、ぜひ笠谷さんやお友だちの応援に来ようと心を決めました。

この日はもうひとつ素敵な出会いがあり、その方から大事なことを教わりました。


荒川の土手で出会っためぐちゃん。

めぐちゃんは素晴らしい犬でした。
飼い主さんとお話をしているあいだ、そっと私のそばへ来て、温かいからだをぴたっと寄せてじっとしていました。顔を向けると、口角が上がって、笑っているような顔になります。誰もが「可愛い!」と言って撫でてあげたくなります。おとなしくて従順。飼い主さんは男性でした。お話を伺うと、犬との付き合い方にしっかりしたポリシーをお持ちだということがわかりました。遠くにいても、声をかけるだけで指示に従う。一回指示を出すと、「よし」と言うまでずっと従いつづける。声だけでなく、ジェスチャーだけでも指示を理解する。見事でした。

ところが、このめぐちゃんは捨て犬だったのだそうです。それをここまで仕込んだのは本当に素晴らしいことです。しかも、めぐちゃんは老人ホームに慰問に行くセラピードッグだそうですから、ただの「おとなしい犬」ではなかったのです。人と暮らす犬は、こうあるべきだ。めぐちゃんを見て、つくづくそう思いました。

「人がまず、いちばんでなくてはならない」

飼い主さんから、そう教わりました。犬は可愛い。でも愛玩するだけでは、人が犬に翻弄されてしまう。それはグループで暮らす本能を持つ犬にとって不幸なことなのです。犬は強いリーダーに従って安心して暮らしたいのです。だから、人はリーダーとして振る舞わなくてはならない。犬はリーダーに従っていれば幸せなのです。

毎日留守番させている9時間半、決して排尿をしようとしないみんみんを見て、とても辛い気持ちになっていました。その悩みを打ち明けると、めぐちゃんの飼い主さんから「いいじゃないですか。素晴らしいじゃないですか。リーダーがいないあいだはしてはいけないと思っている。いいんですよ、それで。成犬は1日2回の排泄でも平気です」と教えられ、気持ちが楽になりました。膀胱炎になりはしないかと案じていましたが、それは人間の尺度でした。


人に寄り添う犬。
美しいと思いました。犬を飼うなら、こうありたいものです。