「宇田川源流」 「風雲急を告げる」ように見えるイラン情勢でもふたを開けてみれば意外と余裕があるという内容
「宇田川源流」 「風雲急を告げる」ように見えるイラン情勢でもふたを開けてみれば意外と余裕があるという内容
イラン情勢がかなり悪化しているように見える。
この「見える」というのは、どうも日本のマスコミはそのように一斉に報じているということになる。二週間くらい前の新聞などを読んでいると、今にもイランとアメリカが戦争をするかのような話になっており、まあ、現実ということを全く無視した憶測報道があまりにも多いということがなかなか面白い。
さて、このイラン情勢に関しては、トランプ危機起源説、つまり「核合意があるにもかかわらず、トランプ大統領が一方的におかしな方向にもっていった」という考え方と、もう一つの考え方で、オバマ危機起源説、つまり「オバマ大統領が、当初から欠陥のあるまま核合意をしてしまい、自分の大統領としての功績だけを広めたために、アメリカやほかの国が不安定な状況に置かれ、その是正のためには仕方がない行為であった」というものがある。
いずれにせよ、イランとアメリカの関係は「表面的な融和ムード」から悪化していると考えられる。しかし、実際はどうであろうか。アメリカ側は、対イラン強硬派のボルトン大統領補佐官を解任し、またそのほかでも「言葉では最も強い制裁」といっているが、実際はこのような感じにしかなっていないという状態なのである。
米がイラン国立銀行に制裁
【ワシントン時事】米政府は20日、新たにイラン中央銀行に対する制裁措置を発表した。米国が「外国テロ組織」と見なすイランの革命防衛隊とその精鋭組織「コッズ部隊」などの資金調達に関与したことが制裁理由。サウジアラビアの石油関連施設攻撃を受け、米国やサウジが関与を主張するイランへの圧力をさらに強化した。
制裁により、米国内にある資産が凍結され、米国人との取引が原則禁じられる。トランプ大統領は同日、ホワイトハウスで開かれたモリソン・オーストラリア首相との会談冒頭、「これまでで最大の制裁だ」と強調した。 【時事通信社】
2019年09月21日 01時06分 時事通信
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-411552/
米軍、湾岸地域に増派へ サウジ石油施設攻撃受け
【AFP=時事】マーク・エスパー米国防長官は20日、サウジアラビアの石油関連施設への攻撃を受け、サウジとアラブ首長国連邦からの要請に基づき、ペルシャ湾地域に米軍を増派すると発表した。サウジはこの攻撃にイランが関与したと主張している。
エスパー長官は、増援は対空・ミサイル防衛を主とする防衛的な性格のものだと述べた。
ジョセフ・ダンフォード統合参謀本部議長によると、増派は湾岸地域への「適度な配備」の一環として行われ、増援部隊の具体的な規模や装備の種類は今後決定するが、派遣人員は「数千人」を超えない程度だとという。 【翻訳編集】AFPBB News
AFPBB News2019年09月21日09時21分
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/afpbb/world/afpbb-3245618
すでに経済制裁を行っている国に対して、今さらイラン国立銀行への制裁を行っても、あまり大きな違いはない。実際に、「取引」が存在しない状態で銀行に金を振り込むということは基本的には存在しない。つまり取引のない状態で、銀行を封鎖しても追加制裁の意味を持たないのである。同じことを会社で例にとれば、ある会社と取引を停止した場合、その会社の取引銀行の口座を封鎖しても、またはその口座を解約したとしても実際には、取引自体がなく、その決済も行われていないので、他の会社との取引がない場合は、何の意味もないということになる。
このことをもって「これまで最大の制裁」といっているのだ。これをもってトランプ大統領が無能とか、全くわかっていないというのではなく、実際はトランプ大統領は「イランとの戦争を本気で起こしたいと思っていない」ということになるのである。様々なことを言っていても、実際に中東の砂漠地帯で戦争を行うことのリスクはアメリカがイラク戦争やアフガニスタンの戦争でも最もよくわかっているわけであり、その「泥沼になる戦争」を継続するのかということを考えればよい。
実際に、トランプ大統領はアフガニスタンの非政府勢力・タリバンとの間の和平交渉を行っていた。つまり、トランプ大統領の行動は「ツイッターなどの文字であらわされた強気な姿勢」とは全く逆に、中東における軍は、「威圧」はあっても、それに対して実際に戦うという選択肢を持っているわけではないということが最近では明らかになて来ている。
トランプ大統領は片方で「イランが悪い」といいながら、片方で「戦いたくはない」としており、日本の安倍首相に「対イランの融和工作の使者」を任せている。アメリカに親しい国でありながら、一方で日本のイランとも友好的であるというような特殊性に目をつけているということになる。
なぜこのようになるのであろうか。ここにあるように「イランに所属するイスラム革命防衛隊」がその元凶となっている。いわゆる革命防衛隊は、イスラム教を革命するとしてパーレビ国王を排除したホメイニ師が組織した「イスラム教組織」であり、シャリーアをもとにした改革を行うとして、シーア派の布教とその政治を目指している。その内容が現在のフーシ派の問題であり、同時にそのフーシ派によるイエメンとサウジアラビアの問題である。サウジアラビアは、フーシ派による攻撃をそのまま「イランによる」ということを主張しているが、実際には、「イラン政府」と「革命防衛隊」との関係の問題であり、革命防衛隊が「イラン政府の指揮に基づかない国際的なテロ集団」である場合、当然にその関係はなくなってしまっているということになる。ある意味で、会社の中の一支店が犯罪を犯した場合に会社全体を制裁する必要があるのかという議論に近い。
このようなことから、実際に「イラン」の関係はしっかりと見てゆかなければならないのである。まあ、この事件に関してはまだまだ進行中であるので、「途中解説」というような位置づけで考えてみていただければよいのではないか。