【ライブレポート】秋山黄色、堂々と走り抜けた初ワンマン『登校の果て』 未発表曲の披露や追加公演発表も
リアルサウンド
2019.10.4
https://realsound.jp/2019/10/post-424980.html
9月28日、秋山黄色 1st ONE MAN LIVE『登校の果て』が、TSUTAYA O-Crest(東京・渋谷)にて開催。今年2月のスリーマン、7月のツーマンに続く、ワンマン実現となった。
ギターを右手で高く掲げ、ステージに登場した秋山黄色。1曲目は最近のライブのお決まりである「猿上がりシティーポップ」。イントロから悲鳴があがり、一気に会場の熱量が増す。2月のスリーマンの時は、1曲目ならではの緊張感を纏っていたが、もはやそんな空気は一切無い、堂々たる幕開けだった。続く「やさぐれカイドー」では客席に身をせり出しギターソロを披露する場面も。井手上誠(Gt)のギターが“泣き”のテイストにアレンジされており、曲の奥行きが増していた。
曲の切れ味の鋭さと対照的に、MCでは「秋山黄色ですよろしく! チューニングするぞ!」と相変わらずのアットホーム感を醸し出す。ゆっくりと水を飲みながら「栃木県宇都宮市から追い出されてやってきました。俺のこと知ってるよっていう人? そうなんだよ。ソールドアウトなんだよ、ありがとう!」と感謝を述べた。今リリースされている曲が合計8曲であることに触れ、「知らない曲バンバンでてくるので、知らない曲は知ってる曲の2倍声出して」と話すと、フロアは拍手と歓声で頼もしく応えていた。「地球上で一番大声出しても許される場所なので、部屋にゴキブリ出た時くらいの鬱憤を吐き出して下さい」とユーモアたっぷりに呼びかけ、「クラッカー・シャドー」へ。前奏がファンキーにアレンジされ、大人な雰囲気に。陰鬱とした歌詞の本曲だが、彼個人の想いだったものが、リスナーのものにもなり、それにより歌い方も変わってきているように感じた。「ドロシー」では〈悲しみを分かち合いたい 分かち合いたい〉という言葉に込められた想いが滲み出るような歌い方で、心をつかまれた。
メンバー紹介を経て「そろそろ良い話するか」と切り出し、中学生で将来の夢がなくなったことを責められ、結局楽器を選んだが、今でもこの選択は不正解だったんじゃないかと思う時がある、と語った。ただ、不正解からスタートすることはたくさんあるから、自分を持って、酸いも甘いも忘れないでいた方が良い、と言い、「どんなに転んでいた思い出も俺だからね」と歌詞を引用し「夕暮れに映して」へ。MCを踏まえて聴くと、この曲に込めた想いがより伝わってきた。
「弾き語りしたいと思います」としっとりとしたカッティングに合わせ、五月病の心情を歌っているかのような歌詞の未発表曲が奏でられ、引き込まれる。続いて秋山黄色のまくしたてるような歌に、各楽器が重なっていくアップテンポな間奏を長めに披露。ワンマンらしい演出だ。その後静かに始まったのはまたも未発表曲。魔物がやってきそうなミステリアスな雰囲気で、ラップ調のサビや、ハイトーンボイスも心地良い。
何もいらないけど、幸せそうで楽しんでる人は最強だからそうありたい。まだ難しいけどそう生きていきたい、それは変わらないと語り、「スライムライフ」へ。〈何もいらない いらない そういう奴もいるんだ〉という、彼の目指す生き方が表れた歌詞だ。メンバーの演奏にも、魂が込もっているようだった。続く未発表曲は世間への怒りを歌ったような曲で、初めて聴くとは思えない盛り上がりだった。その後、秋山を代表する鬱憤ソング「クソフラペチーノ」へ。フロアは息をするのも忘れそうなほど曲に身を委ねていた。
「みんなで歌って帰りましょう! 『とうこうのはて』!」と声をかけラストへ。秋山黄色は途中でギターを置き、マイクを持ってステージを動き回る場面もあった。そして再度ギターを持つも、演奏を止め水を飲むという秋山黄色らしいマイペースが炸裂。その後は最後の一音まで盛り上げ、ステージをあとにした。
拍手が鳴り止まない会場に、秋山黄色が再度ステージに現れる。3月のスリーマンでは「体力が残ってません」とアンコールをしなかったので今回もなしか? と思いきや、「今日はアンコールやります」とアンコールがついに実現した。「ちなみに何聴きたい?」と客席に聞くも間髪いれず「『猿上がりシティーポップ』やるんで」と宣言。イントロを数小節演奏したところで急に手を止め「みんな今日チケットとるのすごく大変だったらしいね。来年2月28日に追加ワンマンやります。渋谷WWWで。キャパ倍にしました!」と追加公演を発表し、演奏を続行。会場は歓喜にわき、最上級の盛り上がりで幕を閉じた。
8月のツーマンで秋山黄色は、今までで一番長尺で不安だと語っていた。しかし今回はフロアを一瞬も飽きさせることなく、堂々とワンマンを走り抜けた。ソロアーティストで15曲、人の心を掴み続けるのは並大抵のことではない。そしてさらに驚かされたのは未発表曲がどれも素晴らしかったことだ。秋山黄色らしいメロディや歌詞はそのままに、まだこんな引き出しもあったのかと思わされた。また現サポートメンバーは前回のツーマンでも共に演奏しているが、バンドの一体感が確実に増していた。どこか儚くも力強い秋山黄色の声に、ドラムとベースのパワープレイが重なり、そこに音色にこだわった繊細なギターが加わり、美しく調和していた。
秋山黄色にはライブの度に最高点を更新し、次はそれを優に超えていく予感がはっきりとある。終演後、追加公演のチケットには大行列が出来ていた。秋山黄色のライブは、来年もより多くの人の心を掴んでいくことだろう。
(写真=鈴木友莉)
<参加ミュージシャン>
Gt. 井手上誠
Ba. 神崎峻
Dr. 片山タカズミ