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マヤ

臣隆妄想劇場③(修正版)

2019.10.05 04:30

『抱擁』



えっ?


おれ…今、隆二に誘惑されたの?


あの時がラストだって決めてたのに…


お前とはまた最高の相方に戻って、

ツアーに臨もうって…


まともに顔を見たら、その決心も揺らぎそうだったから、極力顔を合わせないようにして…


だけど、変だよ…


酔ってるからって、何でお前から誘ってくるの?


隆二「なに?しないの?臣…」


臣「…」


隆二「こんな状況でも無視すんのかよ!」


隆二が俺の首に左手を回して言った。


「はい!ど〜ぞぉ!」


アヒルのように唇を尖らせる。


俺は少し困って返した。


「どうなっても知らねぇぞ」


俺の方から唇を合わせようとすると、

数秒早く迎えがやってきた。


こいつ…マジか?


軽いヤツなんかじゃない。


くっついては離れ、またくっついて、

深いところで絡み合っていく。


どうにも例えようがないくらい、

心が満たされていくのがわかる。


ヤベェ…止まらなくなる。


さすがに息が苦しくなってきて、

空気を求めて唇を離してみると、


「くか…」と、あり得ない音を発して、

気持ち良さげに隆二が落ちていく。


落ちて……⁉️


「…かーっ…」


かーって…こいつ…寝てるし…


これって、目が覚めたら完璧に覚えていないパターン?


「隆二?」


ペチペチと軽く頬を叩いてみても反応なし…


「かー…」


完全に眠ってる。


しばらくそのまま沈黙が続いた。


「やれやれ…」


ソファから立ち上がり、

隆二をおぶってベットまで運んだ。


移動中に可笑しくなってきた。


髭生やした野郎を、お姫様抱っこは流石にないだろ?


そっとベットに寝かせ、

自分も倒れこむようにうつ伏せに寝っ転がる。


隣を見ると、仰向けで大の字になって、くーかー言ってる隆二がいる。


こんな甘いご褒美が貰えるなら、たまに無視すんのもいいかもな。


自分の手首をハムっとしながら、

しばらく隆二の寝顔を見つめる。


スッと手を伸ばし、隆二の唇に親指を這わせる。


今は俺だけのもの…


ゆっくり上半身だけ起こし、

隆二に軽くキスをした。


でも、これ以上何かするつもりはない。


そういうんじゃないから…



急に睡魔が襲ってきて、

ベットに突っ伏して目を閉じる。



満たされた時間がゆっくり過ぎていく。





『躊躇』



「隆二!起きろ❗」


臣の声で目が覚めた。


「マネージャーがエントランスまで来てるって‼早く支度しろ!」


慌てて飛び起きる。


頭がズキズキと痛む。


隆二「痛てて…なんで?今日オフじゃ…」


臣はジーンズを履きながら慌ててる様子で言った。


「お前飲み過ぎだよ」


「昼から急な打ち合わせ入ったって!」


「え?聞いてないよ!そんなの」


「昨日の夜遅くにLINE送ったそうだよ」


昨日の夜?


「とにかく早くしねぇと…ほら❗」


俺のワンショルダーバッグと、キャップを軽く投げてきた。


ボーッとベッドに座ったまま、臣を見上げる。


「臣…髪ボサボサ…」


「ニット帽被って行くから大丈夫」


急いで身支度を整え、二人で玄関に向かった。


「なんで臣ん家にマネージャーが来てんの?」


「もう集合時間とっくに過ぎてるから、慌てて迎えに来たんだろ」


「え?…それヤバいよね?」


スニーカーを履き立ち上がると、

後ろにいた臣が「隆二」と呼び掛けた。


「ん?」と振り向くと、

斜め掛けしていたショルダーを引き寄せ、臣がキスをした。


「なっ…!?急に何すんだよ!」


「お前、酔ってたなんて言い訳聞かないからな」


言葉が出てこない…


数秒見つめ合ってると、ピンポーンとインターホンが鳴った。


エントランスからだ。


「あ!今降ります!」


「行くぞ!」


臣は俺のショルダーを引いてエントランスへ向かった。




打ち合わせの後、NAOTOさんから軽く注意があった。


「仲がいいのは結構なことだけど、

二人して大遅刻って、どーいうことかな?」


「すみません…」


二人並んで下を向き、神妙な顔をした。


直人「次のスケジュールが詰まってるメンバーもいるから、以後気を付けてね」


俺達の様子を見て、それ以上は何も言わないで、NAOTOさんは部屋を出ていった。


横で見ていた健ちゃんがすかさずツッコミを入れてくる。


「珍しいやん!隆二が臣ちゃんの所にお泊まりって…」


ドキッとした。


健二郎「なにしとったん?」


隆二「こっ…こっ…怖い映画見てたんだよ!」


明らかに動揺して答えた。


健二郎「お前、声上ずっとるで」


慌てて水を飲む。


すると、それを顔色一つ変えずに見ていた臣が言った。


「知らなかった?健ちゃん。俺ら同棲してんだよ」


ブーツ!


口に含んだ水を吹き出した。


「冗談キツいで!臣ちゃん。隆二もなに動揺してるん?」


健ちゃんが俺の肩をポンと叩いた。


臣「もしそうだったらウケるっしょ?」


健二郎「ツインボーカルが同棲って…アカンやろ~!それ、ファンが喜ぶやんか❗」


臣「そうなの?」


臣はコーヒーを口に運ぶ。


健二郎「臣ちゃん知らんのか?臣隆に萌えるファンも沢山おるんやで!」


臣「へーっ…」


さすがに臣…少しも動じてない…


健ちゃんと明るく話をする臣の横顔を見ながら、俺は思った。


昨日は酔っ払ってたけど、うっすらと覚えてる…


最初っからずっと一方的にヤられっぱなしで、


なんか腹立つし、


酔いに任せてその気になってしまった…


けど…


舌は駄目だろ?…舌は…


左手で頭を抱え、指の間から臣を見た。


健ちゃんと話をしながら、臣はチラッと目線をこちらに向ける。


あの台詞が甦る。


「お前…酔ってたなんて言い訳聞かないからな」


俺は口を尖らせ剥れた顔をしてみせた。


ニコッと臣が笑顔で返した。


これからどうなんのかな?俺たち…


ずっと無視されるくらいなら、

キスぐらいって思ってたけど…


それで満足なのかな?臣…


そんな俺の躊躇する気持ちを知ってか知らずか、


美味そうにコーヒーを飲み干す臣だった。