くわとかまどのある暮らしプロジェクトとは
私の両親は就農して今年で33年、有機無農薬栽培農家に転身してから24年が経ちます。農薬散布をする傍らで授乳をしている子育てにふと疑問を感じ、いばらの道を歩むように大変な思いをしながら無農薬栽培に挑んできました。
考えてみればこの社会はいつから、見た目が綺麗な野菜しか売れなくなったのでしょうか。
昔は、現代のように手のひらのボタン一つで商品が気軽に届くことはなかったけれど、家から10分ほど歩けば生活に必要なものが買える商店があって、身近なところで生鮮食品も手に入り、ちょっとしたおしゃべりもできたりして、なんだか事足りていたような。
今では、じぃちゃんばぁちゃんも運転免許証と車は手放せない環境で、不本意な事故も絶えません。
便利な社会になればなるほど、暮らしを保つための最低限の機能が失われ、人々はやむを得ず外へと向かい、過疎化が進んでいきます。
この地域をこれからもずっと守り続けたい、と思ったとき、もう少し日本古来の暮らしを大切にできたら、という思いが巡ったのです。
スーパーやコンビニに頼ることの多い地域ではありますが、畑との距離が近づけば、本当は自給自足も夢じゃないかもしれないし、畑のある社会が当たり前になれば、就農が特別なものと意識され、敬遠されることもなくなるかもしれない。
そこでまずは、「畑と食卓をギュッと近づけること」からはじめてみようと考えました。題して「くわとかまどのある暮らし(=くわかま)」プロジェクト。
畑を耕す鍬(くわ)と、ご飯を炊く竈(かまど)は日本古来の暮らしには必要不可欠なものでした。
一見不便で扱いにくそうなものだけど、鍬は1本で多様な役割を果たし、竈で炊くご飯はふっくら美味しいものです。
そう考えると、不便さも”ちょっといい”と思えてしまう。私たち夫婦は、そんな気分をみんなにおすそ分けしたいのです。
まずは夫の農園と私のお店を繋ぐことを皮切りに、古くて懐かしい、そんな未来を地域に残していくあらゆる取り組みを行いたいと考えています。