声を出して 34
「さぁ、ワシはヤンさんに挨拶をしてくるよ。ハニはスンジョ君と二人で話し合って、仲直りをしなさい。」
「私が悪いわけじゃ・・・・」
「ハニが相手の気持ちを聞かないで、自分勝手に先走るからいけないんだ。もう数日後には、スンジョ君の妻になるのだから、ちゃんと夫を立てるようにしなさい。」
ギドンはスンジョに頼んだよと肩を叩いて、ヤンさんがエンジンを掛けて待っている車に向かって歩いて行った。
母のお墓の前で知ったスンジョの想いは、自分が思っていた以上に素敵で心が大きく頼りがいのある人だと感じた。
「これからどうする?」
「どうするって・・・・どうしよう・・・・・」
ふたりっきりで話をさせてくれる機会を作ってもらってありがたくはあったが、いざふたりっきりになると急に恥ずかしくなって来た。
「ボラさんのカフェで話をしても、深夜には家に帰れるだろう。」
「泊まって行かないの?」
「泊まってもいいけど、それこそ泊まったらお袋が何を聞き出すか想像がつくだろう。」
「たしかに・・・・・」
スンジョは、今日ここに来る事をグミには伝えてはいないが、無断外泊をするわけにはいかず、どこに誰と来て泊まると言ったのなら、また尾鰭を付けて話しを大きくして別の期待をする事は判っていた。
「がっかりしたのか?」
「べ・・別に・・・・・」
「焦る必要はない。もうすぐ結婚式なのだから、結婚したらずっと一緒に過ごせるのだから。」
ハニは急に恥ずかしくなって来た。
がっかりしたわけでもないし、焦っているわけでもないが、ずっと一緒に過ごせると言う言葉をスンジョから聞いたら、恋人期間がないままに結婚する事が寂しくもあった。
「焦っていないし、全然気にしていないよ。死ぬまでスンジョ君と一緒にいられるのだから。」
「死ぬまで?相手に飽きて離婚するかもしれないぞ。」
そんなことないと何度も言うハニが面白い。
離婚するのかどうかなんてわからないけど、されるかされないかはオレも絶対にないと思う。
恥かしそうにスンジョの腕にハニが自分の腕を絡ませると、スンジョはそれを待ってゆっくりと歩きだした。