Ameba Ownd

アプリで簡単、無料ホームページ作成

山﨑先生&椎原園長コラボレーション講演会報告(その2 山﨑先生)

2019.10.08 02:28

第二部 山﨑 恵子 先生「動物にもっと敬意を」

山﨑先生の今回のお話のキーワードは「動物へのリスペクト」でした。動物園だけに止まらず、野生動物や自然と人間の問題を絡めて現実に今、起こっている様々な課題を、縦横無尽にお話していただきました。とても全部はご紹介できませんので、私の記憶に残ったお話をいくつかご紹介いたします。(☆印は順不同でご紹介させていただきました)


☆ 動物福祉の基本概念として浸透して来た感のある「5つの自由」の確保だが、それは(-)を0(ゼロ)にするだけで、そこに(+α=楽しみ(ワクワクドキドキ?))がなければ、本当のウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること。幸福と訳されることが多い)は担保されない。「5つの自由」さえ守られていれば…と考えがちだが、そこから積み上げることこそ、動物たちの幸せにつながる。


☆ リスペクトを持つということは、彼らが彼らなりに生きている、その考えや行動を理解することである。


☆ ワシントン条約(CITES(サイテス))での、(国内で報道されない)日本の立場。世界最大級の象牙取引国である日本はアフリカゾウの商業取引禁止に反対票を投じている。

➡因みに、ワシントン条約(CITES(サイテス))にご興味のある方は以下のリンクをどうぞ。


☆ 日本には300程の動物園があり、その内、日本動物園水族館協会(JAZA)に加盟している施設は150前後。だが動物の展示業となると私設も含め3500強もあり、世界基準の動物の飼育ルールを徹底することの困難さが際立つ。また日本は人口一人当たりの水族館の数が世界一であり、世界で飼われているイルカやシャチの総数2000頭ほどの内、500頭ほどが日本で飼育されている。


☆ 以下の新聞記事を使った山﨑先生の授業を受けた生徒さんの感想の紹介(新聞記事は一部のみ掲載)。「動物にとって命がけの触れ合い」「危機感が全くない」「大人が吹っ飛ぶ強さの触れ合いは触れ合いとは言えない」「アザラシの赤ちゃんの抱っこは赤ちゃんにストレス」「危機管理はどうなっているのだろうか」「皮膚が乾燥するのでは」等の意見が出た。


☆ 人間を含む動物の子供は、脳の発達や体の成長過程で負の刺激を加えられると正常な発達が出来なくなることが科学的に証明されている。人間との触れ合いは彼らのソフトウエアに全く入っていないので、幼い野生動物と人間の触れ合い(抱っこ等)は彼らの正常な発達の妨げとなる可能性がある。


☆ 世界の旅行代理店の中には動物の居る施設を独自評価して、きちんと動物福祉等に合致したところしか紹介しないようなシステムを取り入れている所もある。


☆ 人間はカリスマ性のある巨大動物(ゾウやシャチやキリン等)に惹き付けられるところがあるので、そういった動物を使ったイベント等が人気だが、海外の多くの動物愛護団体ではゾウ等を観光資源(ショーなど)に使うことに反対の見解を持つ。動物は人間の楽しみのために存在する訳ではない。彼らの素晴らしさを間近で見れるのは嬉しいが、私は、彼ら本来の在り方を犠牲にしてまで、可愛い、楽しい思いをしたいとは思わない。


☆ 健全な(施設の)職場環境(きちんと勉強できる・適切な意見交換ができる等)が、動物たちを支える大切な中身である。動物園全体の底上げが必要。


☆ 世界動物保護協会(WAP)が行った、世界の動物園を査察した報告書には、WAZAのメンバーであっても、その倫理規定に沿った運営をしているとは限らないと記されている。その中の、飼育されたイルカに関しての報告書には、目にダメージを受けた個体が多いと書かれている。これはショーなどによるトレーナーとの関わりの中で、水面上に顔を出している時間が多いため、太陽光線の影響を受けたものと考えられる。また音響でコミュニケーションをとる動物の為、水槽の周りの騒音からの悪影響も考えられる。


☆ ショーを行うのならば、まず動物が守られることが大前提で、その上で、お客さんに楽しんでもらうことがあるべき。


☆ 日本は密猟された野生のカワウソの最大の輸入国。カワウソカフェの実態が英字新聞の社説で取り上げられても、日本では全く報道されない。


☆ WAPのレポートの最後には、動物の本来の姿ではない尊厳を傷つけるような不自然な行動をやらせるべきではないと書かれている。動物が蔑まれるような行動をさせるべきではない。また幼体を弄らせるというイベントは中止すべきである。その生物の正常な発達を妨げることになる。幼体は集客の一環として安易に繁殖されるが、それが過剰繁殖につながり、成長した動物は管理が行き届かない私設の動物業者などに売られてしまう。そういったところに一番、事故など問題が起こりやすい。野生動物の飼養に関する問題を日本として、また私たち一人ひとりが考えて行かなければいけない。


☆ ワイルドウェルウェア(英国をベースとした動物園動物の適正飼育を推奨する団体)でも、動物を使ったショーへの問題点の指摘が数多くある。


☆ どうやったら、動物への敬意を教え、広げることが出来るのか。専門家の人にきちんと専門家として恥ずかしくない意見を言ってもらうようにしたい。


等々々……。とても書ききれるものでは有りません。機会があれば、是非、各地で開催される山﨑先生の講演会に足をお運びくださいませね!(その3に続く)

その3 ↓