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マヤ

臣隆妄想劇場⑤(修正版)

2019.10.08 04:30


『警告②』



その日の夜遅く、行きつけの店でがんちゃんと飲んでいる。


剛典「4DXって俺初めてだったけど、面白いよね」


臣「えっ?…ああ…そうだな」


そう答えてはみたが、映画の内容は全く覚えていない。


剛典「なんか今日はずーっと、心ここに在らずって感じだよね」


臣「ん?そうかな?…気のせいでしょ」


あいつ、今頃健ちゃんと仲良くやってんだろな…


あの二人、もともと仲いいし…


あいつのラジオに健ちゃんがゲストで出た時だっけ?


健ちゃんと一緒だと、安心感半端ないって言ってたよな。


まぁ、確かに健ちゃんはいい奴だし。


グラスになみなみと酒をつぎ、

こぼれ出しそうな、その丸みをじっと見つめる。


剛典「ん?なになに?なんか見えんの?」


興味津々でがんちゃんが顔を近づけてくる。


相変わらずの屈託のない笑顔を俺に向ける。


丸みの表面を指で突くと、酒がグラスから溢れ出した。


臣「一度溢れ出すと、止められなくなるんだよね」


剛典「え?なんの例え?なんか切ない顔して…恋でもしてんの?」


ズキッ…っと、胸が痛む。


恋…あいつに?


俺自身もよくわからない。


自分の感情のまま行動してるけど、

これって恋なのか?


そもそも何であいつなのか?


ふーっ…と、ため息をつく。


剛典「あ~あ…ため息なんかついちゃって…図星?」


「相手どんな人?今度写メ撮って見せてよ」


見せれるわけねーだろ…


がんちゃんやめて❗


これ以上つっこまないでくれ…


「こいつ」…なんて隆二の写真を見せた日にゃ…


考えただけで頭が痛くなる。




翌日はスタジオで、ボーカルリハがあった。


もちろんスタッフも大勢いる。


ツインボーカルだから当たり前かもしれないが、一緒にいる時間は沢山あっても、二人っきりっていうのは意外と少ない。


スケジュールの都合がつく時は、

なるべくお互いの家を行き来してきた。


ここ数日で一変した二人の関係…


こうやって近くに居ると、無性にあいつが欲しくなる。


少し離れた所に座っている。


「隆二…」と声を掛け、キャスター付きの椅子ごと近くまで移動した。


隆二「さすがにここじゃ駄目だよ」


臣「休憩中は誰も入ってこねーよ…」


隆二「わかんねぇだろ」


臣「時短でいいから…ん…」


椅子に座ったまま、口をすぼめて突き出す。


隆二「…しょうがねぇな…ったく」


隆二の手が俺の頬に触れ、一瞬ゾクッとした。


しっかり目を閉じて隆二が来るのを待ってると、

「ドンドン」といきなりドアをノックする音がした。


隆二「は…はぁい❗ちょ…ちょっと待って下さい!」


椅子から落ちそうになりながら、

元居た場所へ戻った。


隆二「どうぞ~!」


「隆二くん、臣くん❗休憩中にごめんね!明日の取材なんだけど…」


マネージャーが矢継ぎ早に話をする。


危なかったな…今のも…






『警告③』



その日の夜はLDHの飲み会があった。


スタジオを出る時、いつものように「隆二!行こか」と健ちゃんが声を掛け、先に二人が出ていく。


少し遅れて俺が会場に到着すると、

健ちゃんとNAOTOさんが隆二の両隣に座り、近くに俺の座るスペースはなかった。


今までも、こんな感じだったけど…


「今市くん、ホント健ちゃんと仲いいよね❗」


そう呟きながら、俺の左側にELLYが腰掛ける。


「息ぴったりだしな!」と、右隣に座っていたがんちゃんがトドメを差す。


向かいの席を見ると、

「隆二~‼お前ふざけんなよー!もう早よ帰れ~‼」


隆二「まーた…健ちゃん!ホントは居て欲しいんでしょ?」


「バレた?」


二人仲良く、陽気に笑ってる。


…ごめん、健ちゃん…


おれ、今嫉妬してる。


あいつ…めちゃ楽しそうだし…


ELLY「なんか今日元気ないねぇ?臣…」


俺の顔をまじまじと見る。


剛典「恋患いなんだって」


ELLY「えっ⁉恋患い?凄っ!誰々?相手誰よ?」


明るい大きな声で騒ぐ。


臣「違うよ。勝手にがんちゃんが決めつけてるだけだし…」


ELLY「恥ずかしがらなくていいって!いつでも相談乗るよ❗」


ELLYが肩を組んでくる。


両隣でワイワイやってるのを他所に、

隆二に視線を送ってみる。


あいつ…ちっとも目を合わせようとしない…




翌日も俺は取材と映画の告知で、

隆二は取材の後、ラジオの収録があり、一日中顔を合わせることがなかった。


あの日から…


二日もあいつに触れてない。


なんか俺…もう限界みたい…


下唇を噛みしめる。




夜中の3時過ぎ、

気がつくと隆二のマンション前に立っていた。


そろそろ帰る頃じゃ?


「臣?どうしたの?」


タイミング良く隆二が帰ってきた。



「…隆二…おれ、もう枯れそう…」



「⁉」



「させて…」



「二日前にしたばっかじゃん!」


あー…そうなんだよな…この温度差…


こいつにとっては「したばっか」でも、俺にとっちゃ二日も前のことなんだ。


肩にそっと触れると、

隆二も俺の腰に手を回してきた。


「!?…外じゃダメ…とか言わないんだ」


「うん…なんとなく臣の気持ちもわかるから…さ」


俺は驚きと嬉しさが入り交じった様な表情になった。


隆二「…ちゅーだけならいいよ」


臣「…ちゅーなんて言い方すんなよ…おれ発情すんだろ…」


隆二「バカ…」


重なり合う二つのシルエット…


絡み合うほどに、甘く溶け合って、


嫉妬や孤独で支配されていた心が、


次第に解(ほど)けていく…


俺の心が暖かいもので包まれていった。


臣「お前…たまんない…」


隆二「…ほんと…癖になりそうで怖いね」


臣「隆二…明日は?」


隆二「特に予定ないよ」


臣「んじゃ、うちでいい?」


隆二「…うん」


臣「他の予定入れんなよ」


隆二「…臣もね」


東の空が少し明るくなってきている。


マンションの外に居ることも忘れて、

時間を惜しむかのように、

何度も唇を重ねていった。





翌日、スタジオでリハに励む二人の姿があった。


臣「隆二!そこのマイク取って」


隆二「ほい」


手渡しする際に、

臣はワザとマイクではなく、

隆二の手を握ってみせる。


隆二「…わかったから。また後でね!」


まるで恋人同士のような会話をしてみせる。


臣「待てない…」


臣がギュッと強く手を握ってくる。


「スタッフが帰ってくる頃だから…ほら」と言って臣をたしなめる。


臣は、嬉しくて仕方ないような笑顔を見せた。



午後のリハが始まろうという時に、

一足先にスタジオに入って来たマネージャーが、二人に声を掛けてきた。


「隆二くん、臣くん…」


臣隆「あっ❗今日は無理っす❗」


「いや…仕事じゃなくて…言っておきたいんだけど」


臣「なんすか?」


すると、マネージャーはおもむろに衿を正して言った。


「LDHは、アーティスト個人の恋愛に関しては本人に任せているけど…」


「メンバー同士の恋愛は禁止だからね❗」


「⁉️」



頭の中が、真っ白になった…